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双つの月が見下ろす世界で神様に出会った -2-



牢屋のような部屋に突き飛ばされ、私はまたも床に打ち付けられる。今度は両手を縛られたけれど、何故かそれはすぐに外された。さっきの客が私のことを気に入っているから、跡が残ることはしないそうだ。その代わりかこの屋敷の仕組みを脅すように語られた。この首輪を嵌めている限りこの屋敷からは出入り出来ない魔術がかけられているのだと。


「奴隷に、なるしかないのなら、あの人のものになりたい」


私のことを気に入ってくれたというのは本当だろうか。たとえそうでなくとも、私はあの人が良かった。綺麗な顔、優しい声。異常な緊張と恐ろしい状況に弱りきった私にはあの客がまるで救いの神のように思えた。

ただ、どうなるかもわからぬ恐怖の中、眠ることもできずに私は祈るしかなかった。



翌朝、状況は一変した。


奴隷商人の屋敷を大勢の騎士のような人々が取り囲み、屋敷内にいた全ての人間が捕らえられた。私を含め首輪の掛けられた人達は騎士達に丁重に保護された。


「お、お、お前ええええ!」


地面に押さえつけられた醜い奴隷商人は汚い叫び声を上げ、馬上の麗しい青年を睨み付ける。昨日の客は真っ白な騎士の服装に身を包み、じゃらじゃらと勲章を付けて不敵に笑って見せた。冷徹な声が商人を断罪する。


「人々を誘拐し、無理矢理奴隷にすることは、法律で禁止されている。その他、奴隷にした人々に働いた悪行、全ての罪を償ってもらおう。尋問は私がする。連行しろ」

「クソォ!腐りきった化け物のような醜い顔で、まともに女一人抱いたこともないだろうお前などにいいいぃ」


暴れながら罵詈雑言を美貌の男に投げつける商人。支離滅裂な言葉のどれ1つをとっても馬上の麗しい男には当てはまらないだろうそれらを商人はまるで呪詛のように吐き出し続けた。

その後、私たちの首に掛けられた首輪はあっという間に外された。捕まえられて奴隷にされそうになった経緯や、ここに来てから何か酷いことをされなかったかなど、一人一人が騎士に話を聞かれた。保護されたのは10人程。私以外の人達は、自らの故郷や希望する場所に騎士達が送ってくれることになった。


「貴方は、どこに帰りますか?」

「私は…」


気付けば、私はこの世界に来て、初めて涙を流していた。私に帰る場所はない。そう。ここから解放されたところで、私には絶望しかなかったんだ。私の話を聞いてくれていた女の騎士は急に泣き出した私の背を困ったように撫でてくれた。


「どうか泣かないで。大丈夫ですから」


そんな根拠のない励ましすら私は嬉しくて寂しくて更に涙が溢れた。泣いている私を見て騎士達が口々に慰めの言葉をかけてくれる。


「どうしたんだ?」


優しい声に私は振り向く。そこには昨日、救いの神だと思った美貌の男がいた。私はその神に手を伸ばす。助けてほしくて。男は何故か酷く焦ったように私の伸ばした手を見つめている。私はそのまま精一杯背伸びをして青年の首に両腕を回しすがりついた。きちんと筋肉のついた硬いのに弾力のある胸板に顔を埋め私は神様に救いを求める。


「神様、どうか私を助けて」



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