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影の使い手  作者: 葬儀屋
王城編
5/206

ステータス

本日2話目です。

どうぞ。

 国王との対面が終わり、扉から廊下へ出ると一人の男が静かに佇んでいた。

 彼は軽く会釈をし、自分たちに話を切り出す。

「国王陛下より、あなた様方の世話役の統括の任に就きました。

 セバスと申します」

 少し高齢の男性ではあるが、その着こなしている執事服と、一つ一つの優雅な動作でその渋みをぐっと引き立てている。

 彼の後ろには自分たちと同じぐらいの年頃か、少し年上の執事やメイドが並んでいる。


「彼らは今日からあなた様方に仕える従者です、

 男子にはメイドを、女子には執事をつけ、その際には主従の契約を結んでいただきます」

 この話を聞いてクラスメイトたちが騒ぎ出す。

 必然だろう、執事やメイドは誰一人例外なく美形であったのだから。

 自分だって嬉しい、こんな冴えない男にこんな美人さんが付くなんて。


 ただそれと同時に思う。

 こんなうまい話には裏がある。

 無いわけがない。

 もしも、の話。

 こんな美人さんを従者につけられたら、その後どうするだろうか?

 普通なら絶対に友達になろうとする、ましてや年齢が近いならなおさらのことだ。

 もしかしたらそれ以上の関係になっているかもしれない、深くは追求しないが。


 そんな時、異世界から帰れる手段が見つかったとしても、果たして「はいそうですか」と帰れるだろうか?

 絶対に帰れないだろう。


 そしてこの話で性質たちが悪いのは、それが分かっていても断りにくいことだろう。

 元の世界に帰れるかどうかは未来のあやふやな話。

 顔のいい従者を付けられるのは今の確実な話。

 どちらを取るかなんて明白だろう。


『しかし魔王を討伐した暁には、必ず元の世界へ帰す手段を見つけよう』

 脳内で国王の声がよみがえる。

 帰す気なんてないじゃないか、国王。

 そう思うことだけが自分のできる唯一の抵抗だった。


◆◆◆


「食事は一日三回までとなっていますが、量にご不満であれば私どもがお作り致しますので気軽におっしゃってください」

 従者との契約が終わって、今度は自分の部屋を紹介された。

 壁には白い漆喰しっくいが使われ、床は黒い木の板が敷き詰められていた。

 その上に古美術品でよく見かける、骨董品アンティークのような家具が鎮座し、何とも言えない高級感を漂わせている。


 現在自分はこの部屋の間取りと今後のスケジュールを、目の前のメイドから教えてもらっている。

 彼女は自分と契約した従者だ、名前を『ティファ』こちらの世界で「涙」という意味らしい。

 背は自分よりもかなり低く、自分の背が…確か四月の身体測定で179cmぐらいなので、この子は大体155cmぐらいだと推測される?

 愛らしい見た目の雰囲気もあってか、思わず守りたくなってしまうような少女だ。

 その首にチョーカーが巻いてある、あれに主従契約の紋様が入っており、主人の命令に逆らえなくなるらしい。


「以上で説明を終わります、何かわからないことがありますか?」

 説明を終えたティファが、目をくりくりさせながら話しかけてくる。


「いや、ないね、分かりやすかったよ」

「ありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです!」

 この子感情の起伏が激しいな、見るからに人懐っこそうだ。


「少し心の整理をつけるから、従者の控え部屋に戻っていてくれるかい?」

「分かりました!」

 適当な理由をつけて彼女を部屋から退出させる。

 さて、あいつの部屋に行こう。


◆◆◆


 柿本の部屋は部屋決めをする時、自分に近い位置にいたので隣室になっている。

 こちらはまだ従者と話しているようだ。

「そっか、エルザって平民出身なんだね」

「はい、なので王城に招かれたときはとても驚きました」


 こちらの従者はエルザという名前で、ティファとは対照的なおしとやかな女性という感じがある。

 セミロングの綺麗な黒髪がとても印象的だ。

 話が終わるまで待っていようかと思ったが、どうやら柿本がこちらの存在に気付いたらしく、エルザとの会話もそこそこに自分を部屋に招き入れてくれた。


「なんで来たのかわかっているぞ、影山?」

 そうとなれば話が早い。


「この状況、お前が話していた小説によく似ていると思ったからね」

 それを聞くなり彼は目を輝かせて話始める。


「そうなんだよ!!

 ラノベの小説で散々読んだけどまさか自分が行くことになるとは思わなかった!

くそう…、こんなことになるんだったら『異世界に行ったらやりたいことノート』でも作っておくんだった!」

 今から作ればいいのに。


 彼がライトノベルに出会ったのは去年の夏、読書感想文に書く本を探していた際、たまたま見かけた試し読みを読んでからのこと。

 ゲームのような世界観に魅了され、

 魅力的なキャラクターに惹かれ、

 熱いバトルにたけり、

 着々と強くなっている主人公に心躍って、

 気づいたらいくつかのシリーズを読破していたらしい。


 自分にもいくつか進めてくれたが、本があまり好きでないのであとで読んでおくと言って先延ばししていた。

 まさか今までのつけを、全部ここで聞く羽目になるとは。


「まあ異世界召喚と言っても色々あってだな…」

 そこから柿本は様々な種類の物語を教えてくれた、

 勇者として召喚され世界を救ったり、

 勇者の召喚に巻き込まれたが勇者よりも活躍したり、

 いじめられっ子がクラスで召喚され強くなり、いじめっ子に仕返ししたり、

 クラスでは目立たない男子が、異世界で強くなって美少女に囲まれたり、

 王国に裏切られた勇者が復讐に転じたりと。

 今迄聞いてくれる人がいなかったのだろうが、さすがに一時間を過ぎると瞼が重くなってきた。


 柿本をこずく。

「お前の話は面白いんだがその主人公たちはこの状況でまず何をしていたんだ?」


 すると柿本が胸を張って答えた。

「まず自分たちに何が出来るか調べてたな。

こういう時は『ステータス』やら『ステータスオープン』というと自分のステータスが目の前に表示されていたぞ!」


 試してみる価値はありそうだ。

「『ステータス?』」

 すると目の前に突如として、光る板が出現した。


■■■

【Name】 影山かげやま とおる

【Race】 人間(ヒューマン)

【Sex】 男

【Lv】1

【Hp】 100

【Mp】 100

【Sp】 100

【ATK】 100

【DEF】 100

【AGI】 150

【MATK】 90

【MDEF】 90


■■【職業ジョブ】■■

忍者アサシン


■■【スキル】■■

<特殊エクストラスキル>

【分身】Lv,1


■■【称号】■■

【異世界人】


■■■


「これはすごい」

 まさに『ステータス』という言葉に対して、子供が持つイメージを忠実に再現したかのような内容だった。

 その後、この未知の道具に対していろいろと試してみたが、どうやら「ステータス」と言わなくても『ステータスを表示してくれ』と念じれば表示できることが分かった。

 文字に触れるとその文字の意味を説明してくれる。


【Name】

 その人の名前


【Race】

 種族


【Sex】

 性別


Lv(レベル)

 その人の力の格、経験値を入手することで上げることができ、様々な恩恵をもたらす。


Hp(ヒットポイント)

 その人の生命力、体力とも言う。0になると死ぬ。


Mp(マジックポイント)

 その人の精神力、魔力とも言う。0になると疲労で動けなくなる。


SP(スキルポイント)

 Lv(レベル)が上がったりモンスターを倒すともらえる、消費することでスキルを手に入れたり既存のスキルのLv(レベル)を上げることができる。


ATK(アタック)

 物理攻撃力、

 武器を装備したりLv(レベル)を上げることで増やすことができる。


DEFディフェンス

 物理守備力、

 防具や盾を装備したりLv(レベル)を上げることで増やすことができる。


AGIアジェリティー

 素早さ、

 重いものを持つと下がる。荷物を軽くしたりLv(レベル)を上げることで増やすことができる。


MATKマジックアタック

 魔法攻撃力、

 マジックアイテムを装備したりLv(レベル)を上げることで増やすことができる。


MDEFマジックディフェンス

 魔法守備力、

 マジックアイテムを装備したりLvを上げるすることで増やすことができる。


職業ジョブ

 自分が付いている先天的な職業、

 他の職業では手に入らないスキルを手に入れることができる。


忍者アサシン

 敵の情報を手に入れたり、暗殺することに特化した職業。

「忍術を扱う能力」を持つ。

 AGIがとても高くなる代わりにMATKとMDEFが低めになる。


【スキル】

 Sp(スキルポイント)によって手に入れられたり、先天的に持っていたりする。


特殊エクストラスキル】

 スキルを極めるとそのスキルが進化する形で手に入るスキル。


【分身】

 「身代わり」を極めることで手に入るスキル。

 自分の分身を作り出し、扱うスキル。

 Lv(レベル)の数字の数だけ自分を模した分身を作ることができるスキル。分身は本体の意思で消すか、死ぬかで消える。


【称号】

 特定の行動をしたり、人から呼ばれるようになると手に入る。

 様々な恩恵がある。


【異世界人】

 違う世界から来たものに与えられる称号

 Sp(スキルポイント)を+100貰える。

 特殊エクストラスキルを一つ入手する。

 異世界の言語を話すことができる。


「むう」

 一通り説明文を読んでみたが、いまだにしっくり来ていない部分が多い。

 とりあえず一つ一つを整理するために、見慣れない言葉について考察していくことにする。

 まず一番気になったのは、Sp(スキルポイント)だ。

 モンスターを倒すと貰えて、スキルを入手できるらしい、ゲームにおける経験値や素材とはまた違ったものなのだろうか?

 ただ説明文を読む限り、これからの生活に大きくかかわってくることは必至だろう。


 次に【分身】、まさに忍者だからこそといえるような名前だが、説明文にある条件がいまいちピンと来なくて扱えるかどうか不安になってくる。

 試しにこの場で使ってみようかと思ったが…やめた、ステータスを見る限りこれが自分の奥の手になるはずだ、人目を避けたところで実験したほうがいい。


 最後に【異世界人】、説明文を見て初めて気が付いたが自分や生徒会長、クラスメイト達が王女や国王の会話を理解できていることに今さらながら驚いた。

 それほどまでに別の言語を話しているという違和感がなかったのだ、日本語と英語のように意識して話しているわけではない。

 例えて言うのなら、ひらがなをカタカナで書いている感覚に近いかもしれない。


「なあ、何ずっと黙っているんだ?」

 スキルの説明に熟考していると、しびれを切らした柿本が問いかけてきた。

 そこで一つの疑問が生じる、彼にはこの空中に浮かんでいる板が見えないのか?


「なあ柿本、お前もステータスを出してくれないか?」

「ん?ああ、いいぞ」

 柿本は困惑しながらもステータスを出した仕草をしたようだが、自分の間には何も見えない。

 ここで一つの仮説が成り立つ、恐らくステータスは、表示しても自分以外には見えないようになっているのだろう。

 柿本はこのステータスが書かれた板を「ステータスボード」と勝手に名付けていた。

 安直な名前だが、自分もそう呼ぶことにする。


 ちなみにその後、相手から許可をもらえばステータスが見れるようになることが分かった。

 柿本が興奮して自分のステータスを見せてくれる。


■■■

【Name】 柿本かきもと しゅん

【Race】人間(ヒューマン)

【Sex】 男

【Lv】 1

【Hp】 100

【Mp】 100

Sp(スキルポイント)】 100

【ATK】 120

【DEF】 120

【AGI】 90

【MATK】 90

【MDEF】 90


■■【職業ジョブ】■■

戦士ウォーリア


■■【スキル】■■

<特殊エクストラスキル>

充填チャージ】Lv,1


■■【称号】■■

【異世界人】


■■■


戦士ウォーリア

 剣を使った攻撃を得意とする職業

「剣を扱う能力」を持つ。

 ATKとDEFが高くなる代わりにその他のステータスが低くなる。


充填チャージ

「気合い」を極めることで手に入るスキル。

 一定時間力を溜めることによって次の技の威力が(Lv(レベル)+1)の数値倍になる。

 力を溜めてる途中でやめるとまた一から溜め直しになる。


 戦士ウォーリアというのは意外だった、柿本は情報収集が得意だから同じ忍者アサシンだと推測してので驚きを隠せない。

 選ばれる職業には何か決まりや基準があるのだろうか?

 いや、それよりも。


「ふふふ、何度見ても感動するなぁ」

 自分のステータスを見てにやけている柿本に相談してみる。


「柿本、自分の職業はみんなに見せていいと思うか?」

 すると柿本は右手を顎に添え少し考えてから急にまじめな顔で小声で言ってきた。

「どうなんだろうな、お前の職業を他のクラスメイト達が持ってるんなら大丈夫だと思う、が」


が?

「もしお前だけしか持っていなかったら、ほかのやつとは違って特別視されるかもしれないな」

「それは困る」

 そんなことになったらめちゃくちゃ目立つじゃないか。

 王国から特別扱いされて、クラスからも一目置かれる、想像しただけで背筋が凍りそうな状況だ。

考えると、急に不安になってきた。


 すると柿本が自分の肩をたたきながらこれも小声で言う。

「心配すんなって。

いざとなったらお前の味方になってやるし。

こういう時主人公は大体『隠蔽』みたいなスキルを使って切り抜けるものさ」

「そんなもの、持ってないけど?」


 すると柿本はいやりと笑う。

「身に着ければいいじゃん、Sp(スキルポイント)使って」

「なるほど…」

 Sp(スキルポイント)か、スキルをとる方法も踏まえて一度使ってみるのもいいかもしれない。

 ステータスを出して、Sp(スキルポイント)を使いたいと念じてみる、するとステータスボードの上に新たにボードが現れた。


■■取得スキル一覧■■

【鑑定】Lv,1

 ものや人を鑑定することで、そのステータスを見ることができる。

 Sp(スキルポイント)-10


【偽装】Lv,1

 仮の姿を作り敵から忍者アサシンと思われないようにするスキル。『鑑定』Lv,1クラスのスキルやマジックアイテムに対して有効。

 Sp(スキルポイント)-10


【二重息吹】Lv,1

 特殊な呼吸法で疲れにくくするスキル。

 魔法などで使用するMpが減る。

 Sp(スキルポイント)-10


【毒針】Lv,1

 毒のある針を敵に発射する、一定確率で状態異常;毒になる。

 Sp(スキルポイント)-20


【隠密】Lv,1

 気配を隠しながら行動することが出きるスキル。

 Sp(スキルポイント)-20


【短剣術】Lv,1

 短剣を扱うことができる。

 Sp(スキルポイント)-30


【自己鍛錬】Lv,1

 忍者アサシンが己を磨き上げるスキル。

 一定の鍛錬を積むたびにSp(スキルポイント)が入る。

 Sp(スキルポイント)-50

■■■


 気になるスキルはたくさんあるが、まず目的の物を取っておこう。

 柿本が言っていた【隠蔽】にあたるスキルは、恐らく【偽装】とみていいはずだ。

【偽装】の文字にタップする。

 すると警告らしきものが出てきた。


■■■

 Spを10消費して。【偽装】Lv,1を取得しますか?

 注意:一度スキルをとると選びなおしができません。

 YES

 NO

■■■


「む」

 注意書きを見て少しばかり悩んでしまう、

 もし、ここでスキルをとった場合、後に与える影響を考える。

 仮に自分の職業がクラスであまり目立たないものであれば、いまスキルをとることは悪目立ちする原因を作ることになるのでないかと。


「だとすると、いま取得するのは得策じゃないか…」

 そう結論付けて、ステータスボードを閉じる。


「取らないのか?」

 一連の行動を見て、柿本が質問してきた。


「まぁね、クラスの状況を見てからでも、スキルの取る取らないは遅くないはずだ。

 だとすればもう少し様子を見るのが上策じゃないか?」

「ああ、そりゃそうだ、こんなに情報が少ないのに、勝手に先走らないほうがいいよな」

 柿本も意見に賛同し、スキルの取得は保留となった


 その時、木製のドアがノックされる。


「柿本君と影本君いる?」

 影山です。

 この声は生徒会長の町田さんだ。


「ちょっとみんなで集まって話し合いたいことがあるんだけど、いいかな?」

 心なしかその声色は暗かった。

ステータスや名前は後々いじるかもしれません。

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