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あれ以来、クロード様は来なくていいと言っているにも関わらず、毎日うちのお屋敷まで迎えに来る。
お昼休みには教室まで来て私を引っ張っていき、放課後になると私が逃げ帰る前にやって来て無理矢理馬車に乗せるのだ。
はっきり言ってうんざりしていた。
ほんの少し前、クロード様への気持ちを諦める前に同じことをしてくれたら……嬉しかったかもしれない。悲しいことに今までの私は冷たくされてもクロード様に夢中だったから。
たとえこちらのことを考えず強引に連れ出されるだけでも、自分で引っ張ってきておいて不機嫌な顔のままでも、クロード様が私の元へ来てくれたというだけで喜んでしまったと思う。
けれど、諦めようと決心した後でこんな風に接近されても、迷惑なだけだ。
一体、何が「俺が構ってやらないのが不満だったのだろう?」だ。私はもう、今までの私ではないのだ。
***
「もうすぐ学園のダンスパーティーだな」
ある日の帰りの馬車の中でのこと。珍しくクロード様が口を開いた。怪訝に思いながらその顔を見る。
「そうですね。毎年私がクロード様に置き去りにされる、あのパーティー」
「置き去りにはしていないだろ。少し離れただけだ」
冷たく言葉を返すと、クロード様はむっとした顔をする。怒りたいのは私のほうだ。
ダンスパーティーにはちっともいい思い出がない。
毎年初夏になると行われるそのパーティーには、生徒たちが思い思いに着飾って参加する。
友人同士で参加する生徒も多いけれど、婚約者がいる者は暗黙の了解で婚約者と連れ立って参加することになっている。
私も毎回クロード様と一緒に会場に入っていた。
しかし、クロード様が一緒にいてくれるのは最初だけで、一度目のダンスを儀礼的にこなすと、すぐに友人の男子生徒たちの輪に交ざってしまう。
私の友人たちにはみんな婚約者がいて、彼女たちはそれぞれ婚約者と仲良く過ごしているので、私はぽつんと壁際で賑やかな会場を見ているしかなかった。
それでも、一昨年まではクロード様が一緒にいるのは同性の友人だけだったのでまだ我慢できていた。
しかし去年、鮮やかな赤色のドレスを着たミアがクロード様にダンスの相手をしてくれないかと頼むと、クロード様は迷う素振りもせずにそれを受けたのだ。
会場の隅で楽しそうに踊る二人の姿を見ているのは、なんとも惨めな時間だった。
嫌なことを思い出してしまい、私は窓の外に視線を逸らした。




