6-3
一曲踊り終わると、すぐさまエミリアの元へ行こうと会場を走った。幸いなことに、ミアはそれ以上は何も言わずに解放してくれた。
早くエミリアの元へ行って謝らねば。
しかし、会場のどこを探しても彼女の姿が見当たらない。バルコニーや廊下も確認するが、一向にエミリアは見つからなかった。
心配になり、会場を出て学園中を探し回る。
エミリアはもしかすると、俺がミアの方を取ったのだと思い傷ついてどこかへ行ってしまったのかもしれない。ミアを優先したわけではないのだと早く説明しなければ。
校舎内ではなく外にいるのかもしれないと庭を探し始め、ようやくベンチのところにエミリアらしき人影を見つけたときは心底ほっとした。
歩み寄ろうとして、目に入った光景に頬が引きつる。
エミリアは一人ではなかった。
あの、よくエミリアに近づいているいまいましい女みたいな外見の男……レスター・アディソンが隣にいたのだ。
二人はやけに親密そうに話している。エミリアの表情に心配していた憂いなどは何もない。レスターの言葉で笑う彼女の表情は、俺の隣にいる時とは全く違う打ち解けたものだった。
呆然とその光景を見ていると、二人は何やら深刻な顔で話し始めた。レスターがエミリアの顔をじっと見つめ、何か言いかける。
俺はようやく我に返り、茂みの影から出て二人に近づいた。
「エミリア!!」
思わず声を荒げると、エミリアは驚いた顔でこちらを見る。
「クロード様……」
「いくら会場を探してもいないと思ったら……。こんなところで何をしていたんだ」
思わず不機嫌な声が出る。近くで見るとエミリアの手にはレスターの手が重ねられており、余計に苛立ちが増した。
一体、こんなところで二人で何をしていたんだ。まさか約束でもしていたのだろうか。
怒りに任せてエミリアに軽い女だなんてひどいことを言ってしまった。
すると、レスターが立ち上がって「エミリアに文句を言う前に自分の行動を見直せ」なんて偉そうなことを言ってくる。よりにもよってレスターにそんな忠告をされ、頭に血が上っていく。
二人を引き離すようにエミリアの手を引いてその場を離れた。
レスターといるのを見る前は謝ろうとばかり思っていたのに、苛立ちのままにエミリアを問い詰めてしまう。彼女はそんな俺を冷ややかな顔で見るばかりだった。
「クロード様こそ、さっきまでほかの女の子と踊っていたくせに。勝手過ぎます」
エミリアは文句を言い募る俺に呆れ顔をする。正論過ぎる言葉に反論のしようもなかった。




