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映画は百年ほど前に隣国で魔道具作りの天才として有名だった人が、光魔法の技術を応用して作りだしたそうだ。
昔は一作品を作るのに大変な労力が必要だったみたいだけれど、現在は技術が進み、国内だけで年に数十本の作品が作り出されている。
たくさんの作品が観られるのは嬉しいけれど、数が多いせいで昔の作品はなかなか上映される機会がないのが難点だ。
私も『妖精と花の迷路』を観たくていくつもの劇場を調べたのに、上映しているところは結局見つからなかった。
目の前には念願の『妖精と花の迷路』の映像が映し出されている。
半透明の羽根を背中に生やした、本物の妖精にしか見えない主人公の女の子。花で埋め尽くされた幻想的な光景。ドキドキする物語。
ストーリーはよく知っているはずなのに、のめり込んで観てしまう。
映画が終わるまでの一時間半は、夢みたいな時間だった。
「す……すごく素敵でしたわ……!」
上映が終わっても興奮が冷めやらず、私は頬に手を当てて言った。
「いい映画だったな」
「ええ、映像にするとこんなに美しいなんて……。想像以上でしたわ! 主人公の女の子の羽根、本物にしか見えませんでしたよね? まさか本物の妖精を連れてきたのかしら。ああ、すごく素敵でしたわ……」
うっとりしながら言い募ると、クロード様は頬を緩めておかしそうに私を見ていた。その顔を見てはっとする。
一体私は何を本気で楽しんでいるのだろう。
「エミリアがそこまで喜んでくれるとは思わなかった」
クロード様はそう言って私を見つめ、目を細める。私は途端に恥ずかしくなって目を伏せた。クロード様への憤りも忘れて全力で楽しんでしまうなんて不覚だ。
「外でポストカードとかも売ってたけど見に行くか?」
「……行ってあげても構いませんわ」
「急に正気に戻るなよ。おもしろかったのに」
慌ててすまし顔に戻った私を見て、クロード様は笑いだす。興奮して語った後では、取り繕ってもあまり意味はなかった。
ちょっと気まずく思いながらも、その後は劇場前でグッズを見たり、近くのお店を回ったりして過ごした。
あまり楽しんでいるように見られたくないと思っていたのに、結局お祭りを満喫してしまったように思う。
「エミリア、次はどこへ行く?」
「劇場だけでいいって言ったじゃないですか。このまま帰ります」
「向こうにさっきの映画で主人公が着てたようなドレスをたくさん売ってたぞ。見なくていいのか?」
「う……少しだけなら行ってみてもいいですわ」
私が答えると、クロード様はおかしそうに笑って私の手を引いた。クロード様に引っ張られるように、人混みを早足で進む。




