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7:太陽と、銀髪少女との日常。


その次の日、薫は正式に俺たちのクラスの一員となり、その容姿から一躍人気を得た。

のだが。

「・・・薫。そろそろ離れてくれないか?」

「いや」

と、このように俺にかなりなついてしまっているのが現状だ。


時刻は2時限目が始まっているあたり。しかし現在、俺たちは屋上にいる。

理由は簡単。

数学の授業をさぼった。

どの教科も平均点くらいの俺の唯一の得意教科、それが数学でこの分野のみ俺は異常に出来る。どんなに難しいテストでも90点以上はかたい。そのため、この教科のみさぼりは黙認されているのだ。

だから俺はいつものようにさぼろうと屋上へ向かおうとした。

そこで外部粒子が一つ。

「何でお前がいる?授業はどうしたんだ?」

「私・・・いつも太陽と一緒」

「いやいや、答えになってないから」

屋上のドアを開けてみたら薫がいたのだ。そして俺が来るなり駆け寄ってきて左腕に抱き着いている(現在進行形)。

「それで?授業は?」

「さぼった」

「・・・いいのか?」

「私、水無月家」

権力ですね、わかります。


結局2人で1時間過ごすことになった。本当は寝るつもりだったのだがせっかくだからということで薫にいろいろ聞いてみた。

「そういや何でこの高校に来たんだ?」

「分かんない」

「は?」

「(クスッ)嘘。お父様が・・・行けって」

おい。嘘かよ。だが笑顔が可愛いのでまあ許す。

詳しく聞いてみるとどうやらここの理事長が薫の父親と知り合いらしい。何故3年のこの時期かというとノリだそうだ。・・・水無月のトップよ、それでいいのか。

それにしても、

「いきなり転校なんて嫌だっただろ?」

聞くところによると彼女はそれまで白樺しらかば学園というお嬢様高校に通っていたらしい。だから転校することになって友達とかと離れて寂しくないのか?そういった意味を込めて言ったのだが、薫はきょとんとして(表情は微々たる変化だが)再びぎゅっと俺の腕に抱き着いてきて

「太陽に会えた」


最近彼女と会話がかみ合わない。


それからも、のほほんとした平和的な会話を続けていると、ふいに眠気が襲ってきた。

目をこすっている俺が眠気とたたかっていることに気付いたのか、

「眠いの?」

「・・・ああ」

「いいよ」

どうやら寝てもいいらしい。だんだん彼女の意図が読めてきた気がする。

「じゃあ、チャイムが鳴ったら起こしてくれ」

そう言って俺はコンクリートの地面に横になり、いざなわれるように眠気に身を預けた。

「おやすみ、太陽」

最後に見たのは隣で座りながらかすかに笑う薫の姿だった。



ぱちっと目が覚める。そのままぼうっと辺りを見渡していたら、

「夕焼け?」


・・・腕時計にて時刻を確認。5時30分。

昼飯も食べずにずっと寝ていたのか。

しかも、とっくに下校時間を過ぎていた。

勘違いしないでほしいがいつもこんなに寝てさぼっているわけじゃない。いつも1人の時は携帯のアラームにて3時間目開始前に起きるのだ。しかし今日は彼女がいたわけなのだが、

「薫、起こしてくれなかったのかよ・・・」

この元凶を作った彼女を恨めしく思っているとふいに俺の胸のあたりで何かが動く気配がした。

「ううん」

視線を俺の体に向けてみると悩ましげな声とともに俺の体をベッド替わりに眠っている彼女、薫がいた。

彼女は胸に頬を摺り寄せ、ぎゅっと俺の服をつかんで幸せそうな顔で寝ている。

それを見ていると、

「起こすのは忍びないか」

と思えてしまい。俺はしばらく手元にあった薫の綺麗な銀髪を触り始めた。さらさらとしたその髪をいていると彼女も何だか笑った気がした。





「なんか、すごく絵になってない?」

かなり不満そうに口を尖らせた月夜はそうこぼした。

校舎内へと続く屋上の扉。それは少し開いていて、3つの目が覗いていた。

「うん。流石太陽だな。一挙一動がかっこいい」

そう言うのは、腰に刀をこしらえた花恋。心なしか頬が赤い。

「くくくっ。2人の男女の逢引きとそれに嫉妬する少女。こんなドラマみたいな展開を引き起こすなんて・・・。だからあいつを見ているのは飽きないんだよなあ」

そう言う蓮はかなりこの状況を楽しんでいるようである。

「帰ってこないと思ったらこんなとこにいるなんて・・・というか蓮君、何で太陽は立ち入り禁止のはずの屋上にいるの!?」

月夜は太陽の数学のときのさぼり癖は知っていた。しかしどこでさぼっているかは分からなかった。それでもいつも終わったら帰ってきていたのでどうでもよかったのだが。

今日は違った。いつまでたっても太陽が帰ってこないのだ。それだけならまあ寝てさぼっているうちに寝過ごしたと解釈もできる。


だが薫の姿もいつのまにか見当たらなくなっていた。

その2つの事実から月夜はあられもない想像が浮かんでは消え浮かんでは消えしていて気が気じゃなかったのだ。

昼休みになってもそれは続いて月夜は我慢できず太陽を探しに校舎を回ったが何せこの学園は広い。しかも探している途中、友人たちが話しかけてきてそれも応対しなければならなくて。

結局昼休みは終わり、放課後になってやっと太陽を見つけたと思ったら屋上にいた。立ち入り禁止のはずだから当然月夜は探すルートにも入れなかったのだ。


「どうやらあいつ、学園長から鍵を渡されてるらしいぜ」

「何で!?」

「さあな。っていうか静川、知らなかったのか?」

「うん。うううっ、まさか幼馴染の私に隠し事があったなんて・・・」

そう言って月夜は涙目で太陽をにらむ。そんな動作にも可愛げがあるのだから流石といったところだろうか。



結局、この状態は薫が起きるまで続いたのだった。



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