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救いの神に乞い願う-2-

朝の光溢れるその場に立つ麗しの神。清廉なその心根を表すかのような純白の騎士服に身を包み、神々しいばかりの金色の髪を風に揺らめかせている。左右で色彩の異なる美しい瞳には、明らかに困惑の色が滲んでいた。

先の私の言葉のせいだろう。

『どうか、私をこれからも貴方のそばに置いてください』

だが、撤回するつもりもなければ、私は彼から離れるつもりもなかった。

はっきり言おう。こんな見も知らぬ異世界で信じるものすらなく生き続けられるほど私は図太く出来てはいない。

彼ならば、私を救ってくれる。いや、彼にさえ拒絶されたならば、私の未来はおよそ絶望的と言って良いだろう。


「ちょっと待ってくれ。貴女は何を言っているんだ」

「私には帰れるところがない。帰りたくても、帰り方がわからない」

「それは…どういうことだ。貴女はどこから来たんだ?」

「私はこの世界の住人じゃない。月が1つしかない世界。こことは違う世界から来たの」


静まり返った周囲から微かなざわめきが伝わってきた。彼の綺麗な瞳が眇られる。

嘘、だと思われたのだろうか。それは、少し堪えるな。

私は落ち込みそうになる気持ちを無理矢理奮い立たせ彼を見上げた。

私には現実的に嘘をついたところで誤魔化せるほどの知識がない。今は真摯に救いを求めるべき時だろう。


「それが事実なのだとしたら、貴女を守護するのは我々の役目だ」

「え…?」

「異世界からの客人よ、貴女の来訪を歓迎する」


そんな彼の言葉に従い、周囲の騎士達が姿勢を正した。


「我らはマルフェス王立騎士団第三部隊。王国の規律を守り、また、異世界からの来訪者の保護も任務としている」

「信じてくれるの…私の言葉を」

「あぁ。すぐにばれる嘘をつく必要が貴女にあるとは思えない。鑑定すれば自ずと分かる事柄だ。それはこの世界に住む住人であれば周知の事実」

「私のこと助けてくれるの?」

「例え…貴女が異世界からの来訪者でなくとも、弱者を助けるのは騎士として当然の務めだろう」


そうか。貴方は私を救ってくれるのか。

こうもあっさりと信じてもらえるとは、やや拍子抜けしたがそれは当然良い意味で。


「ありがとう。クラウスさん」


私は嬉しくなって笑う。絶望的な展開はどうやら回避できたらしい。むしろ結果としては、最上ではないだろうか。他でもない彼に助けてもらえるのだから。それが義務感からとはいえ、そこは問題ではない。


「礼は不要。むしろ異世界からの客人にこのような仕打ちなど到底あってはならないことだ。あの者等は厳罰に処する。貴女の」

「クラウスさん、名前で呼んで」

「は?」

「私の名前は紫乃。私の救いの神である貴方には名前で呼んでもらいたい」

「…あぁ」


形のよい唇を小さくポカンと開けたクラウスさんは直ぐ様表情を元に戻した。周囲の騎士達から私とクラウスさんのやりとりをからかうように口笛が飛んでくる。私は彼に申し訳なく思いながらも『貴女』だなんて呼ばれるのはどうしても寂しくてそう願っていた。


「では、紫乃には我々と共に王都に来てもらう。まずは、我が国の宰相殿にあな、いや、紫乃が異世界からの来訪者であるかを鑑定してもらう必要がある」

「わかった」


恐らくその宰相殿に《鑑定》をしてもらうことで、私が嘘をついているのかいないのかが分かるのだろう。どのような方法で確かめるのかは知れないが、彼が助けてくれると言ったのだから、私はそれを信じて受け入れるしかない。


「そう、不安そうな顔をするな。宰相殿は有能で穏和な方だ。鑑定もすぐに済む」

「うん」


そんなにも不安が顔に表れていただろうか。私はギクリと表情を引き締めた。クラウスさんは私を心配してくれている。私はその優しさがとてもありがたかった。

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