気功術等級
気功術等級
気功術協会の理事や上級講師達はすでに若返りの魔法で最低50歳は若く見せている、気功術の等級が8級になった時点に少し差はあるが、ほとんどの上級協会員は30代にしか見えない。
コウのおばあちゃんも現在139歳だが30代後半にしか見えないし、曾ばあちゃんに至ってはすでに300歳を超えているのに40代にしか見えない。
この時代の最高齢は532歳だと聞いている、しかも寿命ではなく行方不明と言うことだ。
但しこの数字は気功術協会内での数字で日本国内で一般的に記憶されているのは100歳低い415歳が最高齢だとされている。
寿命が延びたのは練気法のおかげであり現在の人口は増加傾向だが、過去にウィルスやら放射能やらで自然が破壊されたせいで病気になる人が増えた時期もあった。
現在は練気法のおかげで減り続けていた人口の低下に歯止めをかけることが出来ている、そのおかげか今の人口は増加傾向だ。
練気法はこの時代中学校から授業に取り入れられている、初めは成績に必要ない項目は時間の無駄だとされていたのだが練気法で病にかかる子供が減ることを知り、お偉いさんの一声で教育内容に取り入れられた。
もちろん俺みたいに親がすでに教えている場合もあるので西暦2800年子供達の練気法習得率はかなり高い。
「そろそろ出ない?」
「うん 外で待っててね」
俺は首を縦に振りジャグジーから上がった。
俺が先に出るとそのあとから彼女が女子用のシャワールームへ去っていく、一度振り返ろうかとも思ったが、その後が怖かったので振り返らずにドアを閉めた。
おれは軽くシャワーを浴びてそのまま脱衣所へ行き服を着る、久しぶりに見た生の女子それも初恋の人の水着姿を見て脱衣所で少し呆けてしまったのは仕方がない。
着替えてからドライヤーを使い頭を乾かしながら鏡の中の自分を見る、そこにはややにやけた顔の男子が鏡に映っていた。
それから少しして外に出るとすでに彼女が外で待っていた。
「それじゃ調べに行こう」
等級検査の装置は1階の事務所にあり気功術協会の所属ランクとも連結しているため、セルフ設定とはいかない。
必ず係りの講師に頼まなければならないので、混んでいるときは少々待つ可能性もある。
一度2階のロッカーへ行き荷物を取り出すとその足で1階へと階段を降りる。
1階の自動ドアから中に入ると俺達の前に1人が等級検査をしている最中だった。
「はい田沼さんは5級の中ですね、そろそろ気功癒術の訓練も始められますが、次回はそちらのカリキュラムも受講なさりますか?」
「あ・はいお願いします」
気功術協会の料金は月謝制+各種術式講習による2段方式だが1級から4級までは全て無料になっている。
なんでも有料にすると練気法が広まりにくいのと、そのせいで病気になる人が増えてしまうのは本末転倒だという創始者の考えからだった。
練気法で気功術を行い体が丈夫になれば仕事も生活もうまく行き、それだけで収入が増え5級を超えれば気功癒術を手に入れ医療系の補助もできる為、就職の確率がさらに上がるのだ。
5級からは月謝が月1000円かかるようになっている、そして各種魔法はそこから1000円単位で受講する形だ。
もちろん8級の若返りの魔法は3つの魔法を覚えないといけないので3000円の受講料になる。まあ三千円で通常120歳が最高齢なのが400歳まで生きられるのだ、しかも外見が若いままで。
今までにこの金額を渋った者はいない、気功術協会の所属と等級を出せばすぐ仕事が見つかることも受講料を拒否する人がいない要因でもある。
ちなみにコウは曾爺さんのおかげか吉城寺支部の上級講師にもなっているのですでに教える方で若干のアルバイト料が入ることもある。
今回翠に若返りの魔法を教えるのもコウの仕事になる予定だ。
どうやら前の人が終わったらしい。
「それではまた来週おいでください、お待ちしています」
そういわれた受講生は対応してくれた講師に頭を下げると、こぶしを握り「よしっ」と小さな声を発しながらドアから出ていく。
「あらコウ君来てたんだ」
「はい」
「あら隅に置けないわね、デート?デートよね」
「荒木さんわざと大きな声で言わないでくださいよ」
大きな声でばらされたため奥にいる講師数人の顔がにやけ顔に変わる。
(ヒューヒュー)
等級検査機のまえで操作しているのは気功術協会吉城寺支部の講師である荒木桃子独身である。
「こんにちは彼女の早坂翠です」
翠ちゃんが先手を打った、そう告げてしまえばその後の言葉で質問をするのは野暮という物であるが、女子の興味はそのぐらいでは収まらない。
「ふ~~ん」
「等級検査お願いできますか?」
「はい、ではこちらに会員証を提示していただきますね」(少し慌てる)
翠ちゃんはさらに言葉を告げることで荒木女史の2の句を遮る、荒木女史は仕方なく検査機の設定を始めるが目は翠ちゃんを舐め回すように品定めをしている。
荒木桃子はここ吉城寺支部で働く上級講師であり、コウとは同僚みたいなものだがコウは現在大学にも在学中な為アルバイトと正社員の違いがある。
荒木桃子には現在何人かのボーイフレンドはいるが彼氏と言うほどの異性は居ない、気功術協会には良い男が多すぎるのだ、会員もふくめて。
コウもイケメンだが練気法を学び気功術を手に入れると皆体は太らず筋肉は程よく鍛えられ。
太っている人はほぼいなくなる、女子も同じだ。
さらに癒術まで手に入れると男子は優しくなるらしい、後は好みの問題だが荒木女史はどちらかと言うと八方美人の部類に入る。
現在は協会支部の顔としての側面もあり、男性会員にはかなり受けがいい。
要するにモテモテなのだが本人は仕事と割り切っていて、個人的に会うようなことは無いらしい。
もちろん若返りの魔法は取得済みなので1度は自分にも使用しているはずだ。
外見はややぽっちゃりに見えるがメリハリのある素晴らしい体だと書いておこうちなみに身長は165センチ88・62・87、なかなかのナイスバディだ。
一度曽じいちゃんが憑依しているときに乱取りをしたらしくボディの概算は確認済だ、うらやましいまったくいらないことをしてくれる、俺にはその時の細かい記憶は無い為もう一度手合わせしてみたい。
少しして機械の初期設定が終わり翠は所定の位置へと手を置く、計測中は動かないようにするだけなので後はしばし待つ。
数分して計測値を確かめながら荒木女史は告げた。
「すごいわね1週間で上がるなんてMPも800以上あるからあの魔法も覚えられるわよ」
「すいません荒木さんその魔法は俺がレクチャーするので料金だけ納めますね」
「だめよちゃんと払うわよ、なんかずるしてるみたいじゃない・・」
「解ったじゅあそうしよう」
計測したデータはタブレットかスマホに転送できるため、紙に印刷することは無い。
この時代は紙も貴重な資源となっており、ほとんどがデジタルデータにて保管される。
「はい毎度ありがとうございます、いいなー彼氏に教えてもらうなんて」
『モモちゃん次の魔法は俺が教えてあげようか』
『え~副支部長、奥さんに了解取ってからじゃないと又追い出されますよ~』
(あはははは)
その後翠と変わり、俺も調べてもらった。
結果だがメールに書いてあった計算より1つ上の16級だと記録されて少し驚かれたが、まあ大会で優勝しているのだから妥当なことだと皆納得していた。
但しMPの数値はあり得ないほど大きかった、なんと3000MP超えており。
「コウちゃんすごいね、上級魔法も全部使えそう」
「そうなんですか?」
「そうなんですよ」
「コウちゃんもう行こうよ」
ミドリが受付のモモと話しているのが気に入らないのか早く行こうとせかす。
「じゃあまた」
『おうまたな』
「またね~」
気功術協会吉城寺支部を出るとすでに1時を回っており、結局吉城寺で すし店を探すことにした。
「コウは卒業してそのあとは?」
「一応気功術式記憶装置の開発をするから大学院と研究所両方に所属すると思う」
「そうなんだ~」
「まあ研究所といってもそこで働くというわけじゃなく、そこにデータを積み上げる感じかな」
「そうよね開発者だものね」
「大学院にも通うから当分は大変かもね」
この時点ですでにBIWの骨格は出来上がっており、大きさや機械の初期設定は小型のパソコン大の大きさで収まるようだ。
その器械から10本の端子を頭の10か所につなぎ、気功術の内気功を使い電気データを生体データに変換して情報を脳に移植する。
それには脳の一部をパソコンのハードディスクのように使うための予備魔法が必要となる。
現段階ではまだ高位の魔法で脳を拡張しないといけないが。
現在その部分を機械化する研究を進めている、機械と生体の同期を進めるにはどちらにも変換機能が必要になる。
そのための術式開発であり機械の開発でもある。
ちなみに曾爺さんはそのヒントまでタブレットに書き記してあった。
(機密事項なのにまったく・・)
歩きながらそんな話をしていると、協会事務所を出てすぐに予約を入れたすし店についた。
「いらしゃい!」
「予約を入れた三簾です」
「はい こちらへどうぞ」
若者の町でありながらここのすし店は結構混んでいた、まあ行列まではできていなかったが。
さっき予約を入れといて正解だった、俺たちが席に着いてすぐに他の客が訪れたが満席のためすごすごと帰っていった。
「なんか混んでるね」
「予約入れて正解だったよ」
「すいませ~ん大トロ3つ」
「おいおいってじゃあ俺も」
その後大トロを2人で10貫さらにサーモンそして貝類を頼み、周りの度肝を抜いてお腹を満たして行った。
ちなみに大トロ1貫2500円昼の食事に3万円を超えるとは、もちろんカードでお支払い。
今の俺の懐には2億あるのでなんてことはないのだが、俺の頭の中身は先日まで高校生だったため、金銭感覚がおかしくなりそうだ。
「勢いで頼んじゃったけど、大丈夫?」
「だいじょぶだいじょぶ約束に遅れたのは僕のせいだからね」
「コウじゃなきゃ許してあげない状況だったんだから」
「ああわかってる、ファンにしつこく写真を迫られてたのは、早く来なかった僕のせいだ」