守るべき者の消失
シャノの腕の中でひとつの命が消えた。初めてだった、シャノが人の死を悲しんだのは。そしてその悲しみは怒りへと変わっていった。その時だった。聞き覚えのある少女の声が聞こえた。見るとミコが盗賊の下っ端の生き残りに捕まっていた。
「う、うごくんじゃぁねぇ。こいつがどうなってもいいのか。」
シャノは動けなかった。だが、シャノは静かに強力なツルを接近させた。気づかれていない。そしてシャノは言った。
「わかった、だからその子を離してくれ。」
「わかったよ。ほら行け。」
盗賊はシャノの方にミコを離した。ミコは何かを言おうとした。シャノも言おうとした、その時、ミコの胸を槍が貫いた。さっきの下っ端である。ミコはシャノに倒れかかった。シャノは下っ端を接近させていたツルで殺した。
「ミコ、どうしてここに来た!来るなと言ったはずだ。」
「し、シャノ君。私もう、だめみたい。シャノ君、お兄ちゃんは?」
ミコの一言にシャノは固まってしまった。シャノはミコと約束をしていた。タケルを助ける、と。つまりシャノはミコとの約束を果たせなかったのだ。
「ごめん、タケルを守れなかった。約束、守れなかった。」
ミコはシャノに対してこう返した。
「シャノ君、わかった。でも守れていても私が死んじゃ意味無いよね。シャノ君、私あなたに会えて救われたの。私達の親はね、昔来た盗賊に殺されたの。私はそれ以来心から笑うことがなかったの。でもシャノ君に会えてからね、心から、笑えるようになったの。」
シャノは泣いていた。ミコも泣いていた。
「シャノ君。ありがとう。あなたに会えなかったら、私、一生笑えていなかったかも。本当にあ…りが…とう………」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
ミコの命も消えてしまった。シャノの怒りと悲しみの叫びが村中に響いた。
─────続く─────