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私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが  作者: 水谷繭
8.やっぱり嫌いです!

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8-3


 レスター様とファロンの街……。今までだったら断っていたかもしれない。


 レスター様は友人として誘ってくれているだけだろうけれど、婚約者がいるのにほかの男性と出かけては周りに誤解を与える可能性があるもの。


 けれど、クロード様がミアと泊りがけでレアンの街に行ったという話を聞いた今では、私がそこまで気にする必要はないように思えた。


 というか、どうして今まで私ばかり気にしていたのかと、不満な気持ちがもたげてくる。


「……いいですよ。行きましょうか、ファロンの街」


「本当!? いつにしようか!」


 私が了承すると、レスター様は嬉しそうな顔になる。


 その後は、授業が始まるまでの時間、ずっとファロンの街へ行く計画を立てていた。街へ行ったらどこへ行くのか話していると、自然と明るい気持ちになった。



***


 その日の授業が終わり、校舎を出ると、やはりクロード様は待っていた。彼は私に気づくといつもより遠慮がちに近づいてくる。


「エミリア……」


「クロード様、また待ち伏せですか」


「エミリア、まだ怒っているのか?」


 クロード様は私の顔を覗き込み、不安げな調子で尋ねる。


「まぁ、クロード様。最初から怒ってなどいませんよ。今朝もそう言ったではありませんか」


「それならうちの馬車で一緒に帰……」


「クロード様と関わりたくないとも今朝言いましたよね? 毎日放課後に待っているのをやめていただけますか?」


 にっこり笑ってそう言うと、クロード様は言葉に詰まった後、悲しげにうなずいた。


 この前まではかわいそうに見えてしまったその表情も、なんだか今日は腹立たしい。


 落ち込むくらいなら私に構うのをやめて、ミアのところにでも行って優しくしてもらえばいいではないか。


 私が距離を置こうとした途端、焦ってご機嫌を取ろうとするなんて馬鹿みたい。私が元通りクロード様に無批判に従うようになったら、またあっさり態度を変えるのではないだろうか。


 クロード様の顔を見ているだけでふつふつ怒りが込み上げてくる。

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