第十八章 フーメルのお葬式と、新たな来訪者達
じゃがいもやニンジンなどの根菜、キャベツやレタスといった葉物野菜、その他にもトマト、カボチャ、唐辛子などの野菜が豊かに実った畑を見下ろすように作られた小さな盛り土の山に掘られた穴の底に、いつも愛用していた服に着せかえられたフーメルが横たえられていた。
トウイッチがフーメルの頭側の縁に立ち、
「これから、いやすでに彼女はこの世界を創り給うた創造主の御元へと旅だったのかも知れないが、残念ながら僕たちにそれを確かめる手段は無い。だからといってそうなってないとも言い切れないとこくらいにしか救いは無いかもしれないんだけど」
とかなんとか、死者を悼んでる雰囲気がまるで無い葬送の言葉を述べていたが、ザギには興味が感じられなかった。
それよりも、妻であり母親を失ったグーゴルル一家の悲しみようがザギには理解できず、なぜ彼らがあんなにも泣きわめいて悲しんでいるのか興味を感じていた。
グーゴルルは穴の底に這い降りてフーメルと寄り添いともに土を被りそうな勢いで嘆いているのを、真っ赤に目を泣きはらしているグルルが半ば支え半ば引き留め、ゴルルはずっと泣き続けているシルルを抱きしめて慰めていた。
さっぱりわかんねぇ。
それがザギの正直な気持ちだった。
同意を求めるようにビブに目線を送ったが、ビブも何か思うことがあるらしくなかなか気が付いてくれなかったものの、気が付いた途端に余計なことを言うなという目線を返されて、ザギは危うく口にしかけていた問いかけを喉奥へと仕舞い込んだ。
トウイッチ、何かいじったのか?
ザギはそう言いたかった。ゴブリンとはあまりにも違うコボルト一家の様子の理由が知りたかった。
ゴブリンは群単位で生殖する。特定の父母から産まれた特定の子供といった家族関係を成立させたりはしない。
粗暴なボスのオスがメスを独占することも多いが、それでも子供達が彼らを父親や母親として慕う事はしない。
ザギとビブが育った集落では群単位の生殖で、ザギとビブその他の子供達は群の子供として育てられた。ビブのお陰でエサの争奪戦から外れたルートを辿り育ち抜く事が出来たが、誰と誰が兄弟などという感覚をザギもビブも持ち合わせていなかったし、近隣のゴブリンの群でもそうだと彼らは聞いた。
周辺のゴブリンの群がオーガの一団に支配され、余興として殺されたり、食料として食われたりしても、ゴブリン達はそうして喪われた者達を思って、今ザギの目の前で嘆き悲しんでいるコボルト達の様に泣きわめいたり悲しんだりはしなかった。
世の中ってそういうもんだろ。
強い奴が全てを決めるんだ。
オーガはゴブリンよりも強い。ずっとずっと強い。
そのオーガ達も人間達の襲撃で全員殺されちまったし、ゴブリンも大半は殺されたけど、それで俺もビブも悲しんだりはしなかったよな~、とザギは思い出したりもした。
オーガ達よりも強い連中が現れただけ。
ゴブリンと同じくらい弱っちいコボルトがそんな事くらい分かってない筈無いのに。
泣いたら、わめいたら、死体に寄り添えば、相手が生き返る?いいや。トウイッチもそう言い切っていた。
無駄な事はしねぇ。結局、生きるか死ぬかだけなんだし、死にたくなかったら相手よりも強くなるしかないじゃん。それ以外の事は無駄。
でもまぁ、相手がグリラまでならともかく、<最大の災厄>でこの世界の<管理者>に勝つなんて普通に鍛えただけじゃ無理そうだけど。
どうしたら勝てるのか。今は分からねぇけど、考える事はビブのが得意だからな。そっちは任せとけばいいや。
ん、でも待てよ。ビブが死んだらどうなるんだ?
ビブが殺されたら、俺もあのグーゴルル達みたく泣きわめいて地面這い蹲ったりするのか?
いや、無いな。
そんな事してもビブは生き返らないし、そんな暇あったら相手倒さないと俺も殺されてるだろうし。
にしても、死んだのがコボルトなのに、どうしてエミリーやファボまで泣きっ面してるんだか。
一方のビブ。
ザギってば、考えてる事わかりやす過ぎるよ、と内心呆れていた。
トウイッチもぜんっぜん悲しがってるそぶり見せないし。ザギはどっちかっていうとトウイッチ寄りなのかな。それともゴブリンて種族がさばさばし過ぎてるだけかも知れないけど。
ビブは、ザギ達からフーメルの死体に目を向けて、昨晩から気になっている疑問を反芻した。
<管理者>でも、死者を生き返らせる事は「行えない」ってトウイッチは言ってたけど、それは本当かな?
<管理者>はこの世界の管理を創造主から託された存在。創造主そのものは全てを創造したのだから、魂をも創造し管理出来ると考えるのが自然。創造主を創造したのは誰かってのは考えれば考えるほど混乱しそうだから今は脇に置いとこう。
なんでトウイッチは、「出来ない」じゃなくて「行えない」って言ったのかな。能力が不足しているから?行えないよう創造主から制約でもかけられているのかな?そのどっちでもあるかどっちでもない可能性もあるけど、でも、トウイッチもアドミンも死者を生き返らせなくしたのは創造主なんだろうけど、どうしてそうしたんだろ?
もちろん、ビブの問いに答えがすぐに出る事は無かった。
トウイッチの長々とした全く心ない追悼の言葉がようやく終わり、エミリーが森で摘んできた色とりどりの花をフーメルの胸元に手向け、小さな声で、ゴメンナサイと謝っている声がビブの耳にも届いた。
確かに、エミリーがこの森にやってこなければフーメルは死ななかったかも知れない。でもそれを言ったらグーゴルルとフーメルの一家もこの森に逃げて来なければまだ誰も死んでいなかったかも知れないとも言える。
それは言われないでもコボルト達にも分かっていたのか、それでも同じ人間に母親の命を奪われたコボルトの子供達がエミリーを見る目は厳しく険しかった。
その内の一人、シルルが鼻をひくひくさせると、唐突に叫んだ。
「人間、人間の臭いだ!」
シルルを抱きしめていたゴルルも、父親を支えていたグルルもやはり臭いを嗅ぎつけて言った。
「人間、人間だ!」
「こないだとは違う連中みたいだけど、また人間がこの森にやってきた!俺たち、母さんの仇討つ!」
「討つ!」
「待て、お前達!」
支えを失い地面に倒れ込んだグーゴルルが子供達に呼びかけた時には、すでに三人ともフーメルの墓の脇から走り去っていた。
「トウイッチ、あの子達を止めてくれ!頼む!」
「グーゴルル、君は、ぼくとの約束を覚えているかい?」
「お、覚えているとも!しかし今は!」
「君たち家族にこの森に住まう事は許した。だけどぼくは君たちを守る義務は負わない。そういう約束だったよね?」
「そうだが、そうだけれども・・・!ザギ、ビブ君、頼む!子供達を止めてくれ!」
グーゴルルの懇願にはトウイッチが答えた。
「もう彼らは君の子供達を追って走り出してるよ。エミリーも、ファボでさえね。ぼくはここに残り、君とフーメルの遺体を保護していよう。今この時はね」
「しかし、今のこの自分よりは、どうか子供達を守ってはもらえないのか?!」
「ぼくが約定を交わしたのは君とフーメルであって、あの子供達では無かったからね」
「しかし、もしあなたの実験台達にも万が一の事があれば?!」
「最悪の場合は、やり直すしか無いよね。その為に成熟に時間が人間よりかからないゴブリンで試してるんだし。捕まえやすいしね。ま、そういう意味ではゴブリン女王候補なんてのも幸運な拾い物なんだけど」
グーゴルルは、忘れていた。
そう言えば、初めて会った時からこうだったと。保護は求めるなと言われてその条件を呑んだのは自分とフーメルであったと。創造主に置き去りにされた存在として、トウイッチの感情は既に失われて久しかったのだと。
グーゴルルは子供達が走り去った方角へ、戻って来いと何度も吠えたが、彼らからの返答は無かった。
グルル達を追っているザギは焦っていた。
「単純に走るだけなら、あいつらのが早えーんだよな」
何とかまだ背中を見えてるけど、向かっている方角からして、森の入り口にはグルル達の方が先に着いちまいそーだよな。
さてどうするかと考えてみて、朝にテューイに見せられた高速移動の事を思い出した。午前中一杯かかっても、自分の体にかかっている重みを周りに解き放つんだとか言われた感覚が掴めずに一度も成功しなかったのだが。
ダメもとでやってみっか。
ザギはそう割り切って、交互に踏み出し体を押し出している足裏に体重を集めるよう意識してみた。それだけで身体が軽くなったようにも感じたけれど、地面を蹴った足に体重を乗せたままでは当然よろめいて倒れそうになるのをうまくバランスが取れるようになるまでにしばらくかかった。
手間取るというより足間取る間にグルル達の背中が見えなくなり、逆にザギの後ろを走っていたビブ達に追いつかれてきた。
「こんな時にまで何か試してるの?」
「こんな時だから試してんだろーが!」
ビブの言葉にいらっと来たザギは、地面を蹴る足裏から重みを地面の中に残す事を意識してみた。
その途端、身体がふわりと浮き上がり、身体が何メートルも先へと跳躍し、喜ぶ間も無く正面に生えていた木の幹に激突して地面にひっくり返った。
思い切り顔面を打ちつけて悶絶していたザギにビブとエミリーが追いついて声をかけた。
「言わんこっちゃない」
「あのね、ザギ。こんな森の中で走り慣れてない速度で走ったら、今みたいな事になっちゃうでしょ。だから私も」
「うっせーー!今のでもう感覚は掴めた!黙って見てやがれ!」
そうだ。もう最初から地面を走ろうとしなければいいんだ。その筈だ!
「上手くいく保証なんてどこにも無いけど、追いつきたいなら何とかするしか無ぇーだろ!」
ザギは、幹から幹を蹴り飛ばしながら空中を高速移動したテューイの姿をイメージして、あそこまで速くではないにしろ、木の幹に自分の体重を置き去りにする姿を思い浮かべて、何メートルか先の木の幹へと跳躍した。
ザギが普通にジャンプしてもとうてい届かないだろう背丈の二倍の高さの位置に片足をついて足をたわめると、次の目標の木の幹へと思い切り自分の身体を跳躍させた。
身体はザギがイメージした通りに5メートルは先の目標の木に向かって確かに飛んだ。が、その途中から身体に戻ってきた重みに減速し、地面へと沈み込みかけた。
「くっそがーーー!」
ザギはあきらめず、とっさの思いつきでハンマーを腰から抜いて、その先のピックに戻ってきた重みを乗せて届かせようとした。
が、あと1メートルというところで届きそうになく、身体は地面へと引き寄せられた。
「まだ、だーっ!」
ザギはハンマーに重みを乗せつつ、腕を振って身体を回転させ、その勢いで足りなかった距離を埋め合わせて目標にしていた木の幹にピックを食い込ませて身体を固定した。
地面から自分を心配そうに見上げているビブとエミリーの姿を見て、ザギは怒鳴った。
「心配なんかしてんじゃねぇ、置いてくぞ!」
そうだ、勢いを殺す訳にはいかない。
重みを周囲に解き放つ感覚を忘れぬ内に、ザギは先ほどよりは近目の木の幹を次の目標にして、両足で木の幹を蹴ってかかっていた重みを置き去りにした。
今度は先ほどよりもだいぶ勢い良く次の目標に到達し、さらに次へ、さらにその次へと、目測が足りなかった時はハンマーに重みを乗せつつ身体を回転させる遠心力で補いつつ、地表を走るビブとエミリーを確かに置き去りにしていった。
「呆れた。本当に実現しちゃったね」
エミリーが走りながらザギを賞賛すると、ビブは自分がほめられたように嬉しがった。
「ザギはね。昔からそうなんだよ」
「そうなの?」
「うん。ぼくがいなかったらザギも今まで生き残ってなかったかも知れないけど、ザギがいなかったらぼくも生き残れてなかっただろうね」
「二人は、大切な家族なのね」
「人間の家族とは違うかも知れないけどね」
「ザギは、フーメルさんが死んでも悲しそうな顔してなかったけど、ビブ君はそうでも無さそうだったよね」
「ザギはね。気にしてないわけじゃないんだ。気に仕方がちょっと人間達とは違うのかも」
「どう違うの?」
「もう死んじゃった誰かを生き返らせる事は出来ないなら、死んじゃった事を悲しんでも仕方ないんじゃないかって。それだけじゃないかな」
「冷たくない?」
「もし冷たいってのが、誰かが死ぬ事を気にしてないって事なら、どうしてザギはあんなに必死にグルル達を追ってるんだろうね?」
「・・・そっか、そういう事なのね。ごめん、無神経だったね」
「ううん、気にしないで。ゴブリンが人間とかと比べてさばさばしてるってのは事実だろうし」
「失礼ついでにもう一個訊いてもいい?」
「ザギが死んだら、ぼくは悲しむと思うよ。たぶん。ザギは分からないけど」
「そうね。そうかもね。さ、そしたらザギもコボルトの子供達も守る為に早く追いつかないと!」
「ぜぇ、ぜぇ、こんなに走りながら話すとか、ファボじゃないけど弱音をはきたいとこだけど、もうすぐ森の入り口につくよ」
「本当だ、見えてきた」
前面の森の際から開けた空間がだんだんと近づいてきて、倒れているコボルトの子供達と、彼らを庇うように立っているクルトが剣を抜き、ザギと並んで、二人の商人風の男達と二人の冒険者風の男女と向き合っている姿が見えた。
「良かった。子供達倒れてるけど怪我はしてないみたい」
「うん。でもクルトのあの手足って鎧そのままだよ。トウイッチは手抜きしたのかな」
「かもね。でもあの人達は、あれ、もしかして・・・?」
近づくにつれ、その商人風の男達の容貌にどこか見覚えがあるような気がしたエミリーはとっさにフードをかぶって木の陰に隠れようとしたが、相手が自分に気がつく方が早かった。
「サラ様?サラ様ではありませんか?生きておいでだったのですか!?イングレスです!」
冒険者達と向き合うザギ達を無防備にすり抜けてエミリーに駆け寄ろうとしたイングレスの前にはビブが立ち塞がって言った。
「これは殺されたサラ王女じゃない。その身代わり、替え玉だったエミリーだ」
「どけ、ゴブリン。このぼくがあの美しい人を他の誰かと見誤る筈が無い!サラ様、ぼくを覚えておいでですよね?」
ビブはちらりと背後に隠れて顔を背けているエミリーの様子を確かめるとイングレスに言った。
「証人が必要だというならテューイを呼んでこようか?戦士団長でサラの死にも立ち会った彼の言葉なら信用するか?」
「そんな、まさか・・・。やはり本当に、亡くなわれてしまったのか!あんなに美しく賢く気高き、商人の王国を率いるべき世界に二つとない宝石のようなお方が!」
その場にくずおれたイングレスの肩に手を置いたツンブラが、自分達を見ようとしないエミリーに声をかけた。
「エミリー様、でしたか。確かに身代わりの方がいらっしゃるという話は耳にした事があります。テューイ団長ほどの方をあなたの護衛につけても、<最悪の災厄>の目は誤魔化せなかったのですね。いやだからこそその忌まわしい呼び名は数百年の長きに渡って揺らがぬものなのでしょうが。まずはご無事であられた事、嬉しく思います。エミリー様。ウェブ家のツンブラでございます。何度か、そう、エミリー様ともお話しさせて頂いた機会もあるかと」
「サラ様と見分けがついていたの?」
思わず答えてしまったエミリーに、ツンブラは若干言いにくそうに答えた。
「サラ様の在りようを上手く真似られてはいましたが、やはりご本人が、その、特別な才覚の持ち主であられましたから」
「それはサラ様への賛辞として受け取っておきます。私も同感ですし、いつも苦労してましたから」
「サラ様の事、そしてモーマニー様の事も、お悔やみ申し上げます」
「ありがとう。その場にいた私にもテューイにも何も出来る事は無かったの。残念だけど、テューイに手を引かれてその場から逃れる事くらいしか出来なかった」
「それでも!」
うつむいて膝をついていたイングレスが急に立ち上がってエミリーにつめよろうとしてビブに押し止められながら言った。
「それでもサラ様の写し身でもあるあなたがご無事で何よりです、エミリー様!今後はあなたこそが亡きモーマニー様とサラ様の遺志を継がれて商王国を再興するべきです!」
「いえ、あの、私は身の程を知ってるつもりだから、そんな大望は抱いてないの。その前に片づけないといけない大問題が待ってるし」
「どんな大きな問題でしょう?不肖一介の商人に過ぎないこのイングレスですが、身を粉にしてあなたに仕えましょう!」
「気持ちだけ受け取っておくわ。相手が相手だから」
「<暗器のグリラ>の標的にされてるんだよ。グリラに殺されなければ、今度は<最悪の災厄>に狙われるんだよ。エミリーはな」
「正確に言うなら、エミリーだけじゃなく、ザギやぼくもだけどね」
エミリーの周囲にその場にいたほぼ全員が集まってきていたが、そこに遅れて到着した若者がいた。
「はひ、はひぃぃっ。こんな、走って、どうしてみんな普通にしてられるんですか!ぜっ、ぜぇぇぇ、死ぬ、死んじゃうぅぅ、ってあれ、もしやまさかもしかしていやありえない」
「ファボじゃないか」
「おお、ファボール。帰りが遅くなっていたからな。心配して様子を確かめに来たぞ。首尾はどうだったのだ?」
「おっさん達、ファボと知り合いなのか?」
「知り合いも何も、ファボは弟だ」
「えぇぇーっ!?」
といくつもの驚きの声が上がったが、ファボはもじつきながらぼそぼそと言った。
「<穀潰し>は、本来の持ち主であるテューイさんが手にしてますし、手放されることは無いと思います。兄さん達」
「そうか。それは仕方あるまい。しかし無事でいてくれて何よりだ。父上も心配していたぞ。さぁ帰ろうではないか」
「いえ、その、まだ、ぼくは帰るわけにはいかないんです!」
「どうして?」
ファボはエミリーをちらりと見てから、慌ててザギに視線を移して本当の理由とは別の言い訳を言い繕おうとしたが、その前に、ファボ達の前に立った一人の若い女性がローブのフードを外して挨拶した。
「ファボさん、お兄さま方はとても心配されてましたよ。ご無事で何よりです。ところで」
女性はファボ、エミリー、ザギとビブへと視線を移し、ザギとビブに向かってお辞儀して問いかけた。
「今、この地にはトウイッチ様がいらっしゃる筈ですが、お取り次ぎ願えませんか?」
「てゆーか、お前誰だよ?」
「あぁ、これは失礼を。申し遅れました。私は回帰教示教のアビエト。トウイッチ様と昔お会いしたこともあり、その尊き志を同じくする者です」
「名前は分かったけどさ、回帰教って何だ?」
「この世界を去ってしまった創造主を呼び戻そうって人達の間の信仰よ」
「あー、聞いたことある。トウイッチが、他の誰よりも会いたくないって言ってたような」
「はい。避けられている事は重々承知しておりますとも。しかしかのお方の偉業に心身共に捧げようという私達の願い、是非ともお聞き届け頂きたいのです」
梃子でも動かなさそうなアビエトの表情を見て、人間てのはみんなこんなに頑固なのかとザギとビブはそっと顔を見合わせた。
2015/10/29 誤字修正や一部記載追加など




