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◆戸惑う

「杏花ちゃんってあれだろ、隣に住んでた女の子。2つ?3つ下?の」

「そぉ、それ。」

「昔何回か会ったけど俺のこと覚えてるかな」

「覚えてる。名前出したら久しぶりに会いたいってよ」


健太郎は小中と同じで、高校は別で疎遠になっていたが大学のサークルでバッタリ会った気心の知れている奴だ。


「で?何で振った方が落ち込んでんの」

「落ち込んで…はいないけど」


たまたま学食で会って何とはなしに杏花に告白されて流して今後どうすればいいやらと話した。

健太郎はオレに問いカレーうどんを啜った。


「何だろうなあ。こんなのに引っかかって可哀想、みたいな?3個も下なのよ?」

「お前から年齢気にする言葉を聞く日が来ようとは。もう大学生になったんだろ?和也をわざわざ追いかけてうちの大学に来るなんて健気なのにな」

「そう本当。」

「百戦錬磨の和也ならもっと上手く言いくるめられたんじゃないかと思うけどね。何もそんな半端なことしなくても」

「いい言葉が見つかんなかったっつーか」

「それか、元々そういう女は近くに置かない」

「……仕方ないだろ、家隣なんだから」

「それにしても、だろ?」


この勘の良さに助けられることは多いが、それが自分を標的にされると話は別だ。話すだけ話してスッキリするつもりが。

こちらが何も言わなければ素知らぬフリで通り過ぎるから忘れていたけれど、よく見ている分相談すると手厳しい。そういう奴だった。

オレは相手を間違えたと後悔した。


「応えられないけど大切だから今のままいてくれって?それって都合良すぎない?」

「ぐ…」


それが正しいと思うだけに、何も言い返せない。


ただ、オレにも言い分はある。


「勘違いなんだよあいつの恋は」

「は?」

「ただの兄に対する好意が、恋に変わる瞬間をずっと見てたんだ」


あれを、勘違いと言わずして、何と言うのか。

弱っているところに優しくされて、それに甘える理由を探しただけのはずの恋心を。

それに気付いて傷付くのを見るなら、曖昧なまま戻れる関係にしといてやる方が優しさってモンだろう。


「だいたいさ、オレの恋愛遍歴わかってんだろ?」

「続いて1ヶ月、最短2時間だっけ?でも実際まともに彼女と言える彼女居ないだろ?」

「そ。遊びたいときに遊びたい子と遊んでるだけ。」


自慢じゃないが、それなりにモテる。

遊びたいときに呼び出せる子がいる程度には。めんどくさいのは懲りたから、後腐れないように相手は選んでいるが。

つまりあれだ、ほどほどの外見でほどほどのスペックで、オレは“ちょうどいい”んだろう。

大抵、オレにとっても向こうにとっても都合のいい関係だ。


「あーんな真面目な子に手出したら可哀想じゃん?」

「真面目に付き合えばいいだけの話じゃん。摘まみ食いしてポイ、できない程度には大切ってことだろ」

「……だからなんだよ。あいつが傷付くのは目に見えてんだから。真面目で一途に愛してくれる人に幸せにしてもらえって感じ」


よくわからないという顔をする健太郎はオレとは真逆だ。こいつは程々の束縛なら喜んで受け止めるし、最近は不器用な彼女を甘やかすのを楽しんでいる。

秘密主義らしく相談もされないし惚気られもしないが。

付き合う前、好きな子の情報を引き出すのに躍起になったのは記憶に新しい。


オレは女の子は好きだけど誰かに縛られるのは嫌いだし、その場だけ楽しければいい。ちょっと寂しくなったときに隙間を埋めてくれればそれでいい。

杏花が求めてるのは、オレの付き合い方とは違う。


「とか言う割に、ここ一週間くらい女の子といるところ見ないなあ」

「うっせぇな忙しかったんだよ」

「そうかな」

「そうだよ」


ニヤニヤと楽しそうな健太郎。


「そういえば1、2年ぐらい前?デートなのーとか言って毎日授業終わると急いで帰ってた時期あったけど、あれさ、杏花ちゃん絡み、だろ?」

「………」


本当に、飛んだ人選ミスだ。




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