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それから数日後、クロード様はわざわざ私の家まで来て両親に今までのことを謝罪してくれた。
そしてこれからはエミリアを傷つけないから、婚約を続けさせて欲しいと頭を下げて頼んでくれた。
両親は私が婚約解消したいと申し出てからクロード様にあまりいい感情を抱いていなかったみたいだけれど、もともと二人にとっても幼い頃から知るクロード様のことだ。二人とも厳しい態度は長くは続かなかった。
クロード様の真剣な様子を見て、私が納得しているならと割とあっさり婚約継続を認めてくれた。
無事に婚約の継続が決まった日の翌日。放課後に私は明るい気分で校舎を歩いていた。
今日は街で待ち合わせをして、一緒に買い物に行く予定なのだ。私は放課後に講習が入っていたので、クロード様には先に街の方へ行ってもらっている。
軽い足取りで、玄関ホールに向かって足を進める。
そのとき、後ろから聞き覚えのある甘ったるい声が聞こえて来た。
「エミリア様っ」
「あら、ミアさん」
そこにいたのはミアだった。
ミアは私のほうをじっと見つめながら、愛らしい顔に意地悪な笑みを浮かべて言う。
「クロード様と仲直りしたんですね! よかったですわね」
「ええ。もしかして心配してくださったんですか? ありがとうございます。無事に仲直りできましたからご安心ください」
にっこり笑って言うと、求めていた反応と違ったのか、ミアは眉間に皺を寄せる。それから再び歪つな笑顔に戻って言った。
「安心しましたわぁ。でも、この先大丈夫なんですかね? やっぱり、クロード様みたいに身分もあって容姿も端麗な方が婚約者だと、これから先も大変なことは多いんじゃないですか? 色んな方が寄ってくるだろうし、クロード様も目移りすることはあるかも……」
ミアはちらりとこちらをうかがい見て、おかしそうに笑う。
私を不安にさせたいのはよくわかるけれど、前回揺さぶりをかけられた時のように心は動かない。
「そうですね。クロード様のことを好きになる方、この先もたくさん出てくるんでしょうね」
「ですよね? 私、お二人のことがちょっと心配で……」
「でも、ご心配には及びませんわ。クロード様は私のことしか見ていませんから」
そう言ってみたら、ミアの顔が瞬く間に引きつった。
「……へー。すっごい自信ですね」
「そうですか?」
「人の心なんて少し先にはどうなるかわからないじゃないですか。クロード様だってこの先心変わりなさることがあるかもしれませんよ?」
「そうですね。仮にそうなったらその時に考えます」
笑顔のままそう言うと、ミアはあからさまに不機嫌な顔になる。
「もういいですわ。勝手にしてください!」
ミアはいまいましそうにそう言うと、さっと背を向けて行ってしまった。
どうして私が捨て台詞を吐かれなければならないのかわからないけれど今日は気分がよかったので、あまり気にならなかった。
私はそのままミアとは反対方向に足を進めた。




