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そして母は

そして母は


そしてこのイベント最後にコウとデートするのはコウの母である花、勿論お化け役のし甲斐の無い事この上ない。

収支コウと話ているだけで怖がるどころか全て目視してから無視という、まあ夜間の病院で当直を嬉々としてこなすのだから男子が扮するお化けなど何の影響も受けないのだ。

だが元々こういう性格かというとそうでもない、昔は怖い物は怖かったのだがあるとき彼女は恐怖が一変した。

それはボランティアで訪れたアフリカの紛争地域へ赴いてから、何も無い過疎地で医療を行なう気功術協会所属の看護師は日本からアフリカ各地にかなりの数がボランティアとして訪れていた。

彼女は看護師として訪れたが、その時の募集要項には気功術8級以上と言うランクの下限が設定されていた。

それは気功医療を出来るだけでなく流れ弾や事故などからも自らの命を守る事ができる事を指す。

気功術8級はその指針となるボーダーラインでも有るのだ。

それでもアフリカの紛争地域で命を失う気功術協会の看護師は毎年数人出ていた。

そんな過酷で危険な場所で生き抜き、自らを盾に現地の子どもを守る事もしばしば。

そんな危険と比べればお化けなど見ても死ぬわけじゃないし、嬉々として夜勤をこなす彼女にとって肝試しのお化けなど恐るるに足らずという事。


母の話によるとボランティアで訪れた地、そこは地獄と天国が毎日入れ替わる日々だったという、天国とは言うが要するに一日生きて朝を向かえられる事が出来れば、それこそが天国だったという話だ。

そんな中同じく気功術協会のエージェントとして派遣された漣と意気投合、もし生き残ったら付き合おうと約束したらしい。

どこかの映画じゃないが、そう言う極限状態で生まれた恋は成就しないという話は定説と言う話は聞いたことがあるが、見事その定説を打ち抜いて見せたカップル。

そう彼らは見事ゴールインして見せた、まあその後は仕事上離れ離れの時間が多いのだがそれでも俺には2人がまだまだラブラブだと思っている。

特にSNSではかなり頻繁に言葉のやり取りを行なっているようで、そのせいで今回の旅行も教授に傍受されてしまったわけだ。


「楽しい~」

「それは良かった、でも相手が俺じゃつまんなくない?」

「そんな事無いわよ~、だってコウちゃんはパパの代わりでしょ」

「ああ~そう言う設定ね」

「年々パパに似てくるんだから仕方ないんじゃない」

「でももう直ぐ帰ってくるんでしょ」

「そうよあと1ヶ月かな」

「ビックリするかもね」

「そうね、コウの彼女を見てビックリするわよ」

「そっちか…」

「パパあまりお金に興味ないから」

「そう言えばそうだね、どうして?」

「だって三簾家の資産今のコウの貯金よりはるかに多いわよ」

「そうなの?」

「よく考えてみれば分かるわよ、気功術協会の創始者の曾孫なのよパパは」


三簾家は新潟の田舎がふるさとではあるが、そこは気功術発祥の地でもある、今そこには大きな学園都市を作る計画があり気功術協会がその指揮を全面的に取っているらしい。

その資金も気功術協会だけでなく関連会社や他の団体それに三簾家からも出ていると聞いたことがある。

山に近い土地ではあるが自然が多く残り農作物が沢山取れる地区でもある、昨今は過疎化が進み廃棄農地が多くなった事で使われなくなった農地を三簾家が買い取り、一帯を学園都市にする計画が持ち上がった。

それらは曾爺さんの教え(遺言)でもあるのだが…


「曾じいちゃんってまだ生きてるの?」

「たぶん…」

「会ったこと無いんでしょ」

「うん無いわよ」

「父さんも会った事無いの?」

「詳しくは聞いてないわね」


父さんも母さんも会ったことが無いと言う曾爺さん、俺の体を2年間使い倒した張本人なのだが。

名前は三簾秀樹、生きていれば700歳は越えている。

そんな長寿な話は聞いたことが無い、だが気功術の魔法を作った張本人なのだもしかしたらまだ生きていてもおかしくは無い。


「ふ~ん」

「噂だと魔法で姿を変えて気功術協会のエージェントとして世界を飛び回っているとか」

「なにそれ」

「噂よ、誰も信じないけど」


ありえない話しではなくたぶん本当の話なのだと俺は知っている、そうでなければ彼の書いた小説の新刊が未だに出版されていることの説明が付かない。

たぶん今は別名を使って行動しているのではと予想が付くが。


「そろそろ終わりか」

「何かぞろぞろ後ろから付いてくるわね」

「あ~最後の組だからこれで撤収だからね」

「そうなのね、皆ごくろうさま~」


そういわれて後ろから手を振るお化け役の男子達、本日のアトラクションはこれにて終了と相成りますが、この後わずかではあるがアクシデントが有り。

皆の思い出となる一日はまだまだ続きます。


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