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パニック☆スター  作者: モエLOW
パニック☆スター2
16/26

6話 シーズニングスター

 解けない魔法をかけましょう

 舞台の上では誰でも主役

 解けない魔法をかけましょう

 舞台の上で輝けるように

 台所の星 シーズニングスター


 「こ、こ、こ、こ?」


 ここ?


 白い外装のオシャレな建物に入ると、正装を身に纏ったウェータさん達がお出迎え。小春達四人に対して二十以上のウェータさんが一斉に頭を下げる。


 「ようこそ、スターズレストランへ」


 小春は面食らっていた。ここに着くまで騒ぎぱっなしの留衣るいちゃんも店内に入ると黙り込んでいた。開いた口が塞がっていない。


 「やよいちゃん? 場違いじゃない?」


 小春が聞くと、


 「堂々としてればいいッスよ」


 足がロボットのようにカクカクであった。弥ちゃんも相当緊張している様子。


 「弥ちゃんの動きが一番不自然だよ」

 「うるさいッス。弥だってこんなシャレた店に入るの初めてなんスから」


 スターズレストラン。コットンスターとブレイブリースターから今回のお礼としてここに招待されたのだ。自慢の食材達を一番美味しく調理してくれる店だそうだ。

 弥ちゃんのデーターベース上では超高級料理店で予約は一年待ちの人気店。普通の人ではまず入れない店だとか自慢気に説明していた船内が懐かしい。


 「本当にご飯の店なのか?」


 留衣ちゃんが不意にそんなことを言う。

 店内は高そうな絵や高そうな骨董品の数々。白い内壁にフカフカの絨毯が敷かれている。

 とても煌びやかな内装には気後れしかない。


 「そうらしいよ」


 留衣ちゃんは右に左にキョロキョロしてまた黙る。緊張してガチガチである。


 「ほら、三人共行くぞ?」


 隊長は煌びやかな店に全く抵抗を感じられない。頼りになる隊長はここでも健在であった。

 ウェーターさんに案内され中へと進み、席に案内される。

 座る時にはウェーターさんが椅子を引いてくれるという驚きの事実。


 「小春小春? いっぱいスプーンとかフォークあるな?」


 座る席には綺麗に並べられたナイフやフォークが沢山ある。


 「好きなのを使えってこと?」

 「留衣はこの大きいスプーンを使うかな。強そう」

 「小春はこの小さなフォークにしようかな」


 並べられたフォークを選別した。すると弥ちゃんが言う。


 「両サイドから順にナイフやフォークを使っていくんスよ。常識ッス、って留衣? 何やってんスか?」


 留衣ちゃんは両手の指の間にフォークやナイフをはめ込んで遊んでいた。


 「なんか強そう」


 留衣ちゃんの両手はかぎ爪みたいになっていて強そうではあった。


 「遊ぶなッス。弥達が恥ずかしいッス。田舎者だと思われるじゃないッスか」


 文句を言う弥ちゃんに隊長は笑う。


 「遊ぶのは良くないが弥みたいに固くなんなくても大丈夫だ」

 「弥は別に固くなっていないッス。常識を言ったまでッス」

 「普段行く料理屋をイメージしてもいいくらいだ。あくまでも楽しく美味しく食を楽しむをモットーにしているらしい。堅苦しいテーブルマナーにとらわれなくても大丈夫だ」

 「そうなんス?」

 「あぁ。多分コットンスターの長が気を利かせて選んでくれたのだろうな」

 「早く言えッス。気を張っていた弥がバカみたいじゃないッスか」


 顔を真っ赤にして怒る弥ちゃんの後ろでは笑い声がして、


 「知識しかないって恥ずかしい。知ったか乙」


 この声は。


 「時子ときねちゃん!」


 後ろの席には時子ちゃんが座っていた。


 「やっほー小春」

 「どうして時子ちゃんも、って、顔!」


 感動の再会よりも時子ちゃんの顔に目が向く。絆創膏や包帯で美人な顔が台無しだった。


 「そんなにまじまじと見ないでよ。大したことないし」

 「大したことあるし、綺麗な顔が台無しだよ」

 「綺麗な顔って(ポッ)」


 頬を赤らめる。


 「小春の目は腐っているッスからね。どう見たら野生獣を、ぷぎゃー」


 時子ちゃんの手から弥ちゃんにむかって皿が投げられたのだった。椅子ごとひっくり返る弥ちゃん。


 「嫌な奴がどうしてここにいる」


 留衣ちゃんも出てきて騒がしくなって参りました。


 「嫌な奴とは失礼。これだからガキは」

 「留衣はガキじゃない」

 「まぁまぁ二人共落ち着いてさ。折角のご飯なんだし楽しく、ねっ?」

 「嫌な奴がいなかったら留衣は楽しかった」


 プンッっとそっぽを向く留衣ちゃん。


 「それには弥も同感ッス。一人で寂しいからって、こっちにちょっかい出してくるなッス」


 弥ちゃんの言う通り時子ちゃんは大きなテーブルに一人だけだった。


 「時子ちゃん一つ席空いているからこっち来なよ」


 席も一つ空いているし丁度良い。


 「えっ? 本当? ありがとう小春」

 『小春!』


 弥ちゃんと留衣ちゃんの大ブーイングであった。


 「お言葉に甘えて。正直招待されたはいいけど一人で参ってたのよ」


 時子ちゃんは二人の睨みを無視してこっちの席に座る。


 「お邪魔しまーす」

 「本当にお邪魔ッス」

 「邪魔だ邪魔だ」

 「多いほうが楽しいし、いいじゃん」


 小春は二人を宥めるが、どんどん機嫌が悪くなっていく。困ったもんです。


 「時子も招待されたのか?」


 隊長が時子ちゃんに訊ねた。


 「はい、ブレイブリースターからの招待でした。あっ、そうです。お礼がまだでしたので、ここで言わせてもらいます。今回は無理言って同行させてもらい感謝します。本当にありがとうございました」


 深々とお辞儀をする時子ちゃん。


 「礼を言うのはこっちの方だな。本当に助かった。そして、すまなかった。スピンスターの大事な側近侍者に大怪我させてしまったようだ。長にも謝っておいてくれ」

 「いえいえ、うちのバカ、いえ、長はカッカッカッカッと笑ってましたし、オレも行けば良かったと悔やんでました。草葉緋香里そうはひかりさんと是非とも手合わせしたいと」

 「勘弁してくれ。もう強星連中との相対はこりごりだよ」


 苦笑いの隊長に時子ちゃんは言う。


 「破邪心はじゃこころとは手を合わせたんですよね? どっちが優勢でしたか?」

 「お互い探り合いで終わったよ。優勢を付ける戦いをしていたなら私はここにはいなかったかもな」


 冗談混じりに返す隊長にそれ以上の言及はしなかった。

 小春は勿論隊長が優勢だったと思う。隊長の発言が冗談だと信じている。身内引いきだと言われても隊長が負ける姿は想像出来ない。しかし、その隊長に手傷の重症を負わせた相手の実力も、小春の頭では理解出来ないんだろうなっと。

 弥ちゃんが言った、人間の理解出来る範疇を超えていると。

 隊長に手傷を負わせた相手をこの目で見てみたいとも思った。どんな人なんだろうと、興味が湧いてくる。

 想像は家など簡単に丸呑みするぐらいの大きさで、尖った爪に、歯は牙だらけ。炎や雷を吐き、腕一本で星を破壊する力。

 怪獣だな。

 一人妄想にペシッっとツッコミを入れていると、妙な騒がしさが正面の入口から押し寄せてきた。

 妙な騒がしさの正体は、


 「奇遇ね、リンクスターの一番隊さん。やっぱり決着をつけろと言っているのかしらね」


 スティールスター御一行様の登場であった。


 「げっ」

 「げっ」

 「げっ」


 隊長と弥ちゃんに時子ちゃんが仲良く同じリアクションを取った。

 先頭に、白いワンピースとマントを羽織った目力が怖い、というか恐ろしいオーラを纏った人。後ろに恋ちゃん、音々ちゃん、舵機ちゃんに、後は名前が分からなかった。チャイナドレスを着ている人、魔女の姿をした人、留衣ちゃんぐらいの小さい女の子、その後ろに子分のように付いてくる二人。


 「あっ、お前は! 僕を侮辱した奴だ」


 恋ちゃんが小春に指さしました。


 「誰も恋ちゃんを侮辱してないってば」


 相当恨まれている模様。


 「恋ちゃん言った! ぶっ潰してやる」

 「何? また私に潰されたい?」


 時子ちゃんが恋ちゃんを睨む。


 「お前もいたのか? お前のせいで顔が痛くてまともに飯が食えなかったんだよ。絶対に許さないからな。お前ら二人、表に出ろ!」


 時子ちゃんと同じに顔に絆創膏や包帯が貼ってある。見ているだけで痛々しい。


 「許さないって自業自得でしょうが。ていうか、私に負けたんだから潔く引きなさいよ。敗者がみっともない」

 「むきゃぁぁぁぁぁぁぁ」


 恋ちゃんの顔が怒りで爆発した。それを無視して目力が怖い人が小春の側に寄ってきて言う。


 「あなたが今回の事態を収めたんだってね。音々や舵機が言っていたわ。名前は小春でいいのかしら?」

 「えーと、誰?」


 小春が近寄ってきた人に首を傾げると、答えは後ろから返ってきた。


 「ボスに無礼だぞ」


 恋ちゃんが叫んだ。


 「私はスティールスターの長、破邪心よ。あなたの隊長に殺されかけた人物って言えば分かるかしら?」

 「おい、デマはよせ。殺されかけたのは私なんだが」


 この人が隊長と戦った人? 想像と遥かに違くて驚いた。


 「怪獣でなかったんだ」

 「お前大人しく聞いていればーーボスになんたる発言だ。ボスまで侮辱するとは許さねー」

 「いいから敗者は引っ込んでろ」


 時子ちゃんのキツイ一言。


 「僕は敗者じゃない。まぐれ負けだ」


 怒る恋ちゃんに音々ちゃんは言う。


 「・・・・・・・・・・・・敗者が見苦しい」

 「音々まで」

 「恋は敗者さね。恋と一緒にいると私にまで敗者菌が移る。離れろさ」

 「祐巳まで」

 「潔さが肝心ネ。敗者は勝者の靴でも舐めているネ」

 「風華まで酷くない? 僕の扱い酷くない? 舵機は僕の味方ーー」

 「ドンマイ恋さん」

 「そうだ。僕には悪流がいたよ。あくる~」


 恋ちゃんが助け舟を出すが、そこには誰もいなかった。恋ちゃんが誰かを探していると、お目当ての人を見つけたのか視線が止まった。止まったところは、留衣ちゃんが座る席。留衣ちゃんの近くには、留衣ちゃんぐらいの小さな女の子がいる。

 この子が悪流ちゃん? 

 その悪流ちゃんは留衣ちゃんの顔に接近して悪そうな顔で睨み付けていた。


 「こう見るとただのガキんちょなのにな。あの時の感覚は間違いか? あぁん?」

 「お前の方がガキんちょだ。あぁん?」


 負けじと留衣ちゃんも対抗する。


 「留衣ちゃん? そんな汚い言葉を使ってはダメだって」

 「最初に使ったのはこいつだ」

 「あたいをこいつ呼ばわりか? あたいの名前は悪流だ。覚えとけ」

 「留衣もお前じゃない。桃井留衣だ。覚えとけ」

 「留衣ちゃんと悪流ちゃん喧嘩しない」


 二人の近い睨み合いを離すと、


 「おい、悪流に気安く話掛けんじゃねーよ。悪流と話したければ僕を通してからにしろ。そして、馴れ馴れしくちゃん付けも止めろよ」


 またしても恋ちゃんのいちゃもんである。


 「あたいは別にちゃん付けでもいいけどな」


 いいらしい。


 「まぁ、悪流がいいならいいけど」


 いいのかよ。って思わず言いそうだった。

 小春は恋ちゃんに言う。


 「もしかして、恋ちゃんって悪流ちゃんのお姉さん的立場? 恋ちゃんの立ち振る舞いを見ているとお姉さんに見えるよ」

 「ん? 分かる? そうなんだよ、悪流の姉的ポジションが僕なんーー」

 「ちげーよ。こんなバカがあたいの姉なワケないだろうが。良くて下部だ」

 「うわぁーん」


 悪流ちゃんの冷たい弁に床を転げ回る恋ちゃん。不憫な立ち位置だなぁと、敵ながら哀れみの心が滲み出てくる。


 「まったく騒がしいわね」


 心さんが言うと再び小春に話かける。


 「あなたのどこに不思議な力があるのかしらね。音々の話だと、歯車を止めた力は不思議な音がしたと言っていたわ」


 小春の両頬を心さんの片手で掴まれる。


 「ヒューヒュー」


 口笛を吹いて誤魔化そうとしたが、口笛は風を切った頼りない音しか出なかった。


 「あなたからは人が持つ独特の雰囲気が全く見えてこないのよ。なんでかしらね。因みに、悪流と喋っているあの子は草葉緋香里と同じ空気が漂っているわ。もしかしたら、あの子はこっち側の人間じゃない?」


 心臓の鼓動が大きくなる。急所を的確に狙ってくる刃、ドキドキが止まらない。


 「ヒュー、気のせい、ヒュー、です」

 「あら? これは?」


 心さんの質問についに心臓が止まる。小春の顔からはポロポロと何かが湧き出し落ち始めたのだ。緊張の果てに冷汗っぽいのが流れ始めたのだ。しかし、それはぽいだけで冷や汗ではない。

 星の力が漏れた産物。

 白い粉のような物が汗の要領で吹き出ていた。


 「あ・・・・・・、こ・・・・・・、これは」

 「この星の力かしら?」

 「うーんと、そうですかね? 小春の汗だと・・・・・・。」


 心さんは小春の頬を掴んでいた手を離し、小春から流れる白い粉を指に乗せて口に運ぶ。


 「あなたの汗は調味料の味がするの? 不思議ね」


 横目で隊長にヘルプ要請。それに応えて、隊長は言う。


 「それで、破邪は何用でここに来た?」

 「何用って、食事以外の用があって? あなたが望むならスピンスターの続きをしてもいいのよ?」

 「それはすまなかった。それと、あまりうちの新人で遊ぶな」

 「そういうことにしとくわ。あなた達の触れられたくない事情を聞く方が野暮ってもんよね?」

 「あぁ、そうしてもらえると助かる」

 「最後にいいかしら?」


 心さんの口元が小春の耳元に触れる。


 「借りはキチンと返すから安心しなさい」


 ボソッと囁き去って行く。

 それからリンクスターとスティールスターとスピードスターの皆さんが同じ空間にいるというとても奇妙な時間が過ぎていった。

 隊長と心さんの酒の飲み比べを筆頭に、時子ちゃんの酔いに任せた一人暴走。弥ちゃんと舵機ちゃんの雑談。風香ちゃんの哀れもない姿で眠る姿。祐巳ちゃんの危険な実験に、音々ちゃんの行方不明。そして、小春と恋ちゃんと留衣ちゃんと悪流ちゃんの食べ比べ対決。

 勝負の末は見事に出禁になりました。

 

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