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4-4

 一行は寺院を出て山を降りた。

 麓で休んでいたレオネ、フリックと合流し、シャットンの村へ帰る。


 村でフリックの傷に応急手当をし、村長にことのしだいを伝える。

 ごく簡単に、怪物は討ち倒したと。


 村人たちは大喜びし、祝の宴を開くという。

 ダクツたちも参加を希望されたが、砦へ戻ることを優先した。


 フリックの傷は軽いやけどだという。

 産獣師は外科的な医術にも長けていた。

 ゲデ・スオーンが診ればすぐ治るだろう。


 レオネは帰りの道中ずっと、宴に参加できなかったことをぼやいていたが、

 月が高く昇るころには諦めて口数も少なくなった。


 砦には夜半についた。

 あたりは静かで、虫の鳴き声くらいしかしない。平穏だった。


 厩に馬を収めるとダクツは言った。

「ゲデ・スオーンには俺から報告しておく。今日はもう会議を開かない。明日の早朝だ。みんなご苦労だった。休んでくれ。フリックは俺の肩につかまれ。ゲデ・スオーンに診てもらおう」


 ヘズル・デンスは巨体で伸びをして、リシュワを見下ろした。

「メシを食おう。上物を一杯奢ってやる」


 リシュワも乗馬でこわばった節々を伸ばす。

「奢るって、ここのメシはタダだろう?」

「特別に上物が欲しいときは払わなけりゃならない」

「そうなのか。それじゃ一杯だけもらおうか。酒は得意じゃないんでね」

 ヘズル・デンスはそれ以上なにも言わなかったが、かすかな含み笑いが聞こえたような気がした。


 ヘズル・デンスのリシュワに対する態度は大きく軟化していた。

 やはり戦士たるもの、同じ場所で命の駆け引きを経験すると変わるものかもしれない。


 主棟の広間では食事のピークは過ぎていた。

 楽器を弾く者のまわりに何人かが集まって、おとなしめに楽しんでいた。

 リシュワ、レオネ、ヘズル・デンスは同じテーブルについて、残り物を食べた。

 約束どおり特別支払いの酒を奢ってもらう。


 今までのわだかまりも解けて、会話が弾むものかと考えていたが、そんなこともなかった。

 同じテーブルにつきながら、ヘズル・デンスは仏頂面でちびちび酒を飲むばかりだった。

 肩透かしを食らった気分もなくはなかったが、

 リシュワはこれがこの女の流儀なのだろうと、ゆっくり一杯飲み終わるまでつきあった。


 その沈黙は一見すると剣呑な雰囲気に見えたかもしれない。

 気をつかったようにローラがやってきた。

「リシュワさま、レオネさま、お部屋の用意は整えております。いつでもお休みになれますよ」

 リシュワは答えた。

「ありがとう、ローラ。でもわたしたちは気分よく飲んでるんだ。お気遣いありがとう。今日は激しい戦いだった」

「ほかの方が見えておりませんが」

「ダクツはゲデ・スオーンへ報告している。フリックは怪我をして治療を受けているはずだ」


 心配そうに眉を寄せるローラの背後から、どやどやと人が押し寄せた。

「フリックが怪我だって!」

「どんな相手と戦ったんだ?」

「聞かせてくれよ!」


 リシュワたちのテーブルはあっというまに囲まれた。

 ヘズル・デンスがぼそりと言う。

「おまえが呼び寄せたのだから、おまえが語ってやるのだぞ」


 リシュワはしかたなく話しはじめた。

「わたしたちは名前もわからない異形の怪物を追っていき……」


 話しているうちにも人が増えていった。

 人間のみあらず、コドンも周りに来た。

 戦士階級のほかに給仕たちも仕事の手を休めて、リシュワの話に聞き入った。

 聴衆は熱い期待を込めて、吐息をつき、固唾をのむ。


 ジェントル・オーダーなどといって行儀よく過ごしていても、やはり血気盛んな戦闘集団なのだった。

 この手の話が三度のメシより好きらしかった。


 ジェントル・オーダーの一員としての武勇譚を、ジェントル・オーダーの面々に披露するリシュワ。

 リシュワがこの集団に、本当の意味で受け入れられた瞬間だった。


 その夜はしばし延びた。

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