素晴らしきジャグジー
素晴らしきジャグジー
青畳は他の受講者が使用していたためリングを使用することにした。
俺と翠がリング場へとへと上がっていく。
「じゃあ行くわよ!」
カーン!
さすが経験者だフェイントを混ぜながらきわどい場所へと正拳が入り込む、肘と拳で受け腕でかわし。相手のリズムを読んで躱す、攻守入れ替えながらも2分が過ぎ彼女の回し蹴りを躱すとこちらからも一発。
パンッ
その瞬間彼女の体が空に浮きロープ際まで吹き飛んだ。
「危ない!」
俺はいつの間にか彼女の頭と体を抱いてロープを背にしていた、リング上には俺が踏み込んだ足の部分からモヤっと煙が立っていた。
「大丈夫か?」
「ヘッ何?今の・・」
俺は彼女の前に回り体が無事か確かめる。
「何よそんなに触りたいの?!」
「いや・そういうわけじゃないよ、ケガでもしたら大変だと思ったから・・」
彼女もどうやら気付いたらしく自分の腕を動かすと「イッ」少し顔をしかめた。
「ちょっとそのまま」
俺は気功癒術を使い彼女の腕を治して行く。
「どう?まだ痛い?」
「ありがとう、もう大丈夫みたい」
「早坂さんは気功術は何級?」
「この間見てもらったら7級だった、すごいでしょ」
「じゃあ気功治療法は知っているよね」
「知っているけどあまり得意じゃないのよね」
「気功防御術の方は常に使用しているんでしょ?」
「うんでも試合中に夢中になるといつの間にか解けてきちゃうのよね」
「気功防御は寝るときでも続けないとだめだよ」
「寝るときも?寝てる時なんか普通解けちゃうでしょ、寝ながらなんて無理よ」
「それがそうでもないんだよね」
「じゃあ最初からやってみようか」
そういうとリング上で練気法を2人で始める、最初は手をおなかに当てて気を集め体全体にその気を回すようにそして体を覆うように気を纏う。
「早坂さん、それ出しすぎ」
「え~こうじゃないの?」
「まとうのは同じだけど、出しすぎるとすぐ切れちゃうんだよ。もっと抑えて薄くなだらかに」
「こんな感じかな~?」
「そうそう、そのまま3分」
今までの彼女は気を出せるだけ出してしまい寝た時点で気力が枯渇してしまっていたらしい。
当然疲れてすぐ寝られるため寝つきは良くなるが、普段の気功防御も燃費が悪くなり試合でも長引くと疲れやすく切れやすくなる。
「はい3分」
「ふ~・・もしかして私張り切りすぎて、から回ってたの?」
「そんな感じかな、短期的な試合ならそれでも良いけど時間が長引くと疲れやすくなる。気功術の訓練はただ力任せに進めるだけではダメなんだ、継続して力を出し続けることも大事なんだよね」
「ふ~ん、ありがとう」
「じゃあ後は乱取りしてストレッチで終了で良いかな?」
「うん、そうしよう」
練気法で気を纏い気功防御を体全体に展開しリング上で乱取り、お互いに正拳を胸や腹に軽く当てていく。そのたびにシュバッ・シュバッと音がする、それを10セットずつお互いに攻守を交互に仕合うと最後に礼をして終えることにした。
『オスッ』
リングから降りると青畳が開いているので2人そろって今度はストレッチを始める。
「ふ~・・早坂さん体やわらかいね」
「コウくん呼び捨てていいよ、みどりかみーちゃんって呼んでよ」
「じゃあみどりちゃんで」
翠は少し不貞腐れて「もう」と言うと仕方ないとでも言うような顔をした。
俺としては翠なんて呼び捨てするのは恥ずかしいしミーちゃんなんて呼ぶのはもっと無理だった。
練習が終わりグローブとヘッドギアを所定の場所に返却し荷物を持って5階のシャワールームへと向かう、2人の体からは汗のにおいがしてなんだか高校の部活を思い出す。
高校時代俺は都立の学校へ通っていたその学校では柔道部に入っていたのでこの道着もその頃からのものだ。
高校での成績は都大会個人で10位、団体は5位が最高位だった、その頃には身長も177センチ体重67kと細マッチョではあったが柔道と言う選択が当時は残念なスポーツだったのか、女子にモテた覚えは無かった。
それが今は女子と2人でいい汗をかいているのだから世の中は何があるかわからない。
5階のシャワールームとサウナは男女別々になっているがジャグジーと水風呂は男女一緒の為この施設内は水着着用が義務付けられている、その代わりジャグジーはかなり大きくそれだけで通ってくる人もいる、もちろん協会員以外は別料金。
ちなみにけしからん人が使用した場合の女子の防御方法は必然的に練気法による気功防御術と気功強化術、もちろんかなりできる女子しかこの施設は使わないので、不埒な輩は今のところ出ていない。
「ふ~体を動かした後のシャワーは気持ちいい」
そういいながら頭の中は別なことを考えている、そう俺に憑依した曾爺ちゃんがどこまで早坂さんと進めているのかわからないが、俺にとっては彼女の水着姿を見るのは初めてである。
まあジャグジーに入らないで先に上がる可能性もあるのでそんなに期待はしないでおくが、心臓はかなりドクドクとかなりの速さで脈打っている。
体を洗い終わりサウナへと向かう、2年前はサウナに入ると10分2セットがいつものローテーションだったのでそこは変わらずサウナの中では少し悶々としながらもこの先のことを考えていた。
「ジャグジーで水着ジャグジーで水着」
「いや、そうじゃないそのあとどうするかの方が問題だ」
ちなみにデートのはずなのだがこの計画も何も俺は知らされていなかったわけで、デートコースもレストランの予約も何もしていない。
まあ夕食は高級シースー一択なのだがそれまでにはかなり時間がある、わざわざネズミーランドやオーシャンパラダイスまで行く時間は無いので駅近デートで決まりなのだが・・・
そんなことを考えているといつの間にか2回目の10分が過ぎて、汗を流すため一度シャワーを浴びる。
頭の上にのせておいた水着を手に取り準備を済ませ、さっそうとジャグジーの扉を開けるとそこには肩までジャグジーに浸かっている早坂さんがいた。
「コウ君遅いよ」
「だっておれサウナ入ってきたし」
「その体でなんでサウナなのよ?」
「いつものルーティーンだから」
「ふーん・・」
「翠ちゃんはサウナ使わないの?」
「前に入りすぎて倒れたことがあるのよね、まあ今はサウナに入る必要もないし」
と言いながらジャグジーからスッと立ち上がり惜しげもなく上半身をこちらへ見せてくる。
見事にひきしまったそのボディ、予想はしていたが彼女いない歴20年いや18年か、まぶしかった。
肩の紐から予想はしていたが真っ赤なビキニである、体育会系美女であるからして無駄な脂肪は見られないが程よい筋肉となだらかな曲線から出るところはしっかりと出ている事だけは見て取れる。
少しほほを赤らめて腰に手を当ててどうだとばかりに胸を張るのを俺はしばし凝視してしまった。
「そ・そんなに見ないでよ」
ぶるっぶるっと俺は頭を振るといつの間にか言葉が出ていた。
「綺麗だ」
今まで言ったことがない言葉が不用意に俺の口から飛び出した。
次の瞬間彼女は後ろを向くとジャグジーの中に顔を沈めて言った。
「ぶわっか~~」
身長175センチスリーサイズは84・57・85体重は伏せておこう。
この時代の女子の中では背は高い方だ、髪は黒く染めたことは無いらしい、言葉を話さず動きさえしなければ大和なでしこの出来上がりなのだが。少なくとも昔はそうだった今でも外見だけはそのままと言える、だがここまで変化するとは年月とは恐ろしい。
そういえば俺は早坂とチューを済ませていると曾じいちゃんはメールに書いていたのだが、恐ろしくて今経験したいとは思えない。
まあ女子の水着姿を見ることができたって言うことだけで赤飯ものなのだから。
彼女の背後から俺もジャグジーに入っていく。
「こっち見ないでよね」
「いや見ないでって、後ろ向きに入れって事?」
「入ってから後ろを向けばいいじゃない」
ああそうですね、って感心している場合じゃない。
「この後等級検査していくよね?」
「うん多分この間よりはよくなっていると思うけど」
「8級になっていたら若返りの魔法も使えるようになるね」
「若返りって何のこと?」
「みどりちゃん知らなかったの?」
「聞いてないよ、コウ君も強くなれるとしか教えてくれなかったじゃん」
(おれそんなこと言ったんだ・・・)
「じゃあ今教えておくね、練気法を始めて等級を8級にすると気功術の上にある魔術の使用が可能になるって知ってるよね」
「そう言えば、そんなこと講師の人も言ってたけど。魔法って冗談でしょ」
「いやそもそも気功術で防御や身体強化をすること自体すでに魔法の初期段階なんだけど・・」
翠はいつの間にかこちらを向き指を顎下に当て。
「ふ~ん」
「まあ魔法と言っても、火を出したり水を出したりはできないらしいけど、自分の体を強くすることができるって事は自分の体を若くしたり老化の速さを遅くしたりもできることに繋がるよね」
「確かにそうね・・」
「それで何故8級からって所だけど、その若返りの魔法を使うには気の力が相当必要なんだよね」
「ふ~ん」
「今はまだ僕らは若いから必要ないかもしれないけど、歳をとれば老化が進み外見の老化は止められないはずだよね。でも練気法を手に入れその上にある魔素の研究で得た魔法の発明で気功術師達がその流れを止めることに成功したんだ。協会の幹部を見てるからわかるでしょみんな若いって、歳を聞いたら100歳超えていたりするのに」
「確かにパンフにあった理事長の歳は30代にしか見えなかったけど」
「あの人もう160歳だよ」
「うそっ!」