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05|闘う。

 己が恐怖した炎を手中に収めたソレは、またダンジョンを進み続けた。

 以前に比べて肥大化した身体をゆっくりと震わせながらソレは先へと進んでいく。途中、大ネズミを何匹か見かけたが捕まえることは出来なかった。炎が届くまで近付けないのだ。

 大きい身体は大ネズミたちにはすぐに見つかってしまうし、以前に比べて鈍重になったようにソレは感じていた。


 どうすれば捕らえられるのか。隙間に入り込んだ大ネズミを追いかけても、以前のように袋小路ではなかった。穴の中に炎を放ったが、すでに逃げた後のようで隙間が焦げただけで何も手には入らない。


 また、炎を放つと自分の内にあるエネルギーがかなり減ることにもソレは気付いた。何度も撃つと腹が減る。だが消費はすれど、炎を出す者を食べて以降はソレは未だに食事にあり付けていない。このままではいずれ、エネルギー不足で飢えて死んでしまうだろう。

 そしてソレが獲物を求めてさらに奥へと進んでいくと、ソレはついにゴブリンを見つけた。

 また、ソレがゴブリンを見つけたのと同時に、ゴブリンもソレの姿を見つけていた。そしてゴブリンはソレの姿を見つけると警戒しつつも中に透けて見える自分たちに似た頭蓋骨に興味を示したようだった。

 またゴブリンもソレの同族とはダンジョンの中で何度も出くわしている。というのもソレの同族はゴブリンたちの主食のようなもので、ゴブリンたちの狩りの獲物であった。

 ゴブリンはソレの同族に対し、中心にある核を槍で突いて潰して、残った部分を取り分けて食べている。彼らの能力では他に狩れる獲物が少ないということもあり、それがゴブリンたちの主な食事となっていた。

 だがゴブリンはソレに近付く内に、核が頭蓋骨に覆われていることに気が付いた。これでは核を壊すのは難しいかも知れない。そうゴブリンが気付いたときには炎を浴びていた。

 ゴブリンは叫んだ。突然の炎だ。仲間が浴びて殺されるところを見たことはあっても喰らうのは初めてだ。そもそもゴブリンは自分が何をされたのかを理解できてはいない。だが全身を侵す何かと赤い光は分かった。明るく、痛く、苦しい。そして、ゴブリンは転げた。全身を地面や壁にすり付けて、炎から逃れようともがいた。しかしだ。その炎を浴びせた相手はそんなゴブリンの行動をただ見ているだけであろうか。


 無論、否である。


 ソレは転げるゴブリンの上にのし掛かる。悲鳴をあげる口を塞ぎ、炎を出す者と同じように口や鼻などの穴から内部へと自分の身体を入り込ませる。中身をかき混ぜればいずれ止まるのは炎を出す者で経験していた。だから今度も同じようにソレは行おうとした。

 ソレがゴブリンの中に浸透し、消化し、吸収していく。そしてゴブリンはソレに蝕まれながら、地面を転がり悶えまくる。

 全身を壁に打ち付けたりもしたがソレは離れない。そしてソレはそのゴブリンの行動に痛みを覚えつつも、素早くゴブリンを仕留めようとその内側から破壊していった。


 だがソレの狩りは、別の何かによって一旦止められてしまう。

 新たに何かが通路の奥から出てきたのだ。それはゴブリン3匹と、彼らに飼われているらしき犬が一頭だった。

 その姿をソレも認めたが、しかしソレはゴブリンを取り込み吸収している途中で動きが鈍い。どうするべきか……と、ソレが考えているうちに犬が襲いかかってきた。

 

 ソレはなおも思考していた。犬にその身体の一部を噛みつかれ、痛みを感じたが、ソレはそのまま犬の首をグルリと全身で包んで取り込んだ。3体目だ。要領は掴んでいる。すばやく頭部の中に入り込み、ソレは脳などの器官を破壊していく。

 ゴブリンたちがその様子に叫んで近付いたが、ソレは一体には炎を浴びせ牽制し、もう一体には、取り込んで動きが鈍くなった犬を掴んだまま、その犬を武器に振るってぶつけた。 

 犬がぶるぶると最後の抵抗をするがソレは口の中や鼻や目、耳からと内部に入り込んでグチャグチャとかき混ぜているのだ。結果として、犬の動きは弱まり、そして動かなくなり、肉の棍棒となった。

 その様子を見てゴブリンたちはさらに叫び声をあげたが、ソレは気にせずに炎を噴き出して、火傷のゴブリンをさらに焼いた。

 そして転げて暴れるゴブリンを助けようと、残りのゴブリン二匹が木で出来た槍を突き出した。その鋭い木製の刃先はソレの柔い体内を容易に貫く。

 そのことにソレは驚愕したが、取り込んでいたゴブリンの頭蓋骨が槍を弾いてくれた。そしてソレはもう一度炎を出してゴブリンの一体を燃やしたのだ。

 残り一匹はその光景を見て恐怖に駆られたのか逃げ出した。

 残ったのはソレと、溶かしつつあるゴブリンの死骸と、頭の中身をこねられ絶命した犬とゴブリン二体の焼死体である。それらはすべてソレの戦果であった。

 だが、また食事を邪魔されては堪まらないとソレは考えた。そして残りを別の場所で消化すべく、ソレはズルズルと戦果を引きずりながらその場から去っていったのである。


 その途中、ソレは考える。頭蓋骨がなければ、先ほど自分は核を貫かれて死んでいたのではないかと。


 それはとても恐ろしいことだ。


 しかし、今のブヨブヨなままの身体ではさきほどと同じことをされては、いずれ頭蓋骨を貫かれるか、隙間を突かれて殺されるかもしれない。そして、ソレは考える。先ほど槍を防いだのは頭蓋骨だった。

 ならば、もっと多くの骨を、硬いモノを取り込めば……そう思い、落ち着いた場所で獲物を平らげ終えると、その骨を体内に残してみた。

 だが思いの外、その工夫はソレには不評だった。重いのだ。そしてだんだんと動きが鈍くなっているのを気にしていたソレは、さらに動きが鈍るのが許せなかった。

 なので、すぐさまソレは体内の骨を元の頭蓋骨を除いて放り出していた。


 だが核を護るためには、防御を増さねばならない。何かしらの手段で護らなければならない。


 どうすれば、その悩みが解決するのか。ソレにはまだ答えが出せなかった。

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