第六章 コボルトの両親と、ファボとの訓練、そして侵入者達
翌朝、エミリーはビブに揺り起こされた。
「起きて、リー。まだ朝早いけど、グルル達の両親が挨拶に来たから」
「う、ううん?」
「顔洗ってしゃっきりしろよ。俺は先行ってるからな」
ザギはそう言い残して縄梯子を上っていってしまった。
エミリーは上体を起こし、傍にいるビブを見て、警戒魔法もかけずに眠ってしまった事に気が付いたが、着衣に乱れも無く<穀潰し>もそのまま腕の中にあり、安堵すると同時に反省もしたが、そんな内心を表情には出さす言葉にもしなかった。
「起こしてくれてありがと、ビブ。顔洗うからちょっと待ってね」
「うん。二人も急かしてないからゆっくりでいいよ」
「二人は、コボルトだけど、どんな人達なの?」
エミリーが井戸水を汲み上げて桶の水で顔を洗い、髪を手櫛で整える間に、ビブはおおまかな情報を伝えた。
「二人はモーマニー商王国の北の方から移り住んできたんだ。コボルトの集落がやっぱり人間達に襲われて全滅して、二人であちこちを転々としながらトウイッチの森に落ち着いたのが二年前くらい」
「じゃあ、ここではあなた達のが先輩なのね?」
「まぁね。だけど、二人の方が年上だから、トウイッチからぼくらの面倒を見るよう頼まれてもいるんだ」
「それじゃ、二人は人間を憎んでたりはしないの?」
「魔物も人間もお互い様なとこあるからね。彼らの村を襲った人間の事は憎んでるかも知れないけれど、人間全体ってほどじゃないと思う」
「そう期待しておくわ」
ビブとエミリーが外に出ていくと、トウイッチの樹の傍の草むらに大きな布を敷いてあった。布の上には大きな編籠が一つとサンドイッチや飲み物が五人分並べられていた。
エミリーの姿を認めるとコボルト達は立ち上がってエミリーに挨拶した。
「初めまして、フーメルです。こちらは夫のグーゴルル。よろしくお願いしますね」
「グーゴルルだ。何がか知らんが、よろしくな」
フーメルは草木の複雑な刺繍模様の入ったローブを纏い穏やかな表情を浮かべた灰色の毛並のコボルトだった。短い伏せ耳とつぶらな瞳がエミリーから見れば愛くるしく見えた。対照的に、グーゴルルは革鎧を纏い弓と矢筒を脇に置き、茶色の毛並にぴんと立った三角耳と眦が釣り上がった瞳が精悍な印象的なコボルトで、無愛想に挨拶してきた。
「リーです。ご厄介おかけしますが、よろしくお願いしますね」
「全くだ。<穀潰し>なんぞ持ち込んできて」
「あなたったら。<穀潰し>を携えた人が来たら手を出すなって言われてたじゃないの」
「だから手は出さなかっただろうに」
エミリーとコボルト達の雰囲気が微妙になったのを見て取ったビブは、エミリーの手を引いて座らせた。
「自己紹介も済んだし早く食べよ。ザギがさっきから睨んでるし」
「まーな。ちなみにファボへの朝食はもう差し入れてくれたってさ」
「ありがとうございます、フーメルさん」
「どういたしまして。それじゃ食べましょうか」
エミリーが口にしたサンドイッチはパン生地も中に挟まれたハムも野菜も新鮮で、
「これ、おいしいですね」
と正直な感想を漏らした。
「でしょう?トウイッチが教えてくれた人間の料理の中では一番簡単で一番気に入ってるの。子供達の分も含めてたくさん作れるし」
「フーメルさんは野菜育ててて、織物師でもあるんだ。ぼく達が食べてる野菜も、着てる服とかもフーメルさんからもらったものだよ」
「子供の分を作るののついででね」
「フーメルさんはドルイドだから、野菜育てるのでも、繊維や糸の元にする植物探したり育てたりするのもスゲー得意なんだぜ」
「へぇ~、すごいですね!」
「あまりほめないで下さいな。下手の横好きです。あなたの今着ているような立派な物は私には無理でしょう」
フーメルはエミリーのローブの裾を手に取り、布地のしっとりした感触や縫い糸の確かさにため息をついた。
「んで、グーゴルルさんは罠の達人なんだ。弓もそこそこ上手い」
「そこそこってなんだザギ。君よりはずっと上手いだろ」
「俺は弓矢で戦うつもりないからいいもん。比べるのが間違ってる」
「そんな訳で、二人には着る物とか食べる物とかで時々お世話になってるんだ。反省部屋でご飯抜きの罰受けてる時でも、こっそりと差し入れしてくれたり」
「優しいんですね」
「人間に対してはそう振る舞えるかどうかは分からんがな」
グーゴルルが向けた激しい視線にエミリーは怯んだが、フーメルがグーゴルルの耳を優しくつまんでたしなめた。
「たまたま私たちの村を最後に滅ぼしたのが人間達だったというだけでしょう。ゴブリンと同じくらい、コボルトは弱いのだから、いつ他の種族に滅ぼされてもおかしくはなかったのだし」
「でも、人間が俺たちの村を滅ぼした」
「そこにリーさんはいなかったでしょう?」
「それはそうだが」
「俺らの村だって人間に滅ぼされたけど、オーガ達の奴隷だったし、あのまま人間が攻めてこなかったら、俺らは奴隷のままで殺されてたか食われてたよ間違いなく」
「ずっとずっと前にね」
グーゴルルは決まり悪そうにエミリーから目をそらし、話もそらした。
「あのファボとかいう人間はどうするつもりだ?」
「しばらく俺の実戦訓練相手にして、その後解放してやるつもりだけど?」
「危険ではないのか?」
「危険が無い訳では無いけど、殺しても彼を探しに他の人間達が来るだけだと思いますよ」
「ビブ君の言う通りだと思いますよ、あなた」
「だとしても、だ」
グーゴルルはサンドイッチの一つを一口でばくりと食べて飲み下し、弓と矢筒を背負って立ち上がると言った。
「そこのリーといい、あのファボといい、立て続けじゃないか。トウイッチの張った結界が緩んで来てないか、心配なのだよ」
「トウイッチがふらりと出てってからもう二ヶ月以上になるからね」
「でもそれ言ったら、ぼくらの誰もここにたどり着けてなかった筈だしね」
「違いないわね」
ザギとビブとフーメルが同調するのを見て、ふんと鼻を鳴らしたグーゴルルは背を向けて歩きだした。
「見回りに行ってくる。ザギ君達、手に負えない何かが起こったら、笛を鳴らすのを忘れるなよ?」
「覚えてるってばよ」
「いつも首にかけて持ち歩いてますよ」
「ならいい。ではな」
グーゴルルの姿が梢の間に見えなくなると、フーメルは頭を下げて詫びた。
「すみませんね。根に持ってて」
「いいえ、仕方ないと思いますから。私だって同じ立場なら恨みに思うでしょうし」
「それで、リーさんはテューイさんから託されたのですね?」
エミリーは迷ったが、認めた。
「そうですけど、フーメルさん達はどこまでご存知なんですか?」
「私たちはテューイさんと会った事はありません。ただし、トウイッチにこの森に迎え入れてもらい、見回りのお役目を頂いた当初から言われておりましたので」
「<穀潰し>を持った誰かが来ても、そのまま通すようにって?」
「そうですよ、ザギ」
「でも、布にくるんであって外からは見えなかったろ?」
「ほんのかすかですけどね、トウイッチの臭いが残ってましたから」
「マジかよ。コボルトの嗅覚半端無ぇな!」
「か弱いコボルトの唯一と言って良い取り柄ですからね」
「フーメルさん。トウイッチが<穀潰し>がやってきてる事を把握してる可能性はあるんでしょうか?」
「さあ。いろんな不思議な物を作られてる方ですから、可能性はあるでしょうけれど、私は知りません」
「ふ~ん、ま、いいや。あいつは帰ってきたい時に帰ってくるだろうし。あいつが好き勝手するように俺たちも好き勝手にするさ。とりあえずはファボとの実戦訓練だ!」
「鎖付きの枷探し出してからね」
「必要なのかそれ?逃げ出しませんて泣きながら誓ってたぜあいつ」
「必要だよ。何かあってからじゃ取り返しつかないんだし、訓練て実剣使うでしょ。事故でも何でもザギが大けがさせられてリーが人質に取られたりしたら、ぼくだけじゃどうにも出来なくなるかも知れないんだし」
「心配性だな~」
「私も、ビブ君のが正しいと思うよ」
リー達の様子を見ていたフーメルは言った。
「しばらくは私も付き添いますね。初歩的な癒しや足止めの魔法も使えますから」
「グルル達は?」
「来たがってましたけどね、何かあった時が怖いのでお留守番させています」
「んーじゃとっとと鎖付きの枷とやらを見つけてファボんとこ行こーぜ!」
ザギはそう言ったものの、ビブと二人がかりで二時間ほどもかけてようやく見つけ、その間、エミリーとフーメルはお茶を楽しみつつ互いの知っている魔法についての知識を共有しあって過ごした。
四人が反省部屋に着き、ファボの拘束をいったん解いて先ず彼がした事は逃げる事ではなくトイレで用を済ませる事だった。
「まったくもう昨日の夜も今日の朝も、何度ズボンの中で用を足す事を覚悟したと思ってるんですか!?その度にぼくは人として終わる事の恐怖に耐え、今こうして無事リー様に顔を向けられているわけですが」
「別にしちゃっても良かったんじゃね?」
「そんな恐ろしい事を言わないで下さいよザギ様!」
「まーいいや。とにかく訓練始めるぜ、覚悟はいいか?」
「ええ。とっととぱしりから解放されたいですからね!」
ザギがファボの剣を渡そうとすると、間にフーメルが割り込んで剣を手にした。
「フーメル?」
「ファボさん。鞘を腰から外して下さい」
ファボがおとなしく従って鞘をフーメルに渡すと、フーメルは剣を鞘に納めて魔法を唱えた。
「バインド」
ファボの剣と鞘は緑の蔦に覆われ、どう頑張っても剣を引き抜けない状態になってしまった。
フーメルは抜けなくなった剣と鞘をファボに渡して言った。
「あなたがもし逃げようとしても、同じ魔法で足止めしますからね」
「大変良くわかりました・・・」
「ザギ、あなたのハンマーも貸して」
「ちぇー」
「危ない状態なのは変わらないのですから、我慢なさい」
フーメルは綿を詰めた布地でハンマーの頭部をくるむと、さっきと同じ手順で綿袋が抜けないようにした。
「これじゃいざって時に戦えないじゃん」
「訓練が終われば外してあげますよ。お互いその状態でも相手にひどい怪我を負わせることは出来るでしょうから、二人とも気をつけるように」
「あ~い。やるぜ、童貞!」
「だから童貞言うなって言うてんやろこんちくしょー!」
「じゃー、とりあえず有効打を決めた方が一本取ったってことにして、三本勝負でいいかな。ぼくが審判もするね」
「ぼくがいきなり二本先取したらその場でぱしりで無くなる?」
「そうしてやるとも言いたいけど、そうしてやりたくもねぇよな!いくぜ!」
相手よりだいぶリーチの短いザギは迷わずにファボの懐へと踏み込んだが、
「甘ーいっ!」
予測していたファボは、ザギの死角の真上から剣を振り下ろした。
「当然読んでるに決まってんだろ!」
ザギはハンマーの柄と頭部に手を添えて頭上でファボの剣撃を受け止め、そのままハンマーの柄を剣の鞘に滑らせながらさらにファボの懐へと踏み込んでいった。
「それも、読んでる!」
ファボは片手を剣から放し、向かってくるザギの肩を掴んで地面へと押し倒そうとしたが、圧力が弱まった剣をハンマーで跳ね返し、伸ばされたきた手も続けてハンマーで払いのけた。
「どうだっ!?」
ファボの懐に入り込んだザギは誇らしげに言いながらハンマーをファボの横腹に叩き込もうとしたが、ファボは両手を広げてザギにのしかかりながら言った。
「ここまでの全てが罠!この体格差重量差で押し潰されて貴重な一本目をぼくに献上するがいいぃぃいっ!?」
ザギよりも頭一つ半くらいは背が高く、体積と重さはザギの三人分くらいはありそうなファボが両腕を広げてのしかかってくれば、至近距離にいたザギは逃げられないと覚悟を決めた。
その代わりにファボの横腹に振るおうとしていたハンマーの動きを止め、ハンマーの向きを変えて柄頭をファボの胸当てに覆われていない腹部に押し当て、地面へと倒れ込んだ。
横目からは、ファボが狙い通りにザギを押し潰したかに見えたが、その直前でハンマーの柄がファボの腹部に思い切り食い込み、
「ぐえええっ!」
と呻き声を上げてファボは体を横転させた。
ファボが上からどくとザギは立ち上がり、ファボの額にハンマーを寸止めで振り下ろし、
「狙いは良かったと思うぜ?」
と誉めた。
「じゃ、一本目はザギが先取ね。ファボ、大丈夫?」
「は、吐きそう・・・」
フーメルはファボに隣にひざまずいて、ザギのハンマーの柄が食い込んだ辺りに手を当てて唱えた。
「マイナー・ヒール」
淡い緑色の光がフーメルの手に宿り、すぐに消えた。
「良くなりました?」
「え、ええ。出来ればその役はリー様にして頂きたかった所ですが、贅沢は言えませんありがとうございました!」
「どういたしまして。大怪我は治せませんから、二人ともそのつもりで」
「はーい、フーメルさん。じゃー、次いこうぜ次!」
「くっくっく!今の返し技はもう覚えたから次は食らわんぞ!」
「その台詞、そっくりそのまま返すぜ」
「はいじゃー、二本目どうぞー」
ビブがあまりやる気無く開始を宣告したが、今度は二人ともお互いの動きを警戒してどちらも飛び込まなかった。
「かかってこいよ、ファボ」
「んーじゃ、先手取らせて頂きますよザギ・・、さん!」
ファボは左手の籠手を盾の様に差しだしながら、腰溜めにした鞘剣をザギに向かって突き出した。
ザギの目に向かって突き出された剣先をファボはハンマーで払うが、ファボはすぐに剣を引き戻して、立て続けに剣をザギの顔や鳩尾に向かって突いていく。
ザギはハンマーで払ったり体捌きで突きをかわしつつ、うれしそうに言った。
「そうそう、これだよ!やりゃ出来るじゃん!」
「どういたしましてってか、ゴブリンから上から目線でほめられるぼくっていったいい!?」
ファボはそう言いつつも、目を狙った突き出しのフェイントから小さく鋭くザギの右手の甲を叩いた。
初めてフェイントを入れられてザギは痛みよりも驚きでハンマーを手から放し、
「やるじゃん!」
「この一本はもらう!」
「やらねぇけどな!」
ザギは姿勢を低く屈めつつ左手でハンマーを握り、ファボの足下に飛び込み、ハンマーの頭でファボの左足の親指をごつんと叩いた。
「ぷぎゃーっ!?」
ファボは悲鳴を上げて倒れ込み、
「足、親指、痛い、死ぬ、立てない、反則ー!」
と立て続けに抗議した。
「実戦ならピックで親指潰してるよ。相手がプレートメールで足覆ってたとしても、相手の親指ピックで打ち抜けば倒せるっての、トウイッチから教わってたし」
「ずるいー、ずるいーっ!」
「お前だってフェイント使ったじゃん。あれ良かったぜ。今度から俺も使わせてもらう」
「えぇー、ぼくはザギ様にハンデを要求する!」
「却下」
フーメルが叩かれたファボの親指の痛みを癒してファボの抗議の声は止んだが、
「まだじんじんしてます」
「つまり私のヒールだと今くらいの痛みを止めるのにも充分でないという事です。お二人が訓練する時の力の入れ具合の目安にして下さいね」
「「はーい」」
ザギとファボは揃って答えた。
「それじゃ小休止してから続ける?」
「ああ、日が暮れるまで!」
「ぼくが二本取って解放されるまで!」
「そんな訳ないでしょ。ザギ、昨日私から言いつけられた仕事忘れてるでしょ?」
「うん、忘れてる。なんだっけ?」
「私の部屋を掘り出すの。半日かかっても終わらないわよね?」
「むーん。反省部屋にあるベッドみたいな掘り込みだけなら何とか」
「じゃ、今日はそれ目標で。だから今日はあと三本だけね」
「三本を三勝負?」
「粘るわね。じゃー、今の三本勝負はもうザギの勝ちだから、あと二回ね」
「よっし、なるべく長引かせるぞー!」
「あんまり長引かせたくないけど勝つぞー!」
「ぼくも他にやりたい事あるし、長くてもお昼までね」
「そこまでかからない方に私は賭けるけどね」
「あ、それは同感。結局ザギは勝負つけちゃうと思うから」
「なんでぼくが勝つ方には誰も賭けてくれないのですかせめてリー様が賭けてくれればもしくは勝ったらキスのご褒美が待っていれば一騎当千の猛者となれるのにちらっ」
「私先に帰る」
「嘘です戯れ言ですせめて見守ってて下さいそれだけで勇気とやる気が湧いてきて止まりません!」
「それは何か違う気なんじゃないの・・・」
「それじゃそろそろ二回目の三本勝負始めよー」
やる気の無いビブの合図で始まった次の三本勝負も、その次の三本勝負も、ファボの工夫をザギの反応が上回って結局三十分もかからずに終わってしまった。
フーメルがファボの傷を癒し、ビブがファボに足枷と手枷をかけようとしていた時だった。
ワオーーーオオゥオゥオゥッ!
犬、ではなく狼でもなく、コボルトの遠吠えがどこからか響いてきて、フーメルはさっと顔色を変えた。
フーメルは同じ様な遠吠えをおそらくはグーゴルルと何度か交わすと、ザギ達に言った。
「単独でない侵入者が入り込んだようです。ぜひ、あなた達の手も借りたいと」
「誰が来たんだ?」
「十匹ほどのゴブリンの群と、それを追っている人間の冒険者達が三人」
「おっしゃ行くぜ、みんな!」
「待ってよ、ファボはここに置いていくべきじゃないの?」
「どうしてだよビブ?そいつだっていないよりはマシだろ」
「戦闘中に人間側に裏切られたらどうするのさ?」
当たり前な疑問を聞かされてザギはファボに直接訊いた。
「お前、俺たちを裏切るの?」
ファボは周囲を見渡して、口ごもってはっきりと答えられなかった。
「そりゃ、正直になんて答えられないわよね。普通、裏切って当たり前な場面なんだし」
「リー様」
「私から今言えるのは、ここで私たちに協力しなければ、今後あなたを解放する話は消えるって事」
「そんな・・・!」
「だってそうでしょう?じゃなければあなたは、今じゃなくてもいつかは私たちを殺すって言ってるのと同じなんだから」
ファボは迷ったが、すぐにリーの瞳を見据えて言った。
「リー様の為になら、ぼくは戦えます!だから、活躍したら・・・!」
「誉めてあげるわよ、ぱしり二号」
「はい、そうでしたね。死なない程度には頑張りますですちくしょー」
ザギ達のやり取りにやきもきしていたフーメルは言った。
「状況は切迫してます。急ぎましょう」
「場所は分かるの?」
「夫の匂いを嗅ぎ分けられないわけ無いでしょうに」
そうしてザギ達はフーメルの後を追って走っていった。