推しがキャラデザのままなんてきいてない
ゲーム世界と現実世界ではビジュアルが違うから違和感があるのでは?という疑問を作品にしました。
トラックに轢かれそうになった時確かに私は、
「今流行りの異世界転生でもしたらいいのに。」そう思った。
でもまさか、ゲームのキャラデザのままなんて思わないじゃん…。
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私はオリーブ・モンテスト。
昨夜熱を出したときに前世の記憶とやらを思い出した。
この世界は前世で大好きだったゲームの世界だ。でも私はメインキャラではなくヒロインの友人であるモンテスト子爵令嬢の次女というなんとも微妙なキャラだ。ゲーム中でも、お姉様とヒロインの会話に出てくる程度だ。
熱を出した私を心配したお父様やお母様がお見舞いに来てくれた時は何とも思わなかった。
自分の家族を改めて前世の私目線で見るとゲームキャラの両親なだけあって整った顔をしているなぁくらい。
ところがお姉様がいらしたときなんて___
「オリーブ?目を覚ましているかしら?調子はどう?」
控えめなノックと共に部屋を覗き込んできたお姉様を見て私は驚愕してしまった。
「ひっ…!え、な、なに…。」
「オリーブ?…どうしたの!?顔が真っ青じゃない!?」
そう。お姉様の顔がゲームのキャラクターイラストと全く同じなのだ。
考えてもみてほしい。
キャラクターの着ぐるみショーを。まさしくあれと同じだ。
2次元だからいいけれど、3次元だととても違和感があると思う。少し顔が怖いななんて思ったりする人もいると思う。
さすがに着ぐるみの様に大きかったり布でできているわけではない。でもゲームは2Dだったのだ。
それが3Dになるだけでも違和感なのに、自分の姉がまさにその状態なのだ。
正直に言おう。めちゃくちゃ怖い。
私は意識を飛ばした
___翌朝。
目が覚めた私は昨日のことを整理する。
もしかして、ゲームに出てたキャラはキャラデザのままだったりするの!?
私が好きだった乙女ゲームや小説はたしかに創作だし、2次元だから違和感はなかったけどリアルに起きるとこんなことになるなんて…。
いくら、衝撃だからってお姉さまの顔を見て失神するなんて失礼よね。謝りに行かなきゃ。
お姉様の部屋の前で深呼吸をする。
(大丈夫。お姉さまだもの。今まで一緒に暮らしていたのよ。見た目が変わったからってなんでもないわ。)
__コンコン
「お姉様?オリーブです。よろしいでしょうか。」
「どうぞ、入ってきて。」
(ひぇ…。)
「オリーブ?大丈夫?まだ顔色が悪いわよ。」
お姉様今日も昨日と変わらずキャラデザのままだ。正直まだ怖いが
「いえ。もう熱も下がりました。昨日は御心配をお掛けしましたわ。」
家族なのだ。恐怖よりこれまでの記憶でなんとかなった。
「それなら良いのだけれど。今日はマンテン男爵家のお茶会にオリーブも出席予定よね?体調が優れないようならお母様に相談して欠席にする?」
マンテン男爵家って…ヒロインのお宅!?ゲーム内で私は出てこなかったからてっきり交友はないと思っていたけれど、そうよね、姉が友人なら私も招かれていてもおかしくないのかしら。
それにヒロインのお宅なら推しに会える!?
「いいえ!もう出席で連絡をしておりますし、伺いますわ!」
「そう?あまり無理をしてはなりませんからね。」
「もちろんです!」
私の前世での推しはヒロインの義理の弟であるレイナード様だ。マンテン男爵家には女児1人しかおらず跡継ぎとしてレイナード様を養子に迎えたという設定で、とても聡明なメガネの似合う紳士。
「そういえば、昨日あなたのお見舞いにアントニー様がいらしていたわよ。今日のお茶会にもいらっしゃるようだからお会いしたらお礼を。」
「アントニーが?わかったわ。」
アントニーはサンライナ伯爵の長男で私の幼馴染だ。お互いにまだ婚約者はいないため、いまでも交友がある。たしかゲームには出てこないが、ゲームと違ってこの世ではレイナード様と友人。ずるいわ。
そんなことを考えていたから私はすっかりと重要なことを忘れていた。
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「ようこそいらっしゃいました。」
ヒロインの家族は全員ゲーム内に登場するということを。
(どうしよう。ヒロインのキャサリン様もレイナード様もキャラデザのまま…!キャサリン様はとても美しいしレイナード様もとてもイケメンだけど。…それ以上にめちゃくちゃ怖い!)
「オリーブ様?顔色が悪いようですがいかがなさいましたの?」
「申し訳ございません。妹は病み上がりでまだ本調子ではないんですの。」
「まぁ、何かあればいつでもおっしゃってくださいね。」
「ありがとうございます。」
まさか推しをかっこいいではなく少し怖いと思う日がくるなんて。
今日はお茶会とはいっても、親しい友人のみを招待したもので人数もあまり多くない。多くはないが、さすがヒロインというだけあってまわりはほとんどゲームキャラだ。
離れたところで眺める分には良いが、話しかけられでもしたらとてもじゃないが喜べない。
「オリーブ、お前がレイナードをうっとりした目で見ていないなんて相当体調が優れないんじゃないか?」
にやにやとしながらアントニーが話しかけてくる。
「だ、大丈夫よ!」
そう。私は前世を思い出す前からレイナード様に憧れを抱いており、幼馴染のアントニーにはいつもそのことでからかわれていた。
「まあ、冗談だけどさ。お前が元気そうじゃないと俺も気が気じゃないんだよ。」
「え?」
後半が小さな声で聞こえなかった。
「アントニー、オリーブ嬢。相変わらず仲が良いんだね。」
「…っ!」
「あぁ、レイナード。オリーブの調子がまだあまりよくないみたいなんだ。」
「それは、大丈夫ですか?」
「え、えぇ。少し風にあたっていれば大丈夫ですわ。少し席を外しますね。」
「それなら、ガゼボに案内しますよ。」
「いえいえ!大丈夫です!アントニー、お願いできるかしら?」
「?あぁ。レイナード、すこし外すぞ。」
そういって、できるだけレイナード様の顔を見ないようにアントニーとそっと席を外す。話しかけられたときに悲鳴をあげなかった自分をほめたい。
つい数日前までは普通に生活していたはずだ。
だけど、前世を思い出してからはどうしてもゲームの登場人物はキャラデザのままに見えてしまう。
お姉様のことだってまだ少し違和感があるのに。
そんなことを考えていると
「オリーブ、本当に大丈夫か?」
「アントニー…。あなたといると安心するわ。ずっとあなただけを見ていたいくらい。」
それなら違和感を感じずにいられるのに。
アントニーの足が止まる。
「どうしたの?」
アントニーをみると真っ赤な顔をしてこちらを凝視していた。
…私いま、まずいことを言わなかった!?
「アン「俺も、お前と一緒だと安心する。レイナードなんかじゃなくて、ずっと俺のことを見ていてくれたらどれだけいいかってずっと思っていたんだ。」
「えっ…。」
今度は私が赤面する番だった。
「お前…いや、オリーブ。今はまだ恋愛感情じゃなくてもいい。少しずつでいいから俺のことを意識してくれよ。」
アントニーの真剣な言葉に私はうなずくことしかできなかった。
「ありがとう。オリーブ。」
そういって私の髪を撫でるアントニーはとてもやさしい目をしていた。
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それからアントニーへの恋心を抱くのはもうあと僅か__




