公園デート
公園デート
彼女は言わずと知れた格闘少女だ、女子の部ですでに5年も連続して金メダルを取っている。
そしてそのキャラを生かしてモデルやTVへの出演も増えている。
普通武術、特に格闘技を始めるとガニ股になりやすいのだが、彼女の母上は茶道の家元のため礼儀作法にも厳しい。
歩く姿を見てもガニ股どころかどう見てもモデルの足運びにしか見えない。
しかも足の長さは俺と大して変わらないときている。(足が長い)
「そろそろ出ましょう」
「おあいそお願いします」
料金を電子マネーで支払いすし店を出る、だが俺はこの時食事以降のデートプランをぜんぜん考えていなかった。
まあここは若者の町吉城寺なので、そんなときには近くにある公園が重宝するのだが。
まったく、こんなことなら今日のデートプランまで考えておいてくれればいいのにと爺さんに一言言いたくなる。
「ご馳走様でした」
「いいえどういたしまして」
「次は何処にいくの?」
「次は・・・公園でも散歩しようかなと・・」
「じゃあ 手を繋ぎましょう」
なんてことだ、憧れのマドンナと手を繋ぐなんて、小学校では高嶺の花で遠くから眺めることしか出来なかった女性と、手を繋ぐなんて。
この時だけは爺さんに賛辞を送ろうと心から思った、グッジョブ!結局爺さんには感謝するしかない、あ~ばら色の人生最高!
「手を繋ぐのいや?」
「いいえお嬢様、私くしでよろしければお手を・・」方膝付いて両手で彼女の手を取る。
「ふふふっ、おかし~」
その手は直ぐに俺の腕に絡みつき内側から握り返してくる、すると腕にやわらかいふくらみが押し付けられ、いっきに俺の心臓は早鐘のごとく鳴り響く。
初めての おふっ・・・
そして風に揺れる髪からふんわり、花の香りが俺の鼻を刺激する。
やばい、俺の息子までスタンバイしてきた・・・
「こうちゃん顔赤いよ」
「みどりちゃんこそ」
駅前の通りを抜け井の頭線の駅を横目に住宅街を通りそして緑豊かな公園へと足を運ぶ。
そこには昼食後の休み時間を過ごす人たちがそこそこいて、中には俺達のようなカップルも数組訪れていた。
公園内を少し歩いたところにベンチがあり、都合よく前の家族連れが立ち去ったのでそこに座ることにした。
「座ろう」
「うん」
デイパックから未使用のタオルを一枚出すとイスに敷き、彼女に座るよう促した。
手を繋ぎなおしそのまま目の前に広がる池を何分見ていただろう。
握る手にはうっすらと汗が滲む、そして徐々に体を寄せて行くといつの間にかぴったりとくっつく腕と腕、高鳴る鼓動・・・・始めての・・・キ・・・
【ピンポロンピンポロン】
スマホから無常な音が響く。
デイパックから取り出すとその表面には見慣れない文字が、そして電話に出てみるとなにやら英語でまくし立てる。
「ヘイ どういうこと?私がいない間にずるいわ」
そう言いながら目の前には少し怒り顔の金髪美女が現われた。
「ごめんなさいマーサ、でもあなたは大学でも会えるでしょ」
「そう言う問題じゃないわグリー、約束したはずよ抜け駆けはナッシング、同等にコウと付き合うって」
「そうね、私が悪かったわ」
そう言うとミドリとコウの反対側に座り腕をコウに巻きつけてくる。
このシュチエーションはまずい、先ほどまで高鳴っていた心臓の鼓動が今度は一気に凍りつく。
確かに両腕はけしからんマシュマロに囲まれ、目の前を通りすがる子どもには「修羅場ってなーに?」などと親に教え込まれ、そそくさと行き過ぎる始末。
爺さん・・・、俺にどうしろと?
俺を挟んで美女2人はまたしてもなにやら相談をしている、マーサことマーサ・オースティンは同じ大学に通う学生で現在留学中、まだ19歳と言うのにアメリカの大学院を卒業しさらに留学をして東大で勉強中だ。
175センチB90W59H88身長はミドリと同じだが、ボリュームは大違い。
その胸のふくらみは凶器に近い、誰もが振り向く金髪美女。
その二人が両側にいるのだ、そしてその言葉を聞いているとまるで俺を取り合っているかのよう。
数分そんな状況を静観していると、2人の間で次の取り決めが決定したようだ。
(池の中って涼しいのかな、とか考えてしまう)
一つ、デートはハグとキスまでそれ以上は2人同時にすること。(コウに順番を決めてもらう)
一つ、1週間を二つに分けデートする日を決める、これは先日までも決めており今回さらに細かく日程が振り分けされた。
一つ、お互いにそれ以上の事をした場合、負けを認めること。(セックスをコウに強要しない)
一つ、抜け駆けした場合はペナルティとしてHの順番を譲ること。
一つ、尚この取り決めは今年末までとする。(翌年は又新たに決めなおす)
そして今日は2時からはマーサとの時間だと言う、そして現在時は2時10分。
日曜を二つに分け4時間ずつで午前午後を分けシェアするという。
そしてミドリの言い分は俺が約束の時間に遅れた為デートプランが40分ずれ込んだからという、悪者は俺だという話。(すいません俺が悪いんです、いや爺さんのせいか)
そして後30分の延長を話し合った、さらにネクストステップであるキス&ハグ。
2人共に今までは軽いキスとハグはしているようで、その先であるハグしたままのハードキスをこれからのデートに含めると言う。
「いいわ、じゃあ後30分譲ってあげる」
そう言うとマーサは立ち上がり、又後でねと言ってベンチから去って行った。
一時の喧騒が去りいや危機が去り、隣に座る美女に目を向けるといまさらになって考えてみる。
後30分何をしろと・・・・
考えてみればすぐにわかる、考えがアメリカンなマーサならすぐ実行するだろう。
そう、ハグ&キス 翠は急に顔を赤くし手で自分の顔を仰いでいる。
いやいやその前にもっとすごい話をしていただろう、Hの順番とか。
俺のことは放っておいて、すごいことを話していたのにいまさらハグ&キスで躊躇するとか。
まあ見ていればわかる、彼女は見栄っ張りだということはすでに承知している。
だから実際にその状況になればこうなることぐらい・・・
「いい天気だね・・」
「そ そう ね」
そろりそろりと彼女の手が俺の膝の上に載せられ、体重を少し載せるとこちらを向いて顔を近づける。
翠
(も~~するしかないじゃなーーい)意を決する
そしてコウに抱き着く、まずはハグ…その腕を俺の首に回しひきつける。
そしてあの柔らかい感触が俺の胸に押し付けられると、目をつむり唇を上に向ける。
(ええ~いままよ・・・・・くちゅ)
俺も覚悟を決めて彼女の唇に俺の唇を近づけ抱きしめる。
お互いの唇が重なり俺も目をつむる、そのまま何分経ったのだろう。
ゆっくりと目を開けるとまだ目をつむったままの翠とその向こうになぜかマーサが仁王立ちしているのが見えた。
その顔は鬼のよう、なぜ?・・・
俺はもう一度目をつむり翠の唇を感触を確かめる、昔 憧れたマドンナとの初キッス。
夢のような時間だが、さっきのマーサの顔がちらつき喜びの感情が少しずつ冷めていく。
唇を離すとすぐに彼女の手は離れ何事もなかったように隣に座りなおす。
先ほど目の前で見ていたマーサの姿はすでになかった、あれは何だったのだろう・・・
「そろそろ行こうか・・」
「うん」
手をつなぎタオルを片付け、駅への道を歩き始めると少し歩いたところでマーサが待っていた。
時計を見ると確かにあれから30分、あっという間だったがそれでもやった感だけはしっかり残っている。
「仕方ないわね・・じゃあコウちゃんまたね」
そういうと翠はまたハグをして俺のほっぺたにキスをした。
いつの間にかコウ君からコウちゃんへとステップアップ、彼女の中で何が変わったのかは俺にもわからなかったが、少なくとも何かが変わったのはわかった。
「ちゅっ」
そして少し歩き後ろを振り向くと小さく手を振った。
しかもまっ赤な顔をして・・
(ズキューン)
(か 可愛すぎる・・・)
マーサは翠とすれ違い様にフンッとばかりに顔をそむけるが、次の瞬間満面の笑みを俺に向けて駆け寄ってきた。
「コウおまたせ」
そういうと俺の腕を取り手を絡ませてくる。
翠の感触よりさらに柔らかいマシュマロが俺の腕に押し付けられた。