◇告白される
懐かしい夢を見ていた。
目を開けると、見慣れた天井。
「起きたか」
ずいぶん寝ていた気がする。
和也くんがゆっくり頭を撫でている。心地よい。
「気持ち悪い?」
「ううん」
水飲みなとペットボトルを渡される。
起き上がって水を飲んでゆっくり記憶をたどっていく。
服は、ジャージのままだ。
「何であそこにいたの?」
「あー…話があって」
ビクッと体が強張った。
そんなの、ノーガードで聞けない。
「話…?わたしに?」
聞きたくない。
でも、聞いても、気持ちは変わらないことも、わかってしまった。
「…や、いい。調子悪そうだし。明日、体調よくなったら時間ちょうだい」
和也くんの声が落とされる。
ポンポンと、わたしの頭を撫でる手が、優しいのは気のせいだろうか。
「…和也くん、ずるい」
わたしは、その手を両手で掴んだ。
「わたしが、諦められないのが、わかってるくせに。」
「ん?」
「わたしが何言っても離れられないってわかってるから、いつでもいいんでしょ」
「え、そうなる?」
「そういうことでしょ?だって妹でいてって話でしょ?わかってるんだから、大丈夫、ちゃんと今まで通り、」
「ストップ」
わたしが先回りして、和也くんの言いたいことを先回りしようとしたら、和也くんの左手がわたしの口を止めた。
わたしが掴んでいた右手で、わたしの右手を握る。
「待って」
「なに…」
「杏花が好きって、話しにきた」
「ん?」
聞き間違い?だって、そんなわけ。
「杏花、好きだよ」
和也くんがわたしを見つめる。
わたしは、握られていた右手を引き抜いて、和也くんから距離を取った。
「え、だって、和也くんがわたしのこと好きなわけない」
とん、と、背中が壁にぶつかる。
枕元に置いてあったテディベアのカズくんの後ろに隠れるように抱きしめる。
「だ、だいじょぶ!だから!そんなこと言わなくても、ちゃんと、これからも妹するから」
カズくんに守ってもらうみたいに、顔をカズくんで隠す。
「それじゃ困る」
そっと両の手首が掴まれて、視界からふわふわの毛が離れていく。
「たくさん傷つけてごめん。杏花がそう言うの全部オレのせいだけど」
「う」
「付き合って欲しい。妹じゃなくて、女の子として傍にいて」
和也くんにこんな風に、みつめられたことなんて、ない。
いつも隣でわたしの話を聞きながら、わたしの方はあんまり見ないで飄々としているのに。
わたしは顔が赤くなるのと、展開についていけないので、逃げたくなった。
「や、やだよ!大勢いる彼女の中のひとりとか無理だから!」
「わかってるよ。杏花に告白されてから誰も会ってないし、全部切って連絡先も消した」
「へ!?」
「クラスの奴とか就職する会社の人とか、女の人の連絡先は多少入ってるけどそれは許して。“カノジョ”だった人は誰も残ってないから」
これ以上逃げようにも、和也くんの腕はびくともしなくて、どうしていいかわからなくなる。