12-5
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「エミリア!!」
学園を出て馬車に乗り、待ち合わせしていた街の噴水広場の前まで行くと、すでにクロード様が待っていた。
目が合うと、クロード様は嬉しそうに笑ってぶんぶん手を振ってくる。もう片方の手にはなぜか大きな花束が抱えられていた。
「クロード様、お待たせしてすみません」
「いいや、そんなに待ってないよ。意外と講習早く終わったんだな」
「はい、先生が早めに授業を切り上げて。……あの、どうしたんですか、その花束」
思わず花束をじっと見ながら尋ねる。すると、クロード様は得意げになって言った。
「エミリアへのプレゼントだ。時間があったからそこの花屋で買っておいたんだ。エミリアのイメージを伝えて、エミリアらしい花束を用意してもらった」
「まぁ、これが私のイメージですか……」
花束には、桃色の大きな薔薇に、水色のガーベラ、薄青色のデルフィニウムと、淡く美しい色の花がたくさん使われていた。そこに可憐な白いカスミソウがたくさん散らしてある。
こんなに綺麗な花束が私のイメージだと言われると気が引けてしまう。そもそも、誕生日でもないのにこんな大きな花束をもらうなんて。
私の戸惑いが伝わったのか、得意そうだったクロード様の顔がやや不安げになる。
「迷惑だっただろうか……? エミリアが喜ぶことを考えたんだが、俺はまた何か間違っただろうか……」
「いいえ、嬉しいですわ。ありがたくいただきます」
にっこり笑って花束に手を伸ばす。すると、クロード様の表情が途端に明るくなった。
花束には以前私が好きだと言ったことのある花がたくさん使われていた。見ていたら温かい気持ちが胸に広がってくる。私は思わずぎゅっと花束を抱きしめた。
「エミリア、早速買い物に行こう。どこに行きたい? エミリアの行きたい場所ならどこへでも連れてってやるぞ!」
「そうですねぇ。では、洋服店に行きたいですわ。カペラっていう人気のお店があるの知っています?」
「ああ、エミリアがファロンの街に着て行った服を買ったという店だな! いいじゃないか。早速行こう」
「はい、そうなんです。お気に入りで……。……え? なんで知ってるんですか?」
明るい声で言うクロード様に尋ねると、彼はしまったという顔をして目を逸らした。一体どういうことだ。まさか、クロード様もファロンの街にいたわけではないだろうし……。
頭を悩ませたところで、ファロンの街で一瞬、クロード様によく似た人影を見たことを思い出す。
「クロード様、まさかとは思いますけれど、私がレスター様と出かけたとき後をつけてきたりはしていませんよね?」
「い、いや……それは……」
クロード様の顔はどんどん焦り顔になっていく。私はすっかり呆れてしまった。
「クロード様……」
「その、悪かった……! どうしてもエミリアとレスターのことが気になったんだ……!」
「本当に仕方ない人ですね。いいですわ。あなたの暴走にはもう慣れましたから」
溜め息交じりに言うと、クロード様はしゅんとした顔をする。私は苦笑いしながら続けた。
「でも、クロード様のそういうところ、嫌いではありませんわ」
「え……」
「私のことで一生懸命になってくれるクロード様、結構好きです」
「エミリア……!!」
クロード様は感動したように目を輝かせ、また私を抱き上げようとしてきた。街中で抱き上げられては堪らないので、私はさっと体をかわす。
避けられたクロード様が残念そうな顔をしているのがおかしかった。
クロード様といると、私の心はあっという間に彼の方に傾いてしまうから困る。怒っていても、もう信じないと決意していても同じで、自分ではどうにもならないのだ。
結局、どうにか別れを告げてみても、私は最初からクロード様のことを好きなままだったんだと気づいたら、自分に呆れてしまうのと同時に、なんだかそれが嬉しかった。
終わり
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