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残念ですが、あなたが愛したのは妻であるわたしです。  作者: おつかれナス


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ソフィア 12

「母上?」


 侯爵夫人の一喝に、アインス様だけでなく親族全員も黙ってしまう。

 それほどの威力だった。


「これはもう決定事項だ、アインス。それに婚約誓約書にも記されていたはずだがお前。きちんと読んでいなかったのか?」


 そう言われたアインス様は隣にいるパニラ様を見るが、パニラ様はただ黙って真っ直ぐ前を見るだけだった。


「それからライリー、連れておいで。」


 声が掛かったと同時に、ライリー様はわたしの方へ歩き出す。自然とわたしの目の前が開かれライリー様は真っ直ぐ向かってくる。

 その奥で何故かアインス様が驚いた顔をしており、その隣にいるパニラ様は嬉しそうに微笑まれていた。

 わたしの所に来たライリー様は手の甲に軽く唇を付けると、


「フィア、行こう。」


 と、誘導する。

 わたしは人の視線を浴びながら、震える身体に叱責し侯爵と侯爵夫人の前まで行く。

 ライリー様と二人で最上の礼をとると、前を向かされる。


「ここにいるライリーと、アインスの元妻であるソフィア・バーロイ嬢が婚約した事を伝える。なお結婚式はアインスとパニラ嬢の後とする。」


 突然の発表に両足の震えが止まらない。

 それでも侯爵夫人に教えられた、侯爵夫人としての姿を思い出し親族達に向かって淑女の礼をした。




 先程からアインス様の視線が痛い。

 親族と会話をしている時も、ライリー様と踊っている時もずっと視線を感じる。

 気のせいかも知れないけれど、アインス様を見るのが怖くて振り向けない。

 パニラ様が居なければ、直ぐにでもわたしに声を掛けて来たでしょう。

 踊り終わると会場内に置かれたソファーへと腰掛ける。ライリー様は飲み物を取りに行かれ、


「私が戻るまでここから動いてはダメだよ!」


 と額に軽くキスをして離れた。

 ライリー様が離れると親族の女性達に囲まれる。が、皆んな好意的で安心した。


「ライリー様がずっと一人だから心配していたの。」

「そうそう、アインス様と張り合える容姿と優しい性格なのに特定の方どころか、お見合いも全て断られていたから・・」

「一時、変な噂が流れましたわよね?実は男色家なんじゃないか?って!」


 女性たちが一斉に笑い出す。


「でも、貴女様を一途に思われていたのね。あの時からずっと・・納得だわ。」


 一人の女性にそう言われ、首を傾げた。


(あの時から?)


 わたしは詳しく聞こうと思ったけれど、誰かに呼ばれたのか戻って行ってしまった。

 そして一人になり、ライ遅いわねー、と思っていたら急に腕を引かれた。

 驚いて見るとアインス様が怒りの形相で見ている。わたしは怖くなり腕を解こうとするが、男の力では勝てず引きずられる様に連れて行かれた。


「どこに行かれるのです!手を離して!お願い!アインス様!」


 会場から屋敷へと続く外廊下で立ち止まると、ゆっくりと向きを変え、


「もう、旦那様と呼んでくれないんだな。」

「? わたくしとは縁が切れましたので。ですがこれからはライリー様の妻として、パニラ様の友人として、アインス様とお付き合いさせて頂きますわ。」


 何故か悲しい目でわたしを見てくる。

 

「図々しい事を言っている自覚はあるんだ。君にあれだけの事を言っておいて、ちゃんと君と向き合って来なかったくせに今更!と言われても仕方ない事だと・・それでも俺は!」

「残念ですが旦那様・・」


 一瞬、情に流されそうになった・・

 情と呼べるものではないと知りつつも、初めて見るアインス様の表情がライと重なってしまいほだされそうになった。

 でも違う。

 この方は二年間、一度もわたしを見ようともしなかった方だ。

 わたしはアインス様に掴まれた腕を、思い切り跳ね除け真っ直ぐに目を見つめながら言った。



「残念ですがアインス様。貴方が好きになった女性はわたしですが、もう手遅れです。」


 


次がラストです。

最後までお付き合いください。

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