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1-3

 

 ミアは、私たちと同じ学園に通う男爵家の令嬢だ。


 私たちより一つ下の学年なのでクラスは違うけれど、いつからかクロード様と一緒にいるのを見ることが増えた。


 別にやましい関係じゃないのはわかってる。二人は人目に隠れるわけでもなく、会ったら仲良く話すだけ。先輩後輩同士の距離感と言われてしまえばそれまでだ。


 けれど、私には二人を見ているのが辛かった。だって、クロード様は私には決して向けてくれないような表情をミアに向けるから。


 それに……ミアの目には時折、私に対する優越感のようなものが浮かぶ気がする。


 私の被害妄想かもしれない。けれど、私は彼女のことがどうしても好きになれなかった。



 クロード様は、ミアのことを好いているように見えた。


 少なくとも私なんかよりもずっと、彼女といる方が楽しいだろうと。


 それでも気づかないふりをしていようと思っていたのに、なぜだろう。彼とミアが笑いあっているのを見たことなんて何度もあるのに。


 今、突然張り詰めていた糸が切れるように、もう頑張れないと思ってしまった。



 私は二人に背を向け、走り出す。


 婚約を解消するなら、早い方がいい。そうでないと私の決心が鈍ってしまう。


 胸はまだズキズキ痛む。でも、これでよかったのかもしれない。この先も叶わない恋にしがみついて無駄な時を過ごすよりは、ずっといいはずだ。


 ……クロード様だって、嫌っている私と離れられた方が嬉しいと思う。



 私の両親とクロード様の両親には迷惑をかけてしまうと思うけれど、私たちの婚約は絶対に継続しなければいけない類のものではない。


 両親同士の仲がよかったから、家同士の繋がりを強めるために子供たちを婚約させただけで、当人同士が望まないなら婚約を解消しても大きな問題はないのだ。


 私は、クロード様と結婚できる日をずっと夢見ていたけれど、彼が望んでいないなら、無理矢理結婚したってうまくいくはずない。


 今までわかっていながら無視してきたことを今は自然に受け入れられた。



 それでも、私の頭からは幼い日のクロード様の笑顔が消えなかった。


 私はこれまでの想いを振り切るように、ただ必死で走り続けた。

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