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私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが  作者: 水谷繭
7.花と妖精のお祭り

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7-6

「私に何か用でしょうか」


「エミリア様というか、クロード様になんですけどね。お渡ししたいものがあって待っていたんですが、クロード様はなかなかいらっしゃらなくて……。エミリア様から渡しておいてもらえませんか?」


 ミアは上目遣いで、少し困った表情になりながら紙袋を差し出す。


 なかなかいらっしゃらないも何も、この時間ではまだほとんどの生徒が登校していない。


 なぜわざわざこんな時間に待っていたのかと違和感があったけれど、気になったので紙袋を受け取ることにした。


「これ、中身は何ですの?」


 尋ねると、ミアの口元がにんまり動く。


「ジャケットですわ。以前お借りしたままずっと返せていなくて」


「……ジャケット?」


 紙袋の中に視線を向ける。確かに中は服のようだった。見覚えのある服だ。クロード様が休日によく着ていたグレーのジャケット。


 なぜこれをミアが、と尋ねる前に彼女は口を開いた。


「実は、以前クロード様とレアンの街の宿に泊まったんですが、その時お借りしたままになっていたんです。クロード様は返さなくていいとおっしゃいましたが、こんなに高価そうな服をいただくわけにはいきませんから。エミリア様、お手数おかけしますが、返しておいてくださいね!」


「え……?」


 ミアの言葉に顔が引きつった。


 泊まったってどういうこと? レアンの街? わざわざそんな遠くの街に二人で出かけたの……?


 ミアの表情をじっと見つめる。その顔には、以前彼女がクロード様と話しているときにこちらに向けてきたのと同じ、優越感が現れていた。


 心臓がどくどくと音を立てる。


 何かの間違いなのではないだろうか。こんなところで待ち伏せしてまで、わざわざクロード様でなく私に服を返してきたのだ。


 何か企んでいるのかもしれない。彼女は嘘を吐いているのかも。


 けれど、腕の中にある服は確かに見慣れたクロード様の服で、頭の中は真っ白になっていく。



「エミリア様、お願いしますね?」


 ミアは首を傾げ、不敵な笑みを浮かべると、背を向けて行ってしまった。


 後に残された私は、紙袋を抱えたままなかなかそこを動くことができなかった。

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