7-5
どうしよう。楽しい。クロード様となんてもう関わりたくないと思っていたのに。
一緒に街を歩いていると、幼い頃の記憶が自然に蘇ってきた。怖がりな私の手を引いて、いつも色んな場所に連れて行ってくれたクロード様。
『エミリアのことは俺が守ってやるよ』
クロード様がそう言ってくれた時、本当に嬉しかったのを覚えている。
クロード様が冷たくなってからもずっと、また幼い頃みたいに戻れたらという願いが消えなかった。
今だってそうだ。もう見切りをつけたはずなのに、クロード様に笑いかけられた途端、いつのまにか心が引き戻されてしまう。
「エミリア、楽しいか?」
クロード様はふいにこちらを振り返って言う。
「まあまあですわね」
「じゃあ次はもっと楽しませるよう頑張るよ」
クロード様は殊勝にもそんなことを言う。
天邪鬼な私は「次があると思ってますの?」なんて返してしまったけれど、クロード様はそれでも楽しそうに笑うばかりだった。
***
結局、すぐに帰るつもりがほとんどのお店が閉まるまでお祭りに残ってしまった。
クロード様があんまり悲しそうな顔をするからつき合ってあげるだけのつもりだったのに、思い返すと楽しかったという感想しか出てこないのが悔しい。
けれど、悶々と考えながら、もう許してあげてもいいのではないかと思えてきた。
昨日のクロード様はいつもとはすっかり態度が違っていて、私が可愛げのない返事ばかりするにも関わらず、ずっとこちらを気遣ってくれた。
レスター様のことも家に何かするだなんて本気で言ったわけではないと焦っていたし、思わず口をついてしまっただけなのだろう。いいかげん、仲直りしてもいいのかもしれない。
翌日、登校した私は学園の庭を歩きながら考えていた。
今日もクロード様は玄関ホールで待ち伏せしているだろうか。いつも早足で走り去ってしまうけれど、今日はちゃんと話を聞いてあげようか。
そうだ、今日のお昼休みは私から迎えに行ったら喜んでくれるかしら……。
私がそんなことを考えながら頬を緩めていると、前方からこちらに向かって歩いてくる人影が見えた。風に揺れるピンクブロンドの長い髪。
「おはようございます、エミリア様っ」
駆け寄ってきたのは、大きな紙袋を抱えたミアだった。ミアはこちらに近づくと、親しげに声をかけてくる。
「……おはようございます、ミアさん」
「ちょうどよかったですわ! エミリア様にここで会えて」
ミアはやたらと愛想のいい笑みを浮かべて明るい声で言う。彼女の意図がわからず、私は身構えた。




