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「レスター様、クロード様がほかの生徒を牽制してたって、一体どういうことですか?」
「君に声をかけたり、裏で君と仲良くなりたいと話している生徒を見つけると、クロード様はエミリアは自分の婚約者だから無闇に近づくのは遠慮して欲しいとわざわざ呼び出して忠告するんだ。ちょっと異常だよね。表情は笑顔だけど、目が全然笑ってなかったし」
「まさかレスター様も何か言われたのですか……? ご迷惑おかけして申し訳ありません……!」
レスター様に謝りながら、一体クロード様は何をしているんだと怒りが湧いてくる。
私のことなんて、婚約解消を告げるまでずっと冷たくあしらうだけだったくせに。自分はミアと平気で仲良くしていたくせに。裏ではそんなことをしていたなんて。
「エミリアさんのせいじゃないから気にしないで」
「でも……」
「僕こそ、去年のダンスパーティーでは君が悲しそうにしているのがわかったのに何もできなくてごめんね。普段ならともかく、大抵の人が婚約者といるダンスパーティーの会場で近づくのはよくないかと思ってさ……」
レスター様は顔を俯けて、申し訳なさそうに言う。私は慌てて首を横に振った。
貴族の家の子供たちが集まるこの学園で行われるパーティーは、ただの社交の場以上の意味を持つ。不適切な行動を取れば、本人のみならず家にも影響が出かねないのだ。
「いいえ。……そう思っていただけただけで十分です」
「エミリアさん」
レスター様は俯けていた顔をあげ、じっと私の目を見つめる。
「エミリアさん、本当はクロード様のことをどう思っているの? 彼のことが好き? もしも本心では彼と離れたいなら──……」
「エミリア!!」
レスター様が言いかけたところで、突然後ろから大きな声が聞こえてきた。
視線を向けると、そこには息を切らしたクロード様がいる。彼はじっと睨みつけるようにこちらを見ていた。
「クロード様……」
「いくら会場を探してもいないと思ったら……。こんなところで何をしていたんだ」
クロード様はこちらに近づくと苛立たしげな声で言う。そしてレスター様に掴まれた私の手に視線を向けると、思いきり不快そうな顔をした。
「なんだ、会場を抜け出して男と会っていたのか? そんな軽い女だとは知らなかったな」
クロード様の蔑むような声。頬がかっと熱くなる。
一体、誰のせいで会場を抜け出すはめになったと思っているのだ。軽い女だなんて、クロード様にだけは言われたくない。




