第三十章 戦いの前段
プヘルテ達の、オーガの群の根拠地というよりは、多種族が共存するコミュニティは、ノーム達が築いた地下居住地の玄関口の周囲にオーガ達が居住地を拓き、その周囲に人間とゴブリンそれぞれの居住地を築いていた。少し離れた高台にあるノーム達の裏口の周囲には砦が築かれ、こちらは三種族と使役されるノーム達共同で周辺の森を監視していた。
人間達の統率を任された中年女のアジェンダは、肩にノーム製の銃を担ぎながら櫓へ登り、そこで見張りをしている青年グレドーに声をかけた。
「異変は無いか?」
「今のところは、ですけどね」
グレドーは銃眼から目を離し振り返って答えた。アジェンダはグレドーの肩をぽんと叩いてねぎらいつつも、不安を口にした。
「都に行った偵察の二人から、プヘルテさん達と連絡が取れなくなったと伝えられて今日で三日目か」
「たくましいお婿さん達もついてるから、滅多なことは無いと思いますけどね」
「彼女の仇のテューイやグリラと遭遇したのなら分からんけどな」
「場所がトウイッチの森の側ですし、モーマニーの国が滅んだってんなら、その二人もどこでどうなってるか分かったもんじゃないんじゃ?」
「世の中なんだって起こり得るさ。よしんば人間の兵士達にやられたとしても、馬を使ってさえここまでは二週間以上は軽くかかる。襲撃があるとしてもまだ先の筈だが、警戒は怠るなよ?」
「うちらが逃げ出してきたとこの領主はまだあきらめてないでしょうしね」
「ああ。でも私達には、ここより他に行くところなんて無いんだ」
「リーダーがオーガですけど」
「前の領主よりはずっとマシなオーガだ。それで充分だよ。女達に気を使ってくれてるしな。また来る」
「はい、アジェンダ姐さん」
「おばさんでいいよ」
「そんなわけいきませんて!」
スコープという遠くを拡大する装置の付いた狙撃向きの銃を手に、グレドーはアジェンダに敬礼してみせてから、見張りに戻った。
アジェンダが見張り台を降りて砦の中を歩き回り、行き交う相手に挨拶すると、オーガやゴブリンはぎこちなく、人間は快く、ノームは複雑そうに挨拶を返してきた。
プヘルテがノーム達を従える為に何をしたかはアジェンダ達も聞いていた。最初に付き従っていた人間達はプヘルテ達に捕まえられ戦いにも参加させられていた。
プヘルテも、父親が率いていた群を人間に滅ぼされて自身も死にかけたという。だからこそ群に人間達を迎え入れ、共存しようとしていると聞いて驚いた。それもオーガ達の力と恐怖による支配ではなかったのでさらに驚いた。
ノーム達も最初から虐殺するつもりは無かったらしい。交渉が難航し、互いの強硬派が先鋭化し対立、暴発。起こって転がりだしてしまった事態に取り返しはつかず、プヘルテは暴発の主犯達を自ら処刑。殺されかけていたロザルは立場上囚われの身のままだが、その家族以外は比較的自由に暮らし、砦の守りにまで一定数が参加させられていた。
居住地の周囲には農作地が面積を広げつつあり、拓くのはオーガやゴブリン、耕すのは人間など、役割分担も出来つつあった。総勢も増える一方だが、飼っている家畜達の数も増えているし皆肥えていた。
アジェンダはかつての故郷のみすぼらしい、何もない集落の飢えと貧困と絶望しかない日々の様子を振り返った。仲間達と逃げ出し、少なくない人数が領主の追っ手に殺された。偶然逢ったプヘルテ達に助けられて共同体に迎えられ、彼女達と生活を共にするようになった。
オーガやゴブリンにも物怖じしなかったせいか、人間の言葉や暮らしぶりを教える役を任され、プヘルテに気に入られて人間達の管理役も任された。
最近は、かつてのアジェンダと同じように希望を失っている人間達を連れ出す役まで買って出て、いまや人間達が共同体の中で一番人数が多いグループになっていた。
アジェンダは、砦の中庭にある、ノーム達が築いた裏口から地下通路に入った。
かつてはノーム達の身長に合わせた通路のサイズで、人間達でも入り込むには腰を屈めて頭をぶつけないように気をつけないといけなかったが、ゴブリン達によって、少なくない主要通路は人間達にも通れるくらいなっていたし、ロザルの部屋と作業場へと続く通路だけはオーガ達が強引に自分達が通れるくらいにまで拡張していた。
地下の目抜き通りの交差点には複数のオーガ達が詰めていたが、その中にアジェンダに一番話しかけてくる若いオスのオーガがいた。
「おぉ、おおっがさん。元気が?」
「あたしゃお前さんのお母さんじゃないよ」
「ごれがら、なる」
「ならんよ」
「わがらんべ、んなごと」
ゲベルというこのオーガは、13歳。人間で言うと15から17歳くらいらしい。つまり一番喧嘩早く、乱暴で、しかも盛りがつく年頃らしい。
アジェンダからすればまだまだ子供にしか見えないオーガで、背丈や肩幅は大人のオーガに比べれば一回り以上小さかったが、それでもアジェンダや人間の大人の男よりはだいぶたくましかった。
「あのねぇ、ゲベル。イフェンテはまだ十歳なんだよ。将来の相手を決めるのはまだ何年も先さ」
「いい。おれ、待づ」
アジェンダは一つため息をついてからもう何本目かわからない釘を差した。
「あの子はまだ子供なんだからね。無理強いとか乱暴とかしたら、あんた、殺すからね」
「わがっでる」
「あの子は、ロザルのところ?」
「ああ。あの二人、仲良じだがら」
「オーブフも?」
「オーブフはオザル、好ぎ。ゲベルがイフェンデ、好ぎなのど同し」
「あの子も、もーちょっと、こう、ねぇ・・・」
「あいづ、大人。ぞれに、もーちょっと、こう、って、どおいう意味?」
「似た者同士って事なのかしらね。あんたみたく、不器用だからねぇ。心配になるのさ」
「心配じてくれでるのか、おでの事?」
「あんたとオープフが一番危なっかしいからね。この群の中で」
「危ないっで、強いって意味が?」
「無い。違う。言葉はまた今度教えてあげるから、見張りに戻りな」
「あ”い、おっ母ざん」
地表の見張りに戻っていくゲベルを見送ってから、
「またガンダのおっさんと話しとかないといけないかもねぇ。アガンダが何かしでかさないかも心配だよ」
アジェンダは、群の中で最年長のオーガと、その娘のオーガの名をつぶやいてから、さらに通路の先へと進んでいった。途中いくつかの鍵と見張り付きの鉄格子を通り抜けて、愛娘とその親友の話し声が聞こえてくる扉の外側で立ち止まった。
「オープフ。いるんだろ?出ておいで」
アジェンダが立ち止まってぐるりと見回してみても、壁のどこも動き出さなかったが、あきらめたアジェンダが壁にかけてあった松明を一本取り外すと、壁の一部がするりと剥げて、その向こう側からアジェンダよりは十歳ほど若いがもはや青年とは言えないオープフが顔を覗かせた。
「何だ。今、仕事中だぞ」
「私もだよ」
「だったらどうして」
「いるかどうか分からないなら確認のしようがないだろうに」
「・・・・・」
「ま、言いつけは守ってるみたいで安心したよ」
「おれ、ロザルに許してもらう。それまで言いつけ破るつもり無い」
「もしずっと許してもらえなかったら?」
「だいじょうぶ。きっと、許してもらえる」
「どうしてそう思うんだい?」
「ロザル、おれの事、嫌いじゃないと思うから」
嫌いじゃないと好きってのはだいぶ違う筈だよとは、アジェンダは言わずに部屋に入り、扉を閉めた。
「アジェンダ、外はいいのか?」
「お母さん!」
「外は一通り見てきた。ここ寄ってから、少し遠出してくる予定だけどな。イフェンテも仕事の邪魔してないか確認しないとだし」
「だいじょうぶだよー。あたしももう十歳なんだし!」
「まだまだ子供だろうに」
「いいや。アジェンダの娘、賢い。大人でもないけど、子供でもない」
「さっすがロザル!わかってるー!」
「ロザル。あまりこの子を調子に乗せないでおくれ」
「だいじょうぶ。ロザルも大人かと言われればまだ大人ではないからな」
「そうなの?」
「ああ。職工として、まだ納得のいく作品創れてない。それ創れるまで、ロザルは大人じゃない」
「それはそれで大人の定義とは違うとは思うけどねぇ。二人とも、オープフやゲベルから悪さとかされてないかい?意地悪とか」
「ゲベルはともかくとして」
「オープフは、ずううううううっとロザルに張り付こうとしてるからね。変態さんなの?」
「オーガから割り当てられた役目でもあるからねぇ。あまりしつこかったら扉閉めて鍵かけるとか閉め出してあげな」
「そうしても、扉の覗き窓からずっと覗いてくるの、どうにかして欲しい。この仕事場でも、個室でもだ。頭、おかしくなりそう」
「プヘルテもねぇ、あんたの身柄だけについては妥協しないからねぇ。同じ女同士だと情が沸いて逃がしてしまうんじゃないかと疑ってるし。だから人間のあいつなんだけど」
「私、ぜんぜんきれいじゃない。アジェンダでも私よりずっときれい。どうしてあの男は私を気に入った?」
「さあねぇ。そりゃあ私にもわかんないよ」
贔屓目無しに見て、人間の基準で、ロザルは美人とかかわいいとは思われなかった。アジェンダは自分を十人並みと見ていたし、娘のイフェンテはどちらかと言えばかわいい方に入るだろうというのは親の贔屓目かも知れないが、それでも、このオーガ主導の不思議なコミュニティで一番厄介者と見られている二人が、自分の娘とその親友となったノームの娘にそれぞれ惚れ込んでしまった事が、アジェンダの頭痛の種だった。
ロザルの仕事を邪魔しないよう、それでも時折は道具を手渡すくらいの手伝いはするイフェンテの姿を見てから、アジェンダは外へ出ようかと扉に手をかけたが、足下に、うっすらと煙が通路側から流れ込んできている事に気が付いた。
「火事か?ロザル、イフェンテ、避難する。オープフ、二人の後ろに付きな」
「りょ、了解!」
壁がぺりぺりとめくれていき、オープフが全身を現すと、アジェンダは三人を先導するように歩き始めた。
一番近い出口の裏口の方へとアジェンダ達は向かったが、ロザルの部屋から一番近い鉄格子は開けられてさっきすれ違った見張り役達はおらず、外の見回りが担当の筈のゴブリン達がアジェンダとその背後にいるロザル達を見て言った。
「裏口、ダメ。砦、人間達に攻められてる。逃げるなら、別の隠れ場所へ」
「バーグワ。外が持ち場の筈のあんたがどうしてここへ?それに人間達って何人くらいが?」
「ゲベル達、戦う為に飛び出して行った。俺、敵見つけてみんなに知らせて回ってる。お喋りしてる暇無い。急ぐぞ」
「待って、他のみんなは?」
「心配するな、ロザル。大切な人質も、みんな逃がす。無駄に殺させない」
そうしてバーグワは第三の出入り口へと一同を引っ張っていこうとしたが、アジェンダは、バーグワの背後に控えていた見かけない顔のゴブリンを見つけて、
「ちょいと待ちな。あんた初顔だね?いつから群に入った?」
「ついさっきだよ。おばちゃん」
見慣れないゴブリンが、ゴブリンには似つかわしくない確かな造りのハンマーピックを構えると、アジェンダも肩に掛けていた銃を構えて、
「ロザル、イフェンテ、表口を目指しな。オープフは二人を守って」
「ま、ま、任せろぉ」
どんと胸を叩いてみせたオープフだったが、唐突に口から泡を吹いてその場に倒れた。
「ちょっ、お前さん達は?」
「オープフ?!」
オープフの背後にはもう一匹の紫色の肌をした今まで見た事のない落ち着いた雰囲気のゴブリンがいて、アジェンダ達に両手を上げて言った。
「ぼく達にあなた達と戦う意志はありません。ぼく達はキーブーに頼まれてロザルさん達を助けに来たんです」
「キーブーが?!」
「その証拠はあるのかい?それに敵襲とか火事とかはあんた達じゃないってのか?」
「煙はぼく達ですけど、敵襲は別口です。ざっと百人くらいいて、魔法使いも複数混じってました」
紫色の肌をしたゴブリンは、銃の引き金をロザルに渡し、ロザルは一瞬でそれがキーブーの愛銃の物だと判別した。
「これ、確かにキーブーの物。これ、どうしてお前達が持ってる?殺したのか?」
「生きてます。もう一つの出口の先でロザルさん達を待ってますよ。他のノームの人達もそっちに誘導してますから急いで下さい」
「ちょいと待ちなよ。勝手に話を進められちゃ困るんだけどねぇ」
「・・・オーガ達に協力的な人間達もいると聞きました。今攻めてきてるのも、あなた達に引き込まれた領民を救出しに来た元領主のものらしいですよ」
ぎりっと歯ぎしりしたアジェンダは毒づいた。
「デギャンめ、どこまでもしつこい!でも迷ってる暇は無さそうだね、ロザル、イフェンテ、あんた達は逃げな?」
「どっちへ?」
アジェンダは見慣れない二匹のゴブリンに尋ねた。
「どっちが優勢なんだい?」
「五分五分だけど、人間達のが押し気味ですね」
「ノームやゴブリンが欠けてたんじゃそうなるか。プヘルテさん達の留守が狙われたのも痛いな。くそっ!」
裏口の方へと駆け出そうとしたアジェンダの手をイフェンテが握って止めようとした。
「お母さん、逃げるなら一緒じゃなきゃイヤ!」
「ごめんな、イフェンテ。やばくなったら逃げるけどさ。少なくない人をここへ引き寄せて、それをあの領主が取り戻しに来てるってんなら、私が逃げるわけにゃいかないだろ。ロザル、頼むわ」
「イフェンテ、行こう」
「やだー!お母さんと一緒じゃなきゃいやだー!」
アジェンダはイフェンテをぎゅっと抱きしめてからロザルへと突き放し、
「また後でな」
と言い残し去ってしまった。
イフェンテは後を追おうとしたがロザルに引き留められ、ロザルは二匹のゴブリンに告げた。
「キーブーの所に案内してくれ」
「分かった。急ごう」
だいぶ煙の濃度も濃くなってきていたが、ロザルはハンマーを構えているゴブリンに言った。
「お前、その武器、魔法かかってるな?」
「ああ」
「お前、だいぶ出来そうだ。一つ頼まれてくれ」
「内容によるぞ」
「さっきのアジェンダ、守って欲しい。危なくなったら連れて帰ってきてくれ」
「ザギ、ダメだよ。そしたら計画が」
「ま、いいんじゃね。俺もお前に頼みごとあったし、それ聞いてくれるならあいこだ」
「頼みごと、何だ?」
「お前、呪術出来るだろ。キーブーに聞いた。俺に教えてくれ」
「どうしてゴブリンが?まぁいい。私に出来る事は教えてやる。急げ」
「ああ。絶対に助けられるとか約束は出来ねぇけど、いいか?」
「それくらい、分かっている」
「ザギ、深追いしたり、一人で敵の真ん中に飛び込んだりしたらダメだからね!」
「そん時の状況次第だよ、ビブ。また後でな!」
そうしてザギはイフェンテの頭をぽんと撫でてからアジェンダの背中を追っていった。
ビブは倒れているオープフの手足を縛ってもう一人のゴブリンと担ぎ、第三の出口へとロザルとイフェンテと急いだ。
そのしばらく前の事。
オーガ達による共同体居住地と砦の偵察を終えた<鉄槌兵団>団長のレーヴァは、同行者達にぼやいた。
「プヘルテ達がいないってのは本当ぽいな。俺としちゃあ残念だが」
「団長の得物とかみ合いそうな獲物ですもんね」
「誰がうまい事言えと言った、レデゥ」
「大目に見てやれよ、そんくらい。副団長の器が疑われるぞ、グスタブ」
「若造を大目に見ても不相応につけあがるだけですよ。で、どう攻めるんです?」
ふむ、と頭をかきながら、レーヴァは身長2メートルはある自分とほとんど変わらない長身の女装男に問いかけた。
「今日なら何メートルくらいいけそうだ?」
「そうねぇ。今日の湿り気からすれば50は堅いわね。短時間ならその倍もいけるわよ、レーちゃん」
「だからちゃん付けで呼ぶなっての。見てきた感じ、砦の方を人間その他が、居住地の方はオーガが中心に守ってそうだったから・・・」
考えたが考えがまとまらなかったレーヴァは助けを求めて副団長を見つめ、グスタブは呆れながら助け船を出した。
「被害はオーガ達に集中させたい。そうですね?」
「そうそう。あの領主から逃げてきた連中、殺したらもったいないというかかわいそうというか」
「逃がしたいとはっきり言えばいいのに」
「でもな~、うちらにゃゼニが必要なんだろ?ゼニがぁぁ!?」
「ぶっちゃけ、そうです」グスタブは肯定した上で、情けない顔をしている団長に付け加えた。「が、何人確保しろとは言われていません。逃げた、いえオーガ達にさらわれた領民をオーガ達から救出する手助けをして欲しい、が、依頼内容です。その約束を違えなければ報酬は得られる筈です」
「まー、残虐さで有名なデギャン候としては厄介なオーガに俺達をぶつけてる間に、自分に逆らった連中を皆殺しにしてやりたいと思ってるだろうが」
「ノーム製の銃を相手が何丁持っているか次第ですが、ジバニーが参加している側はかなり損害を減らせるでしょう」
「逆はその逆か」
「隊長と精鋭をオーガ達にぶつけて逆方向に誘導し、他の者達で砦を攻め落とすとか」
「落としちゃったら犠牲ふえちゃわない?」
ジバニーの心配に、グスタフはずるそうな笑顔で答えた。
「何カ所か、砦の外壁に穴を開けます。デギャン候が寄せているのとは逆側がいいでしょうね。そして砦になだれこんでも、彼らの逃げ道を作っておくんですよ」
「悪くないな!」
「でしょう?」
「かえって警戒するんじゃないの?」
「それでも、デギャン候の兵士達と、砦になだれこんできたその手勢がオーガ達を狩っていけば、強制せずとも逃げ道へとなだれこんでくれる筈です」
「さすがグスタブ!うちの副団長がお前で良かったよ!」
「脳筋ばっかだもんね。レーちゃんの傭兵団」
「ジパニー達だって元は身内じゃねーか」
「モーマニーさんが殺られて十大商人がばらけて、うちらが第十席だったホゼイヤさんとこから契約切られるまででしたけどね。うちの脳筋でない虎の子の魔法使い達を魔法ギルドの傭兵として貸し出してなければ、うちらもっと早くに解散に追い込まれてましたよ」
「言ってくれるなグスタブよ。それを言うとこいつは・・・」
「私何肌だって脱いじゃう!レーちゃん好きにさせてくれるだけで兵団があたしに作った借金ちゃらにしてあげるわよ!」
「団長の貞操か、兵団の存続か。悩ましい所ですが、いつまで保つ事やら」
「悩むな。この仕事片づけて報酬もらえれば一息つけるだろ」
「そらそうですけどね。でも・・・」
「どうした?」
「グーちゃんでも、一晩金貨五ま、ううん三枚くらいね」
「安っ!なんでそこ値下がるんですか?!」
「ちなみにレーちゃんなら十枚よ!最初だけ百枚ね」
「検討の価値ありですね」
「でしょ?」
「無い無い!で、副団長、何を言い掛けてた?」
「いやね。モーマニーの大旦那が亡くなって国が弾けてしまってから、テューイの旦那とか、今頃どうしてるのかなって」
「レーちゃん、この兵団任せたがってものね」
「鉄槌兵団なんて名乗ってて、当代随一の鉄槌使いが入ってないとか洒落になってないんだよホント」
「団長のだってノームの業物でしょうに」
「立派な魔法の武器よ。それで二つ名ももらったでしょ?」
「つららのレーヴァとか、今一というか今三くらいじゃねーの?」
「あまり響きが良くないのは認めます」
「氷柱のレーヴァとかのが格好良いんだけどねぇ。惜しいわ」
「どっちにせよテューイの旦那には一度も勝てなかったけどな」
「で、いつ仕掛けます?払暁?」
「いいや、寝込みを襲ったらあっさり勝負ついて、逃がしたい連中を逃がせないかも知れないだろ。連中が朝飯食い終わった頃にでもゆるりと仕掛けるさ。オーガをひっかけながらな」
「了解。ハックとスタックは?」
「最初だけ、俺につける。おびきだしたオーガ連中をだいたいシトメたら、砦の増援に向かわせる」
「あたし達は?」
「ジパニーは、仕掛けの中心にいてくれ。相手が余計な策を練る時間を与えたくない」
「つまりはレーちゃんの側ってことね!いいわよ、もちろん!」
抱きつこうとしてきたジバニーを腕で遠ざけながら副隊長グスタブにデギャン候への遣いを、甥のレデゥには二番隊と三番隊の隊長のハックとスタックへの遣いを頼むと、レーヴァは意気込んだ。
「さーて、見せてやるぜ。脳筋達の力って奴をよ」
PCトラブルで掲載が遅れてしまいました。この後2,3話くらいは更新できる予定です。
pixivの方で、ガルパン二次創作のGuP Zweite(http://www.pixiv.net/series.php?id=687596)という作品も書いてますので、よろしければそちらもどうぞ。