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「すまない、ミア。今年はエミリアといたいんだ。君と踊りたい人はたくさんいると思うから、別の人を探してもらえるか?」
「えっ……」
ミアの顔が途端に引きつっていく。
私は少し驚いてしまった。なんだかんだ言っても、クロード様はミアから誘われたら、去年と同じようにそちらに行ってしまうと思っていたから。
感情を動かされまいと思うのに、意志とは裏腹に心臓の音が速くなっていく。
クロード様は、本当に態度を改めて私を大切にしようとしてくれているのだろうか。もしかして、私たちはまた幼い頃みたいに戻れる?
これまで散々冷たくされてきたというのに、愚かにも私の心には期待が広がっていく。クロード様への長年の想いは、それだけ私にとって大きなものだったのだ。
ミアが悔しそうな顔でこちらを睨むのが見えた。しかし、ミアはさっと表情を変えると、にっこり笑ってクロード様に言う。
「それなら仕方ありませんね。婚約者様といるところをお邪魔してしまってすみません」
「いや、悪いな」
「けれど、クロード様……」
ミアは不敵に笑うと、クロード様の腕を引いて耳元で何か囁く。すると、クロード様の顔が途端に青ざめた。
彼らは私には聞こえない声で、何か囁き合っている。
「……エミリア」
振り向いたクロード様の顔は、先ほどまでより一層強張っていた。
「なんでしょう」
「その……すまないが、次のダンスはミアと踊ってもいいだろうか。誘っておいてすまない」
クロード様は珍しく、本気で申し訳なさそうな顔をして謝った。けれど、私は心がたちまち冷えていくのを感じる。
なんだ、本当に態度を改めてくれる気になったのかと思ったけれど、違うのか。結局は私よりもミアを取るんだ……。
「構いませんわ。今日は私は私で自由にする気で来ましたので」
落ち込む内心とは裏腹に、素っ気ない口調で言った。
いつもはそんな私の態度に眉をひそめるクロード様も、今回ばかりは何も反論せず、もう一度謝ってミアと去って行く。
壁際で軽やかに踊る二人を眺めた。会場に流れる曲の明るさが、余計に私の心を沈ませる。
(もうこんな思いをしたくないから初めから期待しないでいようと思ったのに……)
それなのに少しクロード様に歩み寄られただけで、警戒を解いてしまう私はなんて愚かなのだろう。
美しいクロード様と、彼の目の色のドレスを身に纏った愛らしいミア。お似合いの二人の姿を見ているのがつらくて、逃げるように会場を出た。
人混みを避けて歩くうちに、庭まで来てしまった。辺りはもうすっかり暗くなっていて、ほかに人影は見えない。
私は花壇の前のベンチに腰を下ろす。なんで私はいつもこうなんだろうと、胸にもやもやが広がっていく。




