1:太陽と、朝。
考査があったんで遅くなりました・・・
朝。俺、陽気太陽はいつものように規則正しい目覚ましの音に目を覚ます。早速期待を裏切るようでなんだが、俺は決して”太陽”のような明朗快活元気一杯少年というわけではない。常に冷静沈着、何事にも動じないむしろ月のような人間だ。つまり、親の期待を見事に裏切ってしまったということになる。この名前はやはりあいつのほうが似合うだろう。
そんなことを考えながら上体を起こし、目をこすりながら時間を確認。よし、いつも通りだ。
さっさとリビングへ向かおうと布団から出ようとする。
体が動かない。
・・・・・・・・・・・
よーしここは冷静に状況分析だ。
俺、起床。時刻確認。不動の体。
????
・・・・・・・・・・
金縛り!?・・・違うな。俺は何も恨まれるようなことは・・・してないと思う。
はっ!足がつった!?・・・にしては痛くない。
腕を組んで詮索中。
詮索終了。結果・・・不明。
そんな時、
「うぅん・・・」
妙な声がした。俺の声とは相反するソプラノボイス。
ふと自分の体を見るとなぜか腹のあたりが膨らんでいる。先に言っておくが俺はデブじゃない。普通の体系だ。
・どこからともなくソプラノボイス。
・膨らむ俺の腹。
この二つの事実から、最悪の可能性が脳裏をよぎる。いや、そんなわけないよな、うん。
ぴらっと布団をめくる。
寝巻き代わりにジャージを着た俺の体が目に映る。ま、当然だが。
そこには俺に抱きつく不審者Aがいた。
・・・・・・・・・・
ドン!
「きゃんっ!」
俺は無言で不審者Aを引っぺがし床へ落っことしといた。まあ、その際聞こえた悲鳴は右から上へ受け流し、再び夢の中へ・・・「えぃ!!」 「ぐふっ!」
いきなり腹に鈍痛が走った。
「おはよう、太陽♪」
痛みにうっすら目を開けると、そこには俺の腹に倒れている笑顔の幼馴染、静川月夜の姿があった。
静川月夜。各学校に一人はいそうな超人である。成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。様々な賞賛の言葉が彼女には送られるだろう。しかも、そのもの静かそうな名前とは裏腹にとても人懐っこい。そのため、誰とでも話せ、友人も多く、人望も厚い。しかも彼氏がいないとだけあってさらに人気がある(主に男子から)。
「で、なぜお前がここにいる?」
俺は痛みによって覚醒した目を向けて尋ねた。
月夜は一瞬キョトンとしたが、言葉の意味を理解したのか、
「それは私たちが幼馴染だからだよ!!」
と満面の笑顔でおっしゃった。
・・・・・・・・・・・・
確かに俺と月夜は幼馴染だ。幼稚園時代から現在の高校生活にいたるまでの腐れ縁である。
だが、
「なぜお前は俺の家にいる?」
こいつの家は向かいに建っているはず。いつもなら朝の支度を整えた後、俺の門の前で合流し、一緒に学校へ行くはずだ。・・・そこ、羨ましいとか言わない。
なのにこいつは俺の布団の中に入っていた。俺が疑問に思うのも当然だろう。
答えを促す俺に対して月夜は
「それはね・・・」
「それは?」
なにやら含みを持った言い方に少し戸惑いつつも、先を促す。
「今日から同棲することになったのです!!!」
・・・・・・・・・は?