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「こ……婚約解消? エミリアがそう言ったのですか?」
深刻な顔をした両親に呼び出され、告げられたのは信じられない言葉だった。
そんなはずはない。エミリアは俺のことが好きなはずだ。
最近は確かに少し態度が悪かったのは認めるが……けれど、婚約を解消されるまでのことはしていないはずだ。
第一、エミリアはついこの間まで柔らかな笑みを浮かべて俺の方に駆け寄って来ていたではないか。
焦る俺に向かって、父は苦々しい顔で言う。
「バーンズ伯爵から聞いたぞ。お前、エミリアさんに随分な態度を取っていたそうではないか」
「それは……。婚約解消されるほどのことをした覚えはありません!」
「お前の認識はそうでも、エミリアさんは傷ついていたようだぞ。エイデン家としては彼女が望むなら婚約解消を受け入れようと思っている」
「そんな……」
頭が真っ白になった。エミリアはこの先もずっとそばにいて、時が来たら結婚するのだとばかり思っていた。
エミリアがいない未来なんて考えたこともない。
エミリアが離れて行って、他の男と結婚する未来を想像したら血の気が引いた。
「婚約解消は待って欲しいと……エミリアの両親に返事していただけませんか」
両親に頭を下げて必死に頼んだ。
エミリアが離れていく未来なんて、とても耐えられそうにない。
婚約解消は待ってもらうよう両親に頼み込み、何とか了承してもらった翌日。
俺は朝早くから学園に向かいエミリアを待ち伏せした。
エミリアの姿を見つけると、急いで駆けていく。
どういうことだと問い詰めても、エミリアは涼しい顔をしたままだった。エミリアはもっと、俺の言葉一つ一つに大きく反応する奴だったはずなのに。
エミリアの反応が気に入らず、外聞を考えろだなんて心にもないことを言ってしまう。
腹立たしいことにエミリアは冷静に反論してきた。
何とも気に入らない。動揺しているのが俺だけみたいではないか。
校舎裏まで連れて行って話を聞いても、エミリアが婚約解消を撤回することはなかった。
おかしい。エミリアが俺を拒絶するなんて。
全く信じられない。
俺は何とも言えない気持ちを抱えながら、婚約解消はしないとだけ告げてエミリアの元を去った。
「もう疲れてしまった」と言ったエミリアの冷めた表情が瞼の裏に焼きついて離れない。
校舎まで戻る間中ずっと、胸がズキズキ痛んで仕方なかった。




