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「じゃ、じゃあ今度の休日にまたどこかへ出かけないか!? 劇場でもカフェでも買い物でも、どこでもエミリアの好きなところへ連れて行ってやるから!」
「今度の休日はレスター様とファロンの街へ行くので無理です」
「え?」
私が答えると、クロード様は呆気に取られたような顔をする。
「レスターと? どういうことだ?」
「今日の精霊学の授業の前に約束したんです。『妖精と花の迷路』の舞台になった場所に行ってみようって」
「な……っ、何もレスターと行くことないだろ!? そんな場所、俺がいつだって連れて行ってやるのに……!」
「結構です。もう約束してしまいましたし」
澄まして答えると、クロード様は何か言いたげにこちらを見る。
「駄目なのですか? それほど遠い場所ではありませんし、いいではありませんか。クロード様とミアさんのように泊りがけで行くわけではないのですし」
「……!」
私がミアさんの名前を出した途端、クロード様は顔を引きつらせる。
「泊りがけの予定で行ったわけではない! 馬車が壊れて仕方なかったのだと説明しただろ!?」
「あぁ、そう仰っていましたね。失礼いたしました。けれど、お二人で出かけたのは事実でしょう?」
クロード様は何か言いたげにしているけれど、何も言葉が出てこない様子だ。私はちょっと胸がすく思いで彼に笑いかける。
「そういうわけなので、クロード様とは出かけられませんわ。お出かけならミアさんでもほかの方でもお誘いして、どうぞご自由に行ってらしてください」
「エミリア……!」
クロード様に背を向けて、校庭を駆けて行く。もうクロード様のことで一喜一憂したくない。
今度こそ彼に振り回されるのはやめるのだと、もう何度もした決意を再び新たにした。




