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第三章 コボルト三兄妹と、ファボール・ウィンゴット 

 二匹と一人が待ち合わせ場所に向かう間に、エミリーは尋ねた。

「コボルトって、犬系統の亜人つながりで?トウイッチとはどういう関係なの?」

「さぁ。たぶん、あの一家もビブ達と同じでどこからか逃げてきただけと思う。お父さんのグーゴルルとお母さんのフーメルがトウイッチの森の見回りとかしてる」

「ふぅん。その人達というかコボルト達も人間の言葉話せるの?」

「話せるよ。じゃないとトウイッチとも話せないからな」

 そう答えたザギは、昨日は持っていなかった木の槌と小さな木の盾を持っていたし、ビブも木の短剣と盾を持っていた。

「それ、木のだけど危なくないの?それなりに痛かったり怪我したりしない?」

「痛い思いしないと強くなれない。俺は本物で訓練したいけど、トウイッチやグーゴルル達に止められてる。残念」

「それより、そろそろ気を付けた方がいいよ。だいたい不意打ちしてくるから」

 ザギとビブが盾を装着し武器を構える姿に、リーは微笑ましいものを感じて笑いかけたが、ひゅっ、という音を立てて矢が飛んでくるのを見て固まってしまった。

「よっ!」

 矢はエミリーの顔の寸前でザギの木槌に叩き落された。その矢じりは木で出来ていたが、目に当たっていたらとエミリーはぞっとした。

「ちょっと、いきなり何してくれてんのよ!」

 エミリーが短剣を抜いて啖呵を切ると、矢が飛んできた方の茂みから小さなコボルトが弓に矢をつがえたまま姿を現して言った。

「人間、お前誰だ?なぜザギやビブ様と一緒いる?」

「シルル、こいつはリーってんだ。トウイッチの客人らしーぞ」

「訓練にはいつも通りぼくとザギだけが参加するから、グルルもゴルルもリーはほっといてあげてね」

「分かったよ!いくぞゴルル!」

「あいよ兄ちゃん!」

 リーが頭上の声にふり仰ぐと、二匹の子供のコボルトが木製の剣と斧をふりかぶってザギとビブに襲いかかってきた。

 ザギもビブも盾を構えて初撃を受け止め、すぐに自分達の獲物で反撃を加えたが、二匹のコボルト達は身軽に躱し、シルルの弓の射線にザギとビブを置くように二人を挟み込んだ。

「かわいい!まだ子供のコボルトってこんな愛くるしいのね!」

「うるさい黙れ人間!」

「兄ちゃん来るよ!」

「ちいっ」

 リーの目には、二匹のゴブリンと二匹のコボルトが仲良くじゃれあっているようにしか見えなかったが、ザギとグルルだけは、互いの攻撃を盾で弾きながら隙を見て反撃する姿がなかなか様になっていた。もう片方のビブとゴルルの攻防はもっと愛らしくて、ゴルルが振り回す木斧をかいくぐってビブが木の短剣の腹でゴルルの頬やお腹をぺしぺしと叩いて反撃していた。

 エミリーがそんなちゃんばら劇の邪魔にならないように少し離れると、シルルと呼ばれたコボルトが再び矢を放ってきた。リーは手のひらを矢に向けて空気の盾を掲げると、矢は目に見えない障壁に弾かれて地面に落ちた。

「それ魔法?魔法なの!?」

 シルルが弓を下して駆け寄ってきた。

「魔法って、あいつ、魔法使いなのか?」

「見習い程度らしいけど」

 グルルとビブがそうやり取りするとちゃんばら劇は止まってしまい、二匹のゴブリンと三匹の子供コボルト達にエミリーは取り囲まれてしまった。


「おい、人間。グルルと勝負しろ!」

「止めとけよ。俺だって負けたんだぜ?」

「ザギが?」

「こいつは俺の獲物だ。その背中に背負ってる<穀潰し>もな」

「<穀潰し>って何だ?」

「リー、見せてやれよ。俺もそれ持ってみたいし」

「見せろ、見せろ!」

「ゴルル達にも持たせろ!」

 子供達の圧力に抗しきれず、エミリーは背中から<穀潰し>を外し、くるんでいた布を解いて、頭部を下向きに地面に降ろしてから重さを元に戻した。

「これ、スッゲーだろ!?人間達の戦士の長が、俺達の村を支配してたオーガ達を倒した時に使ってた物だぜ!いずれザギがもらって使いこなすんだぜ!」

「無理だろ」

 グルルが<穀潰し>の柄をエミリーから奪い、地面から持ち上げようとしたがぴくりとも動かなかった。

「兄ちゃん、ゴルル、手伝う!」

「シルルも!」

 しかし子供コボルトが三匹がかりでも、地面をほんの少しずって動かすくらいが精一杯で、すぐに彼らは諦めた。

「これ、ザギにも無理だろ」

「無理。兄ちゃんの言う通り」

「け、俺とお前らじゃ鍛え方がちげーんだよ。見てろよ?」

 両手につばを吐き付けて地面の土を手のひらにまぶし、ザギは気合を入れて持ち上げようとしたが、ほんの少し浮かすくらいが精一杯で、地面を引きずる事は出来ても持ち上げられなかった。

「ビブ様、手伝わないの?」

「うーん、たぶん、持ち上げるというか、担ぎ上げるくらいなら出来ると思うんだ。その後立ってられるかは別の問題になるけど」

「ビブ、教えろ!どうやったらこのクソ重いの担げるんだ?!」

「えーと、トウイッチの本で読んだんだけど、テコの原理っての使えば何とかなるかも」

「テコの原理?」

「重い物も、支点となる支えと、長い棒があれば持ち上げられるって、そんな感じのお話」

 ビブは<穀潰し>の頭部付近の柄の下に屈んで肩を入れ、

「柄の先端を下に押してみて」

 とザギに指示した。

 ザギが押してみると、確かにあっさりとハンマーの頭部は10センチほど地面から浮いたが、そのまま上へと持ち上げる事は出来そうになかった。ビブも屈んだ状態から膝を伸ばせそうになかったので、ビブはさらに考えて言った。

「そしたらザギ、ぼくの所に来て一緒に担いで。そう、ハンマーの頭部に背中を向ける感じで。グルルとゴルルとシルルは、柄の先端を地面に向かって押して」

 <穀潰し>の重みと仕組みとをこの場で唯一把握しているエミリーとしては、誰かが押し潰されはしないか気が気ではなかったが、ザギやグルル達が一緒にはしゃいでいる姿の邪魔にはなりたくなかった。ビブがテコの原理を知っていて実際に活用しようとしている姿には顎が外れるかと思うほど驚いたが手出しはしなかった。

「それじゃ、押して!柄の先が地面についたら、ザギは足伸ばして立ち上がって!」

「分かった!それじゃみんないくぞ!」

「おぉーっ!」

 コボルトの子供達が<穀潰し>の頭部を再度浮かせると、ザギとビブは気合を入れて立ち上がった。グルル達が柄の先端を地面に押さえつけている状態で、ザギとビブが一緒に立ちあがった事で、ハンマーの頭部は確かに彼らの肩よりも高い位置へと持ち上がった。

「おお、スゲー持ち上がった!」

「ビブ様すごい!」

「兄ちゃんと俺達もすごい!」

「ざっとこんなもんよ。って俺もどうなってるか見たい!」

「あ、だめだよザギ!今振り向いたらバランスが!」

 支点の位置がずれ、柄の先端を地面に押し付ける力が弱まった事で、ハンマーの柄は無情にも跳ね上がり、あっという間にザギとビブの肩から滑り落ちて、危うくビブの足を潰しかけた。

「はいはい、お遊びはここまで。これはおもちゃじゃないんだから」

 エミリーは<穀潰し>を軽くして持ち上げると土や草を払い落とし、布にくるんで背中に背負い直そうとした。その時だった。

 森の中から一人の青年が駆けだしてきて剣を抜き、エミリーとゴブリンやコボルト達の間に立ちはだかって言った。


「おおおお嬢さん!このぼくが来たからにはもう大丈夫です!ちなみにその手にされてるのは<穀潰し>に間違いありませんねそうでしょうきっとそうですそうでなければいけませんもしそうなら売って下さい!あ、ちなみにぼくはファボール・ウィンゴット。ファボって呼んで下さいねさあおまえ等どっからでもかかってこい!」


 ザギもビブもグルルもゴルルもシルルも、そしてエミリーもあっけに取られていたが、何とか落ち着こうとして一番大きな誤解を指摘した。

「とりあえず助けてくれる必要は無いんだけど?」

「へ?そんな訳ないそんな訳ありませんだってぼくはここであなたを助けて感謝されて初の恋人と<穀潰し>をゲットしてこれからぼくのうはうは人生始まるんですから!」

「あのねぇ、一つだけ宣言しとくわ。あなた、私の好みじゃないから。あなたの恋人になるなんてあり得ないから」

 エミリーから見て、髪や肌などの身なりはそれなりに清潔で、身につけた鉄製の胸当てや籠手などは一級品でないにしろ悪くない物だったが、剣も鎧も使い込まれた形跡や傷痕は見受けられず、全体を見ればぽっちゃり体型で、頬もたるんでる見知らぬ若者からいきなり恋人になってくれと言われても願い下げなだけだった。

 しかし当人にとっては違った。ファボと名乗った青年は、見えないハンマーに頭を殴られたように上体をふらつかせ、手にした剣を地面に突き刺して倒れる事だけは防いだ。

「いやいやいや、あなたの台詞はそうじゃないですってば!まぁ、なんて凛々しい戦士様!さっさとこの小鬼と子犬達を蹴散らして私を連れて逃げて!でしょう!?そしたらぼくは言うんです。はっはっは、ぼくの剣技を見て惚れ直すがいい、・・・えーと、あなたのお名前は?」

 エミリーが眉間に皺を寄せて指先を当てて黙り込んでしまったのを見て、ザギは尋ねた。

「なぁ、人間の男ってみんなこんなうるさいのか?」

「そんなわけないでしょ。こいつが単にうざい奴なだけ」

 ファボはその胸に見えない銛でも突き立てられたかのようによろめき、両膝と両手を地面についていじけた。

「うざい?うざいってひどくないですか?それでぼくがどれだけ傷ついてきたと思ってるんですか?!」

「知らないわよそんな事、ウザ!」

「ぐはぁっ!」

 血を吐いたわけではないがそれらしき擬音を吐いて地面に全身でひれ伏したファボを前に、ほぼ全員が呆れて物も言えなくなっていたが、ザギは両手でコボルト達やビブを後ろに押しやって言った。

「来るぞ。こいつは俺が相手する!リーは魔法使うなよ!」

「生意気言わないの。ぱしりが殺されかけたら助けてあげるわよ。あなたトウイッチの実験台なんだし、勝手に死んでいいと思ってるの?」

「死ぬつもりなんてネェけどな!っと!」

 地面に五体倒地していたファボはがばりと起きあがると地面に突き刺していた剣を抜き、目前のゴブリンとコボルト達に向かって横なぎに剣を振るった。

 ザギは剣を下から盾で跳ね上げてビブ達を救うと、ファボの懐に飛び込み、木槌でファボの鼻頭を打ちつけた。

「ふゅごおおぉっ!?」

 ファボの鼻血と悲鳴が飛び散り、ザギは会心の笑みを浮かべようとしたが、殺気を感じてとっさに木槌と盾を頭上にかざした。

 ファボが怒りに任せて叩きつけた一撃で木槌は切断され、木盾は破壊された。それでも傷は負わず衝撃に耐えていたザギの体をファボは蹴り飛ばして言った。

「ひっとが下手に出てりゃーいい気になりゃーがっておお?お前ら全員俺の殺人童貞卒業の踏み台になってもらうからな~?んで、そこの女、リーは、・・・・ぐへへへへ」

「うるさい黙れこのクサれ童貞!童貞のまま死にやがれ!ほら、ぱしり一号、本気でやっちゃっていいからねこんな奴もうほんと頭来た!」

 ザギはビブ達に助け起こされると、訓練仲間に言った。

「あいつ、ちょうどいい実戦訓練相手だ。みんな耳貸せ」

 ザギはビブ、グルル、ゴルル、シルルに作戦を伝えると、腰に下げていた愛用のハンマーを取り出して両手で構え、ファボを挑発した。

「ほらかかってこいや殺人童貞!」

「どーてーどーてって連呼するなやお前等ー!」

 ファボは右肩越しに剣をふりかぶり、ザギの首筋めがけて剣を振り下ろしてきた。

 ザギはかわせもしたが、あえてハンマーを剣に向けて打ちつける方を選んだ。

 がぎいっ!と音を立てて剣とハンマーがかみ合い、ファボとザギの力比べとなる。もちろんこのままではザギは押し倒されてしまうだろうが、

「今だ!」

 ザギの背後でグルルとゴルルに守られたシルルが弓を構え、ファボの顔に向けて矢を放った。

 ファボからすれば、顔に、それも目の辺りに矢が飛んでくれば剣と手で顔を覆うのが反射的な反応だった。実戦を重ねた戦士であればたやすく剣で打ち払うだけだったろうが、そこまでの自信も経験もファボにはない。

 ファボの意識が完全に矢に向き、木の矢がファボの額にごつんとぶつかってファボが助かったとほっとするのと鉄の鏃なら死んでたかもと青くなったのと同時に、ファボの後ろに回り込んでいたビブが木剣をファボの尻穴めがけて思い切り突き刺し、その狙いは見事に貫通した。

 「~~~っ☆★※!?」

 ファボは剣を取り落とし、尻穴に突き立ったままの木剣を抜こうとしたが、前かがみになり涙目になっていたファボの頭に、ザギはハンマーの頭部を横向きにして振り下ろした。

「トドメッだっ!」

 ごつん、と鈍い音がして、ファボは顔から地面に崩れ落ち、ぴくぴくと震えていたがやがて気絶して動かなくなった。

「こいつ、死んだかな?」

「ザギがピック使わなかったし、頭から血も出てないし、大丈夫じゃない?」

 エミリーは警戒しつつ近寄り、ファボの頭を何度かつま先で小突き、鼻血以外怪我が特に無いことを確かめると、ザギ達に言った。

「とりあえず、木の蔦でもなんでもいいからふんじばっておきましょ。ザギ、よくやったわ」

「ふふ、ザギ、強い、偉いか?」

「相手があまり強くはなかったでしょうけど、偉いわ」

「まぁ、確かにな。これじゃ、勝ってもあまり自慢できない」

「さ、目を覚ます前に縛っておこ。剣は、リーに持っておいてもらお」

「なに、ザギの戦利品じゃないのか?」

「ザギはこいつを見張っておいて」

 ビブはエミリーを連れて森へ入り、手頃な蔦を切って運んでくると、ファボの両手を後ろ手に縛り、念の為足首の方もゆるく縛っておいた。

「みんなで運ぶには重いだろうから、一人でも歩けるようにね」

 というのはエミリーの助言だった。

「こいつ、どうする?」

 ザギの問いかけに、コボルト達は言った。

「エサにはしないの?」

「しない。たぶん、練習相手にちょうどいいし、殺さない」

「うん、たぶんその方がいいよ。行方不明になったファボを探しに他の人間達もやってくるかも知れないし、それはファボよりも強い連中になるだろうし」

「ビブ君は本当に賢いわね!ザギの練習相手としてしばらく置いておくのは有りだけど、その後は武器とか取り上げて森の外に放り出す感じで」

「家には連れて帰るのか?」

「あんまり連れてきたくはないけど、ここに縛ったまま置き去りにしたら、何かのエサにされちゃうかも」

「私はイヤよ、こいつと一緒の場所で寝るの」

「でも食べ物とか水とか、トイレの世話とか、誰かが見ないといけないし」

「牢屋なんて都合の良いもの無いわよね?」

「有るぞ」

「へ?どうしてそんなものが?」

「元は俺とビブが見つけて暮らしてた洞穴。俺たちのぎょーぎが良くなるまでそこに住んでた」

「トウイッチの家に引っ越してからは、トウイッチの言いつけ守らなかった時とかに閉じこめられる反省部屋になってた。トイレとかもあるよ」

「それじゃ、閉じこめる為の扉とか、鍵もかけられるのね?」

「あるよ。ぼく、取ってくる」

「んじゃ、残りのみんなでこいつ運んじまおう。反省部屋で落ち合おうぜ」

 ビブと、彼にシルルが付いていき、ザギはファボの尻穴に刺さったままの木剣の柄を蹴り込んだ。

「はうぅぅぅぅっ!」

「けけけ、これ面白いな」

「やめときなさい。この腐れ童貞が変な方向に目覚めちゃっても面倒だし」

「ぼぼぼくはノーマルなんです勘弁して下さいこれ以上はほぁぁっ!」

 木剣をぐりぐりしていたザギの頭をエミリーがぺしりと叩いて、ザギは残念そうにいたずらするのを止めた。

「これからあなたには牢屋みたいな場所に入ってもらうけど、そこで大人しくしてること。逃げ出そうとしたり変に抵抗するようなら、この場で尻にあなたの剣をぶっ刺してやるからね。返事は?」

「ふざけるな捕虜としてまっとうな扱いを要求するまず尻穴に刺さってるものをすぐに抜け・・・?!」

 どすっ、と顔のすぐ脇に剣が突き刺され、

「返事は?」

 エミリーにすごまれて、ファボは力無く言った。

「わかったその条件は受け入れようだが命だけは勘弁して下さい、というかやっぱり尻穴に刺さってる何かも抜いて下さい今すぐに是非ともなんとしてもお願いします!」

「いや、お前、このまま歩け」

「む、無理ですぅぅぅ、おおお願いしますザギさん!」

「歩かないならもっとぐりぐりするぞ?」

「ザギも悪のりしないの。本当にそっちの道行っちゃったら戻ってこれないかも知れないでしょ。抜いてあげなさい」

「ちぇー。じゃあその代わり、ファボ、お前、俺のぱしりな」

「え・・・?」

「お前、俺の実戦練習相手。俺に勝てたら、ここから逃がしてやる」

「負けたら?」

「殺しはしねーよ。お前、装備もそうだけど、訓練もちっとは受けてるだろ。俺の練習相手にちょうどいいんだよ」

「勝てたらぱしりでなくなってここから逃がしてくれるって約束するか?」

「おう、するぜ。よろしくなドーテー!」

「だからドーテーって呼ぶのやめてー!」

「ザギは私のぱしり一号だから、ぱしりのぱしりって事で、ファボ、あんたは私のぱしり二号ね。さ、わかったらさっさと立ちなさい」

「リーたん厳しいでもそこがいいかもでへへ」

「気色悪い事言う度に尻穴に木剣ぶちこんであげてもいいんだけど?」

「失礼しましたこれから全力で仕えさせて頂きますリー様!」

 ファボはエミリーの面前に立ち上がり、んっ?!と怪訝そうな顔をして尋ねた。

「ね、リー様とぼくって会った事ありませんでしたっけ?」

「誓って言うけど一度も無いわ」

「どっかで見たよーな記憶あるんですけど・・・」

 エミリーはそそくさとファボの背後に移動し、マントのフードを被って顔を隠してしまった。

「どうしたんだよリー?」

「ザギは気にしなくていいから、こいつを入れとく牢屋まで案内しなさい。ぱしり二号、変な真似したら後ろから剣で首切るからね。後ろも振り向かない事、いいわね?」

「どうしてそこまで気にするんですかそんな綺麗な顔だったら誰でもいつでもいつまでも見たいに決まってるじゃ・・わかりましたもう振り向きませんザギさん案内よろしくお願いします」

 ファボの首のすぐ脇に剣の刃がさし渡され、ザギはエミリーの余裕の無さに驚いていたが、この場では大人しく従っておいた方が良さそうだと、二人を反省部屋にまで案内していった。


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