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私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが  作者: 水谷繭
5.憂鬱なダンスパーティー

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5-1

 会場にはすでにたくさんの生徒が詰めかけていた。


 クロード様と一緒に騒がしい会場を歩く。一歩会場へ足を踏み入れた途端、周りの視線がこちらに集中するのがわかった。


 みんな、美しいクロード様に見惚れているのかもしれない。……中身は外見とは大違いのひどい人なのに。


 予想通り、クロード様の周りにはあっという間にたくさんの人たちが押し寄せた。


 どうせこの後はまた放置されるのだろうなと思いながら見ていると、意外にもクロード様は彼らに軽く挨拶しただけで、すぐに私のほうに戻って来る。


「もう少しゆっくりお話しされていてもよかったんですのよ」


「いや、いい。お前が拗ねるからな」


 平然とそんなことを言うクロード様を、冷ややかな思いで見上げる。



 それからパーティーが始まり、最初の曲が始まった。クロード様に手を差し伸べられ、一曲目のダンスを踊る。


 踊っている最中のクロード様は、例年通りの仏頂面だった。リードは完璧なのがまた鼻につく。


 周りで踊っている生徒たちは皆、楽しそうに笑い合ったり、合間に相手を褒め合ったりしているけれど、私とクロード様はそんな和やかな雰囲気とは全く無縁だ。


 一曲目のダンスが終わり、みんなその場に残って笑い合ったり、テーブルの方へ向かったり、散り散りになっていく。


「エミリア、次も踊ってくれるか?」


「……え」


 クロード様に仏頂面のままそう言われ、私は目を見開く。


 表情は固いけれど、その目にはどこかこちらをうかがうような、不安の色が浮かんでいた。


 去年までだったら、一曲目のダンスが終わるとさっさと友人たちの方に行ってしまったのに。


「無理しなくていいですよ。私は私で自由にやりますので、お好きなところへ行っていただいて」


「だ、だから今までのことは悪かったと思っていると言っただろう! 二曲目も俺と踊るのは嫌なのか?」


 クロード様はムキになったように言う。


 悪かったと思っていると言う割には、随分横柄な態度。本当に反省しているのかしら。


 呆れているのに、同時に心の奥で少しだけ嬉しいと感じている自分に気がついた。


「……仕方ないですね。それなら……」


 踊ってあげてもいいですよと、クロード様に負けず劣らずの天邪鬼さで言おうとしたら、後ろからバタバタとした足音が聞こえてきた。



「クロード様!」


 鈴の音のような愛らしい声。振り向くと、そこには金の刺繍の入った紫色のドレスを着たミアがいた。


「ミア……」


「クロード様、お会いできて嬉しいです! タキシード姿もとっても素敵ですわ! よろしかったら、今年も私と踊ってくださいませんか?」


 ミアはクロード様の手を取り、目を輝かせて言う。


 私が何て答えるのだろうと冷めた目でクロード様を見ると、彼はミアに掴まれた手をさりげなく離しながら、感じのいい笑みを浮かべて言った。


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