セリアの恋
セリアの恋
テーブルをはさんで両側の長椅子にはいつの間にか2人の男子をはさんで女子が2名ずつ脇を固める、そしてセリアはいつの間にかカウンターのあるバーへ行き一人成り行きを見守っていた。
(あそこへ行っては邪魔になるばかりです)
知ってかしらずかそこへいつの間にか所敦が隣の席へと座っている。
「隣 いいですか?」
「どうぞ」
「僕にもブルーハワイを」
「かしこまりました」
「セリアさんはいつからボディーガードをしていらっしゃるんですか?」
「マーサ様のBGは5年前かしら」
「もう長いんですね」
「あの方はUSA気功術協会の総帥のひ孫さんなんです」
「そうなんですか」
「セリアさんも獣人だと、お聞きしたのですが」
「そうですが何か?」
「全然そう見えないので、それにとてもきれいだ・・」
「な 何を・・」
久々に自分へ投げかけられた言葉にうろたえる、愛の言葉をささやかれたのはすでに10年以上も前の話。
結婚さえしてはいないが恋愛は若いころさんざん経験した、まあ相手は数人だがちゃんと付き合ったのは一人だけ。
その一人は結婚の約束までしていたのだが、彼女の前から永遠に姿を消してしまった。
傷心のままマーサのBGとなり仕事に没頭することで忘れることにしていたのだが。
同僚の恋やマーサの相手であるコウのことを見聞きしているうちに自分の感情もいつの間にか緩やかに溶けていたのかもしれない。
「わ 私がきれい?・」
「僕は初めてあなたを見た時からそう思っていました」
「・・・」
「僕ではあなたにふさわしいとは思いませんが、あなたの心の隙間を埋めることはできませんか?」
「・・・わ 私には・・・」
そういうとセリアは俯いて涙をぽろぽろと流しだす。
所がセリアの心を溶かした瞬間だった。
所は彼女の肩に手を置くとゆっくり引き寄せ、彼女の頭を自分の胸に抱き入れる。
数分間セリアは所の胸の中で涙を流しながら久々のやさしさに浸っていた。
(わたし・・・)
セリアは長年の凍り付いた思いが、陽に照らされて溶けだしてゆくのを感じていた。
(いいの?)
自分に問いかける、自分でも分かっているはずなのに、もうこれ以上自分の心を閉ざして生きるのは止めよう。
過去に別れを告げ前に向かって歩く時が来たのだと、セリアはこの日からボディーガードとしての対応を2段階引き下げ、明実とともにもう一つのミッションへと行動を変化させていく。
所はそこのところを知ってはいないのだが、なぜかうまくセリアの心をとらえたらしい。
実は所、メイド喫茶にはかなりの回数通っていたりする秋葉オタクだったりする。
外見はごく普通、身長は173センチ眼鏡をかけ頭髪は坊ちゃん刈り、本来ならセリアに対するアプローチも簡単にできるわけはないはずだったのだが。
彼は外見とは違い結構詩人だったりする、なぜコウのサークルBISに参加しているのか?
それは女性がいるからでもコウがいるからでもない、実はお金のためというのが大きい。
少ない小使いをやりくりし秋葉でメイド喫茶を堪能するには、家庭教師のアルバイトだけではなかなか難しい。
そこに町田という遊びの達人が、声をかけた一緒にサークルに入らないか?と。
そこには美女が数人いて、その時は高根の花だと思っていたが、たまに学生とは思えないメイド服を着た女性が出入りしているのを見かける、その姿そして所作はまるで本場のメイドさながらだった。
そう彼はリアルメイドを目の当たりにして心を打たれたのだ。
その後サークルのおかげで2つの特許を取得し、少ないながらもパテント料年間800万円を稼ぐに至る。
最近は秋葉に行ってもPC部品とフィギュアを漁るぐらいでメイド喫茶での一連の行為はストップしている。
本物のメイドそしてその所作を見たとき「ああ今までのは偽物だったんだ」とやっと気が付く。
求めるのはリアルそして目の前に現れた本物を目で追う毎日。
BISに出入りしていても毎日会うわけではない、それに彼女は学生でもないという。
そう偶然の出会い、彼はハプニングを求めた、彼女の負担にならないように自然に出会うそれこそがリアル。
ほかの仲間が女子の水着話をしているときも一人バーでオレンジジュースを飲んでいた。
そこに偶然セリアが来るとは思いもよらなかった、これは偶然だが必然。
そして一度も話したことのない言葉、それも愛をささやく詩のような。
一生で一度モテない男が放った起死回生のリアルな思い、それがかたくなだった彼女の心にヒットするとはだれも思わないだろう。
この日新しいカップルが生まれた、誰もが予想しない形だが、それを聞いて全員が震えおののきそしてハートを燃やすとは・・・青春とはそういうものか?
まあ全員がうまくいくならばそれほど苦労はしないのだけれどね、世の中とは面白いものだ。
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