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私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが  作者: 水谷繭
11.どうしたい?

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11-2

 森を歩き続けると、木々の奥が何かキラキラ光っている様子が見えた。気になって近づくと、光は一斉にこちらへやって来る。


「わぁ、すごい! もしかしてこの舞っている光、妖精でしょうか!?」


「きっとそうだよ! すごい、本当に妖精がいるんだね!」


 そっと手を持ち上げると、光が人差し指の上にとまる。光はまるで生き物のように私の指の周りをくるくる回った。


 姿は見えないのに、その様子がなんだかとても可愛らしい。



「なんだかエミリアさんに懐いてるみたいだね」


「ふふ、とても可愛いですね」


 光はしばらく私の指の周りをぐるぐる回ると、ふわりと飛んで行ってしまった。その後も別の光が次々とこちらへ飛んでくる。


 しばらくの間レスター様と、キラキラと舞う妖精らしき光に見惚れていた。



「すごいですね、妖精に会えるなんて! 来てよかったです」


「本当だね!」


 私が感動しながら言うと、レスター様も笑顔でうなずく。


 それから指に止まっていた光を眺めていたレスター様は、ふいに真剣な顔になってこちらを見た。



「……あのさ、エミリアさん」


「なんでしょう?」


「前にも聞いたけどエミリアさんは……クロード様と婚約解消したいと思ってるの?」


 レスター様はじっと私の目を見つめながら尋ねてくる。


 私は思わず言葉に詰まり、地面を見つめた。


 婚約解消……。迷うまでもなく、そうだと答えればいいはずだ。クロード様には婚約解消して欲しいと何度も言ってきたのだから。


 なのに、なかなか言葉が出てこない。


 答えようとすると、胸がずきりと痛むのだ。


「ええと……」


 自分で自分の感情がわからない。


 クロード様のことなんて忘れたいと何度も思った。幼い頃に結ばれた婚約なんて解消して、離れてしまえたらきっと楽になれるだろうと。


 なのに、この痛みはなんだろう。



「エミリアさん。もしもクロード様と婚約解消するつもりなら……僕を新しい婚約者にしてくれないかな」


「え……っ?」


 驚いて顔を上げると、レスター様は痛いほど真剣な目で私を見ている。


「な、何をおっしゃっているのですか」


「初めて会ったときからずっと気になって仕方なかったんだ。僕はクロード様みたいにかっこよくもないし、お金持ちでもないけれど。でも、エミリアさんに絶対悲しい顔はさせないから」


 レスター様の言葉に驚いて、なかなか言葉を返せない。


 レスター様は確かに最初から好意的だったし、いつも親しげに話しかけてくれたけれど、友人として接してくれているとばかり思っていた。


 だって、レスター様と仲の良い女の子はたくさんいるし、その中には私よりもずっと綺麗な子が大勢いるもの。


 そんなこと思ってもみなかった……そう考えたところで、自分のずるさに気づく。


 時折レスター様から向けられる真剣な目や声。本当に私は何も気づいていなかったのだろうか。

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