ソフィア目線 3
王宮へと到着するとライリー様とわたしは、先に入場する事になった。
身分の低い者から入場する決まりがあり、ライリー様は子爵家との事。お義父様たちは侯爵家、入場はもう少し後になる。
そのため一旦控え室に行かれるようだ。
会場までの間、ライリー様のご家族の話を聞いた。
お母様は領地で一人住んでいて、お父様は二年前、領地で起きた災害に巻き込まれて命を失ったと・・
(領民のために命を落とした父を、母も私も今でも尊敬しています。)
会場に入り、知り合いもいないわたしを気遣って奥のテーブルへと移動する。
「ソフィア様、始まるまでに少し時間があるので軽くお腹に入れませんか?」
ライリー卿に言われてお料理が並べられているテーブルへと向かう。が、何か視線が痛い。振り返ると色々な令嬢達がこちらを見ながらヒソヒソと話している。
「きっとソフィア様がお綺麗だから見ているんですね。堂々となさると良いですよ。」
「わたしの事ですか?」
「他に誰がおられますか?私の隣にはソフィア様しかおられませんが?」
ライリー様はわたしの目を見ながら言った。
独身だったらどれ程嬉しいか・・だけど今は侯爵家へ嫁いだ身。旦那様のためにも変な噂は立てたく無い!
わたしは少し距離を置こうと離れるが、ライリー様はわたしの手を取りソファーまでエスコートする。
「ここでお待ちくださいね。」
と言い残し料理のテーブルへと戻って行った。
わたしは一人、ライリー様が戻って来るまで人間観察をしていた。お義母様が選んでくれたドレスは流石!と言うべきデザインで、今いる女性の中で一番洗練されていた。
(わたし、ドレスに着られてるよね・・ライリー様は何も言わないけれど、隣に立って恥ずかしく無いかしら?)
会ってから今まで、一緒にいる時間は短いけれどライリー様はとても優しい。もちろん侯爵であるお義父様に頼まれた!と言う事もあるが、もともとの性格もあると思う。
(ライリー様が旦那様だったら・・)
寂し過ぎて変なことを考えてしまう!
でも・・
(旦那様とは結婚して一年近くになるけれど、時間にしたらライリー様の方が長くいるのよね・・)
夫婦と言えるのかしら・・と、何だか泣きそうになった。そんな気持ちを振り払うように頭をブンブンと振っていると、
「お嬢さん、どうかされましたか?気分でも悪くなりましたか?」
始め、誰に声を掛けているんだろう?とムシしていたら、わたしの肩に手が置かれた。
わたしは驚き手を置いた人の顔を見れば・・
(えっっ!?旦那、さま・・?)
声を掛けて来たのは旦那様だった。
旦那様はわたしに気付いていないのか?優しい口調で更に、
「パートナーはどちらに?ああ、顔色がよろしく無いですね。休憩室も用意して有りますから良かったらお連れ致しますよ?」
(ああ、旦那様はこんな声色でお話されるのね・・)
と、泣きそうになった。
「フィア嬢?どうされたんですか!?」
料理と飲み物を持ったライリー様が戻って来た。わたしは旦那様の顔を見ることが出来ずに下を向いていた。
「アインス、私のパートナーに何か用かい?」
「ああ、ライリーの連れだったのか!顔色が悪く体調が悪そうだったから声をかけさせて貰った。」
「そうだったのか!それはすまない!」
旦那様とライリー様は従兄弟同士とあって、気楽に話している。
ライリー様は近くにいたメイドに声を掛けるとメイドは(お待ちくださいませ。)と、部屋の様子を見に行った。
ライリー様は手に持ったお皿を旦那様に渡すと、
「わたしは彼女を部屋までお連れするから、君これ食べて良いよ。」
と言って、わたしの手を取り立たせてくれた。
「美しい人、お大事に」
一瞬何を言われたかわからず立ち尽くすも、何とか気力を振り絞り頭を下げた。
部屋までの間わたしは悲しくなり、ずっと下を向いて歩いていると・・
「あのバカ!自分の妻もわからないのか!」
と、独り言を呟いた。
「仕方がないのです、ライリー様。それ程に旦那様とわたしは顔を合わせておりませんので・・」
悲しくて、辛くて・・部屋まで辿り着く前にわたしの顔は涙でぐちゃぐちゃになった・・