琴平 聖音
琴平 聖音
「うあ こないで~」
そう言いながらコウの手をぎゅっと握りそのきゃしゃな体を押し付ける、だがそれでも彼女はあきらめない、この際だからとか考えている余裕など無いのだがお化けが出るたびに条件反射でコウの腕にしがみついてしまう。
「聖音ちゃんもやっぱり女の子だよね」
「なによ~悪い?うあっ」
「いつも部室ではクールな感じでモニターに向かっているでしょ」
「そ そんなの あう!出てくるな~」
お化け役のいる場所に差し掛かるたびに目を閉じては残った腕を振り回す。
そして反対の手はコウの腕をしっかりと握っていた。
「先輩はこの後どうするんです?」
「な 何がよ」
「大学のことですよ」
「だ 大学のこと? ま また出た!」
(こわい~)
「来年4年ですよね」
「そうだけど」
「その先に行くのか就職するのかですよ」
「ええ~まだ決めていないわよ」
「先輩のことだからすでに決まっているのかと思いましたけど」
確かに彼女は3年の中でもトップクラスの頭脳を持ち抱える特許も6つとさらに2つの論文を今期中に発表しようとしている。
どれもBIWブレーンイメージライターの小型化に必要な論文と特許なのだ。
その先には大学院かはたまた企業の研究員かの2択は確実だと言わざるを得ない。
まあそれは傍から見た場合なので、家庭環境を加えればほかにも選択肢は増えてくる。
ただ東大へ通う女子は基本的に裕福な家庭が多い、高校時代に予備校や家庭教師等を雇い受験の合格率を上げるにはそれ相応の収入がなければ難しい。
この時代でもそれは昔とほとんど変わらない、しかも彼女は今自分の力で相当なお金を稼いでもいる。
親が何を言おうと自分の進む先を自由に決められるのだ。
「わ 私はもう少し…きゃ~もう~」
「ふふふ」
「なにがおかしいのよ~」
「いつも寡黙な聖音先輩がこんなに声を出すのがツボに来ましたよ」
「しかたないでしょ!怖いものは怖いんだから」
結局、聖音はコウにしがみつくことしかできなかったのだが、マーサや翠に挑戦というよりごく普通の女子をコウに見せることにより。
彼女らが特別なのだということをコウに再確認させることには役に立った。
まあこの先、聖音がコウに対して一層フランクになったのは言うまでもないが、さらにその先へ行けるかはまだまだ道は遠いといえるだろう。




