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私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが  作者: 水谷繭
11.どうしたい?

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11-1

 カフェを出た後は、いよいよ妖精の森へ行くことになった。


 ファロンの街は中心部から少し歩くと、途端に自然が多くなる。


 しばらく歩いた先に木のアーチが見えた。妖精の森の入り口だ。森の前にあんな入口まで作ってあるなんて、さすが観光地だなぁと感心してしまう。


「へぇ、なんだか森というよりテーマパークみたいだね」


 木のアーチの入口をくぐりながらレスター様は言う。


「本当ですね。こんなに整備された場所だと思いませんでした」


 森といっても、入口同様に中の道はきちんと舗装されていた。


 歩きやすくてありがたいけれど、絵本に出てくる妖精が出てくるような森を想像していた私は、ちょっぴりがっかりしてしまう。



「エミリアさん、とりあえず奥まで歩いてみよう」


 レスター様はそう言って私の手を引いた。私はうなずいて、手を引かれるまま彼の後に続く。


 森の中は空気が澄んで、とても気持ちのいい場所だった。木々の間からは小鳥の囀りが聞こえてくる。


 きょろきょろと辺りを見渡しながら、森の中を進んだ。


 澄みきった湖に、見上げるほど大きな大木。森の奥には珍しい花がいっぱいに咲く花畑まである。


 進めば進むほど素敵な場所で、私は先ほど少しがっかりしたのが嘘のように森の光景に見惚れていた。



(こういう場所、前にも来たなぁ……)


 頭の中に、幼い頃何度も見た光景が思い浮かぶ。


 クロード様の生家であるエイデン侯爵家の領地にもこの森と同じくらい広い森があり、侯爵家を訪れたときに何度も引っ張って行かれた。


『エミリア、また森に遊びに行くぞ!』


『でも、森は危険な生き物がたくさんいるって聞きました。怖いです』


『俺がついてるから大丈夫だよ。ほら、来いって』


 躊躇う私の手を強引に引っ張るクロード様。


 幼い頃の私はひどく怖がりだったけれど、クロード様が一緒なら何も怖くなかった。


 私にとってクロード様は、いつだって強くて眩しくて、憧れて仕方ない人だったのだ。



「エミリアさん、大丈夫? 歩き疲れた?」


「えっ? あ、いえ! 大丈夫です!」


 レスター様に声をかけられ、途端に現実に引き戻される。少しぼんやりし過ぎていたみたいだ。


 慌てて首を横に振ると、レスター様は「疲れたらいつでも言ってね」と微笑んだ。



 その後もレスター様は森を歩く間中、道が悪いところでは支えてくれたり、私が少しでも疲れた様子を見せると休憩しようと勧めてくれたりした。


 クロード様はそんな細かいことに気づいてくれないので、なんだかその気遣いに感動してしまう。

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