4:太陽と、生徒会長。
私立奏零学園。全校生徒3000人あまりで、一学年1000人くらいのマンモス級の高校である。校風は前にも言ったが自由で生徒重視。また、校舎も広く部活動もかなりの数あり、盛んだ。それらのためにここを目標にする奴も多い。一応進学校なので入試は難しかったが入ってから今までの3年間、少なくとも後悔はしていない。周りの奴らのせいで頭痛は覚えるが。
学園に着き、校門をくぐると、少しばかり注目を浴びる。主に花恋と月夜。まあ、容姿端麗、運動神経抜群、学業優秀な二人なので当然だが。そして怨念のようなオーラが俺と鹿彦に降りかかる。羨ましいとでも思われているのだろう。
「なあ・・・太陽。なんかいつも以上に殺気立ってねえか?」
怯えながら鹿彦が言ってきた。確かに殺気の数がいつもより多いような気がする。何故?と思考しようとしたとき、ふと肩の異変に気づく。肩が重いのだ。そう、誰かが俺に負ぶさっているように。
「なあ・・・太陽。なんかお前の肩に生徒会長っぽい人が抱きついてるんだが・・・気のせいか?」
鹿彦の目は俺の肩へ向けられていた。せっかく無視しようと努めていたのに・・・。
「たーくん!おっはよ~~♪」
「・・・ああ、おはよう。奈波。」
幼さの残る声と共に俺に声をかけてきたのは七条奈波。この学園の生徒会長だ。145センチくらいの低身長とは裏腹に胸が大きく、俗に言うロリ巨乳というやつだ。その笑顔は見るものを癒し、その泣き顔は人に罪悪感をもたらす。人付き合いはとてもよいため、誰とでも話せる。そして彼女も成績優秀、容姿端麗で、ファンクラブなんてものもある。生徒会長となったのはそれらの所為もあるだろう。
なぜか俺になついているが。
そして今の状態、かなり危うい。恐らく俺の知り合いの中で一番大きいであろう胸が俺の背中に当たっているのだ。
「奈波ちゃん!!!太陽が嫌がってるでしょ!!離れてよ!!」
月夜が奈波を引き剥がそうとする。
「やだよ~。たーくんの背中あったかいんだもん。・・・・ふみゅう・・。」
「寝るな、奈波。」
「・・・ん?・・・わわっ。あたたかすぎて思わず寝るところだったよ~。」
「もう寝てただろうに・・・。」
「ふみゅう・・・。」
「・・・」
こんな些細でくだらないやりとりを数回繰り返した後、やっと奈波は降りてくれた。
「そういえば奈波ちゃん。転校生について何か知ってるでしょ。」
ふと月夜が尋ねた。まあ、確かに生徒会長ならば何か知っててもおかしくはない。
「ふふっ、知ってるよ~。でもたーくんのほうが知ってたりして~。」
「はあ?奈波、俺は知らんぞ。」
なんせ転校生だなんて今日馬鹿に聞いて初めて知ったからな。
「それはどうかな~。」
「?」
「ふふっ、見れば分かるさぁ。じゃあねぇ~」
そう言って奈波は話をうやむやにしたまま走り去っていった。
にしても俺と関係ある高校生ねぇ・・・。正直言って誰も思い浮かばない。俺は子どもの頃からずっとここに住んでるわけだから・・・友人たちは皆奏零学園に入っているわけだから・・・。
「太陽、どうしたのだ?悩み事か?」
歩きながら考えているのを不審に思ったのか、花恋が聞いてきた。
「ああ、いや、さっきの転校生のことでな。奈波の情報は的中率高いからな。」
そう、奈波はどんな裏情報でも知っている。生徒、教師一人ひとりの弱み、性癖などのプロフィールや裏社会の情報などどんなことでも知っている。情報源は教えてくれないが。
「ふむ。まあ考えても仕方がないだろう。いずれ分かるさ。」
確かに。いずれ転校生の来るクラスをちらっと覗けば否が応でも分かるだろう。
「そうだな。」
そうして転校生についてはさっぱり忘れることにした。そう、深く考えずに行こう。
今思えばその判断が間違っていたのかもしれない。転校生は俺に甚大なる被害を与えることになるとは知るよしもなかった。
てか俺の人生って・・・後悔ばっかりじゃん。