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私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが  作者: 水谷繭
11.どうしたい?

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11-3

「レスター様、ありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです」


「エミリアさん……」


「でも……ごめんなさい」


 絞り出すように言って頭を下げる。


 本当はレスター様の態度から何も感じないわけではなかった。なのに、私は気づかないふりをした。


 レスター様といれば、クロード様を忘れられるかもしれないと思ったから。


 けれど、結果はどうだろう。


 婚約解消したいなんて口ではいいつつ、内心では未練がましくクロード様のことを考えてばかり。本当は、私はクロード様と離れたくなどないのだ。


 ただ、クロード様が見てくれないのが悲しくて。一時的にこちらを見てくれたって、また時が経てば私から遠ざかるんじゃないかと不安で。


 私はクロード様のことを試したかったのかもしれない。


 ……そんな子供じみたことにレスター様を巻き込むなんて。



「レスター様、ごめんなさい……。私、やっぱりクロード様と離れたくないんです。レスター様といればもしかしたらクロード様を忘れられるんじゃないかと思いました。けれど、駄目でした。クロード様のことばかり考えてしまうんです」


「エミリアさん」


「利用するようなことをして、ごめんなさい……」


 私はただ頭を下げ続ける。顔を上げてレスター様を見る勇気が出ない。



「エミリアさん、顔を上げて」


 上から柔らかい声が降ってくる。おそるおそる顔を上げると、レスター様は少し困ったような笑みを浮かべこちらを見ていた。


「レスター様……」


「謝らなくていいよ。エミリアさんがクロード様のことをまだ好きなのは気づいてた。つけこもうとしたのは僕のほうだから」


「そんなこと……」


「もしかしたら僕といたらクロード様のことを忘れられるかもと思って来てくれたんでしょう? 結局だめだったみたいだけど。でも、嬉しいよ」


 レスター様はふわりと目を細めて言う。



「これからも友達でいてくれたら嬉しいな」


 レスター様はそう言って笑う。変わらず優しいレスター様に、涙が溢れそうになる。私は何度もこくこくうなずいた。



 その後は、少し気まずさを抱えながらも、二人で元来た道を歩いた。


 私は歩きながら、クロード様のことを考えていた。


 このままクロード様を避けているままでいいのだろうか。このまま関わりたくないと逃げているままで。


(……クロード様、何か言いたそうにしていたわよね……。私は聞こうとしなかったけれど……)


 クロード様の私を見る悲しげな目が頭に浮かぶ。


 思えばミアの言葉に動揺した私は、クロード様の言葉をろくに聞こうともしなかった。


 王都に戻ったら、今度ちゃんと話を聞いてみようと心に決めた。


 もう、逃げるのはやめにするのだ。


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