第二十九章 作戦会議
半年ほども空いてしまいましたか。お待たせしました。
pixivの方で、ガルパン二次創作のGuP Zweite(http://www.pixiv.net/series.php?id=687596)という作品書いてたのと、呪術辺りの設定煮詰まってたのが主な要因でした。
これからはぼちぼちこちらも更新かけていく予定です。
ザギ達から相談を受けたテューイは、頭上に浮かせているオーガ達をビブとエミリーに眠らせてもらってから、切り出した。
「俺は君の教導役、いわば師匠だ。トゥイッチから任されてる以上、聞いておかないといけない事がある」
「おう、何でも聞いてくれよ」
「君は、このオーガ達をどうしたい?」
「どうって、別にどうも」
「やはりな。君にとって重要なのは、そのロザルという呪術と扱え魔法の道具を作れるノームの娘だけで、彼女が救いたいかも知れない同族は助ける必要があるかも知れない。そうだな?」
「ああ、たぶん、そうなる。な、ビブ?」
「テューイさんの話にはまだ続きがあるよ。どうぞ先を」
「うむ。オーガ達の残党を討ち取るだけなら、俺と、エミリーの二人だけでも十分だろう。だが、何人がどこに囚われてるかも定かでないノーム達を含めてそのロザルを助けるというのは、かなり難易度が上がる」
「ロザルが囚われてる場所なら分かる。他の仲間のも、その見回りや見張りがどうなってるかも!」
キーブーの反論を受け入れてから、テューイは疑問を呈した。
「なるほど。それは確かに有用な情報となるだろう。だが、主のプヘルテ達がいない間に、特に警戒が厳重にされたり、一部だけでも位置を変えられたりしていれば、こちらの救出作戦は挫折するかも知れない」
「弱気だな、おっさん」
「俺は君の覚悟を聞いてるんだ。最悪でも、ロザルと、出来るだけ多くのノーム達を助けだそうとはするだろう。だがその課程で、オーガや人間やゴブリン達を、君は殺せるのか?」
「倒せばいいだろ、そんなの」
「倒して救出したとする。だがプヘルテ達を殺さなければ、取り返しに襲ってくるだろうな、この森を。あるいはこの森にやってこようとする者達を」
ザギにもビブにもエミリーにもファボにも、テューイの意図は伝わった。
「プヘルテ達と人質交換して、ノームは追わない、取り返しにも来ないと誓いを立てさせれば良いのでは?」とビブ。
「<管理者>に誓いとして認められるかどうかその時になってみないと分からん。オーガ達の気性からして、敵に敗れた族長と側近を見捨てる可能性もある。そうなれば人質交換は成立しなくなる」
「とすると、最初から人質交換は持ちかけずに、いざという時の切り札に取っておいた方が良さそうですね」とビブ。
ああ、とテューイがうなずいたのを見て、イージャがキーブーに問いかけた。
「奴らがどのような形で生活基盤を築いているか知らんが、おそらくノームは地下に築いていてそこに囚われている筈じゃ。違うか?」
「そうだ。ノームの巣窟に入り込めるのはノームかゴブリン、それと背が低い一部の人間達くらいまでで、オーガ達には無理だ」
「ふむ、良い事を聞いた。それでは、ノーム達の見張りは、主にゴブリン達が行っていると?」
「ああ。だが、ロザルや、銃の保管庫なんかは人間達に見張られてたし、ロザルの家族なんかはオーガ達の住居近くに囚われてる。ロザルが逃げ出したりしたら、いつでも殺せるように」
「じゃあ、確保すべきはまずそこの家族達だね」とビブ。
「ああ。ロザルにとっても一番失いたくない相手だからな」とキーブー。
「外の見張りにもゴブリン達は出ておるのか?」
「そんなに数は多くないが」
「では、ゴブリン達と我を先ず接触させよ。さすれば我が手足、我が目耳としても扱える」
「それって、相手を乗っ取れるって事?」
「いいや。感覚の共有というものじゃな。我に服従した者としか共有は出来ぬが」
「それでうまくいけば、ロザルや他のノーム達が囚われてる場所や、警戒態勢の現状を確かめたり出来るけど、ゴブリン達がいつもと違う動きをし始めたら、オーガや人間達にも警戒されるんじゃ?」
「そこは連中の気を余所に引きつける何かがあれば良かろう」
「でも、何か異変があれば、ゴブリン達が真っ先に駆り出されて矢面に立たされるんじゃ?」
「どうなのじゃ、キーブー?」
「普段なら、そうかも知れない。だけど、ノーム達の巣窟はそれなりに広い。ゴブリン達で手分けしてようやっと見張れてるくらい。だから、全員は絶対に駆り出されない」
「オスだけとか。メスは残されるとか」
「だとすると、まずいかも知れぬな。メスは我が支配が及びにくい事がある故」
「まーでも、それはやってみた方がマシだろ。でよ、魔法の武器って、相手方にいくつくらいあるんだ?それでだいぶ状況も変わるんじゃねぇの?」
「お前、意外に頭いいな」
「ほめても何も出ねえぞ。最悪、テューイのおっさんとかエミリーが封じられるか釘付けにされるだけで、他の連中全員殺されてもおかしくねぇだろ」
「ザギにしては弱気だね」
「俺であちこちにばらけた全員を守りきるなんて出来ないって知ってるだけだ。さっきも下手したらリーもファボも殺されてたしな」
「そうだったね。で、どうなの、キーブー?」
「そんなに数は多くない。一番良い方なのがプヘルテが履いてるブーツ。他には、三つか四つくらいしか無い筈」
「若干増えてるかも知れなかったとして、どんな物なんだ?」とウルベ。
「魔法の武器とは違うかも知れないが、磁力を発生するナックル。相手の武器や防具を吸い付けて動き封じてしまったりする。テューイやザギも武器取り上げられたらピンチになるだろ?」
「そりゃそうかもな」
「まぁ知っていれば対処は可能だ。他には?」
「闇を発生する盾。その盾の正面だけに光通さない闇の空間作る。これも知らなければ即死させられるし、知ってても対処しにくいと思う」
「そんな便利そうなの、どうしてギーガは使ってなかったんだ?」
「今回は偵察が目的だった。だから、留守の間の守りを固める方が大事思われた」
「なるほど。それで他には?」
「生命力吸収出来る鞭。体に巻き付けられたら血や水分なんかも吸い取られてしまう危険な武器」
「おっかねぇ武器だな」
「あと、これは武器とは違うかも知れないけど、一番危ないかも知れない魔法の道具。形も色も大きさも自由に変えられる布」
「それがどうして危ないんだ?」
「土の壁に向けて広げれば壁そのものの色合いとかになって見分けつかなくなる。石壁でも、暗がりでも、何にでも変わる。ロザルの見張り役がこれ使ってる。居るか居ないかを確かめるのも大変」
「んー、まぁ相手がそういう道具を持ってて身を隠してるというのなら、対処のしようはあるかな」
「さすがビブ!で、どうするんだよ?」
「んーとね。キーブー。オーガー達は、ノーム達を無駄に殺すつもりは無い。この考えはあってる?」
「ああ。間違ってない」
「だったら、イージャさんに偵察してもらって、どこに誰がいるか確認したら、火事を起こすのがいいと思う」
「地下でか?」
「そう。そしたら見張り達役は、人質達を地上へ逃がさないと行けないでしょう?」
「確かに。でもそれはオーガー達の警戒を厳しくしないか?」
「混乱の隙に人質達を別の場所へ誘導できれば何も言うこと無し。もし一部や少なくない部分が捕まってしまったら、プヘルテ達と人質交換できないか持ちかけるだろうけど、逆上してて話が通じなかったりしたら、倒すか殺すしか無くなるけどね。ザギ、その覚悟は出来てる?」
「相手が殺すつもりできたらな」
「それでいいよ。それでね、キーブー。これが一番大事な点なんだけど」
「なんだ?銃の数なら十丁くらいで、人間の女とかに持たされてるぞ。ノームには与えられてない」
「やっぱり。どうして人間達がオーガ達と一緒にいられるのか気になったんだよ。その人間達は、プヘルテ達による支配を望んで受け入れてるんじゃないの?」
「そうだ。元々いた故郷捨ててきたと言ってた。プヘルテ達の方が、そこの領主達よりずっとマシだと」
ビブは最悪の予想が当たってしまったと頭を抱え、他の者達はいぶかしんだ。ビブは考えを整理してから仲間達に伝えた。
「たぶんプヘルテ達は、人間達からも学ぼうとしてるんだ。魔法の武器とかだけじゃなくて、人間と暮らしてみて、その社会とかからも自分達が負けた要因を取り入れて、そして人間を負かそうとしてる。違うかな」
「その通りだ。プヘルテもそう言ってた。だから人間達の首領は、中年の女だった。人間達の1/3から半分近くは女だ」
「ええと、でも、オーガ達って見境無く襲って乱暴するんじゃないの?」とエミリー。
「乱暴な奴もいるが、プヘルテが禁じてて、皆それに従ってる。オーガのメスも少なくないし、プヘルテの婿達に勝てるオーガいなかったから、逃げて加わってくる人間達珍しくない」
「何だか信じられないような話だけど、そんな人達もノームの虐殺に荷担したの?」
「人間達加わりだしたのはその後。オーガ達も何人も死んだし傷ついた。それでプヘルテも考えを変えたらしい。オーガ、強いけど増える速度遅い。数が絶対に人間より多くならない。だから人間達受け入れ始めた」
「むぅ~。いろいろまだ納得できないところもあるけど・・・」
「人間の領主達もぴんきりだからな。領民を虐待したり拷問するのが大好きな奴らもいる。決して珍しくはない話だ」
「じゃあ、そんな話を踏まえた上で、作戦を立てよう」
そうしてビブ主導で何通りかの作戦を立てたザギ達は、入念な準備をした上で、その翌日、キーブーの故郷近くの森林へと転移した。




