知らぬが仏
知らぬが仏
BISに所属している男子はコウを入れて8人、女子は6人だがはっきり言うと皆結構イケメンであり美女である。
多少の好みはあれど、ファットな部員はいないし暗さに秀でた性格の者もいない。
当然のことながら秀才に才女ではあるので、ある意味ハードルは高いがそれも同じ学校であれば何の問題も無い。
町田が優しくおちゃらけ無しで一人の女性に決めて接すれば、たぶん上手くいく恋もあるとコウは思っている。
まあこの先輩は数打ちゃ当たるなので、まずその考えを改めない限り女性に飽きられるとは思うが、本人はそのあたりどう考えているのだろうか。
「いやいや、そんな事はないコウよ俺を喜ばせて何をしたい?」
「そうくるか~、先輩 俺の言う事をまず信じましょうよ」
「いやいや、信じちまったら負けみたいな感じがする」
「楽になりましょうよ」
「それは出来ない、俺は俺の道をいくんだ~」
「コウちゃんおはよ~」
そこへ医学部気功癒術研究科3年の白石千秋先輩がドアを開け入ってきた。
「俺もいるぜ」
「先輩もいたんだ」
(町田を軽く無視して開いてるモニターの前に座る)
「サークルの旅行決まったの?」
「うん7月の27~29日の2泊3日」
「その日なら私もいけそうだわ」
「ご参加ありがとうございま~す」
白石先輩はモニターを立ち上げると自分のデータチップを読み取り論文を表示させる。
彼女は医学部のため、後3年は大学に通う形になるが今研究してる論文が出来上がれば1学年単位を短縮できるという。
彼女も医療の分野でいくつかの特許を取っている特に気功治療の分野ではかなり注目されている。
「コウちゃんは、かのじょさんも来るんでしょ?」
「うんマーサに翠それにうちの母さんも」
「翠ちゃんって格闘美少女だよね」
「最近雑誌にも出てるらしいよ」
「らしいって、コウちゃん彼氏じゃないの?」
「彼氏だけど最近の翠の事はそんなに聞いてないから」
「ふ~ん」
翠の近況については曾爺さんもそんなに詳しく記録されていなかった、まあ細かく情報が記憶されていた段階で曾爺さんの性格を疑うが。
ある意味そこを白紙にしてくれたおかげで翠の事を知ろうとする気持ちが新鮮さを保っている。
好きな事は今でも変わらない、先日デートしてそれはさらに深くなった気もする。
だけどじゃあマーサの事はと聞かれれば、こちらのことも同じぐらいに好きになっているのだ。
何時から俺はこんなに優柔不断になったのか?
それは曾爺さんのせいだとしか答えは出せないが、いずれにしても俺には2人とも大事だという答えしか出てこない。
昔の人ならこの状況を不誠実だという人が多いと思う、自分の中でも答えはなかなかでないだろう。
欲ばっているわけじゃなく、本当に2人とも幸せにしてあげたい、それだけだと今は言える。
そこに、サークルの部室で初めて会う留学生のマーチンと山根が入ってきた、二人共に医学部脳情報科学科。
山根 陽 20歳 医学部脳情報科学科2年
マーチン・ロドリゲス 22歳医学部脳情報科学科4年EURからの留学生
「おはよ~」
「オハヨウゴザイマス」
「おはよう」
「うい~す」
「コウ先輩それ今度の旅行の?」
「そう、総勢18人」
「もしかして電車で行く感じですか?」
「そうだよ」
「了解です」
「デンシャ?」
「うんトレイン」
「OK」
「マーチンも来れるよね」
「イキマスヨ、ゼヒ」
「これで人数に変更はなさそうだね」
「うち 妹も一緒に連れて行けませんかね?」
「ん?山根くん妹いたんだ」
「どこかにつれてけってうるさいんですよ、勉強の邪魔されるし」
「高校生?」
「今高2ですね」
「いいけど、交通費は全員自腹で別々支払い、宿泊費だけ後払いで集めるけどそれでいい?」
「ぜんぜんOKですよ」
「そうすると19人か、通常のホテルじゃなく気功術協会の宿泊施設のほうがいいかも」
「場所は何処なんです」
「伊豆を予定しているんだよね」
「もしかして下田?」
「そうそう」
「なら下田の白浜気功術協会ホテルが使えますよ」
「気功術関係は熱海までじゃなかたっけ」
「いえ、先日ホテルが一つ参下に入ったという知らせがメールで届いてますね」
山根陽の親は気功術協会幹部、特に経済界への橋渡しを専門としている部署で働いている。
親戚には医師や官僚が何人かいて、金持ちの家系のため本人もお坊ちゃまの部類に入る。
但し現在彼自身も自らの才能で特許を持っており月に100万近くのパテント料を稼いでいる。
数年前まではお坊ちゃまと言うレッテルを貼られていたが、今は違うといえる。
「妹さんわがまま?」
「心配するほどでもないですよ、それなりでしょうかね」
「ふ~ん」
「JK参加いいね~~」
「町田先輩ボンキュボンがいい人じゃなかったんですか?」
「JKとナイスバディは別計算だよ」
「ちなみにうちの妹彼氏持ちですよ」
「なぬ~」
「でも彼しいるのに兄貴に付いて行くって?」
「ああ~彼氏といっても家厳しいので遊ばせていないから、親が変なやつは調査して即排除しちゃいますし」
「あ~要するに彼氏との旅行なんてとんでもないが、お兄ちゃんとならOKを出すと」
「そう、一人で行くのも女友達と行くのもNGということで」
「じゃあアキラ遊べないじゃん」
「もうなれましたよお守りは」
実はアキラ、マーサのBGで医学部に留学している明実を狙っていたりする。
まあよく2人で話していたりするし、明実もまんざらでもなさそうなので、温かい目で見守っている。
「あ~いけねAIパソコン使うんだよね?」
「あ~そうなんです論文仕上げないと・・」
「ちょっとまっ・ててね・・とこれでOK」
「どうぞ~」
「先輩有難うございます」
「同い年なんだから先輩って止めようよ」
「いや~それは無理ですね、何回先輩の特許で助けられたか、しかも収入まで増えたんですから、何なら社長って呼びますよ」
「それは絶対やめて!」
「ワタシモAIツカイタイ」
「おお~わり~じゃあこっちのやつ使って」
町田が椅子をマーチンに明け渡す。
医学部は科目によるが、夏までに数種の論文を出さなければいけない、特に脳情報科学科は最低3種の論文の提出を求められていたりする。
すでに1つは出来上がったらしいが後の2つがかなり面倒だといっていた。
2人はモニターの前に座るとデータチップをセットして内容を入力する、2人共に同じ科目なのだが論文の内容はかなり違うアキラは脳の情報でも目に関する情報、マーチンは小脳特に運動機能に関する情報の研究が主体だ。
「よし終わった―」
白石さんが論文を書き上げたようだ。
「はやかったね」
「家で殆どやってきたから今日は清書と確認、それと特許化へのデータ変換だけだから」
「また特許できたんだ」
「コウちゃんに言われたくはないんだけど、このサークルの合言葉は、コウに続け~!よ」
「なに?」
「みんなあなたを見て憧れて付いてきてるの、今更本人がそれを知らないって?」
「いや初耳だが・」
「あ~まっち~も言ってあげて」
「コウよおまえのやることなすこと全部栄光へと向かっているって、傍から見てるとよだれが出るほどうらやましいんだぜ、憧れるに決まってんだよ」
「まあ本人がわかんないって言うのもわかるけど、そう言うことだから」
「前にコウちゃんが抜けるって言って解散宣言したら皆に反対されたでしょ」
「そんな事あったっけ」
「は~これだよ・・」
「コウが抜けてAIPC使えなくなったら俺らおしまいだったからな」
「ああ~そうか、でもPCはそのまんまおいて行くつもりだったけどね」
「サークル解散したら部室も無くなるだろうが!」
「あ~~そうだね」
「その後誰が仕切ると?」
「おれもあの後2年もしないで卒業だぜ!まじめに論文書いていればだけど」
「最悪バラバラで解散、残った論文は自力で仕上げろって言われてもね~」
この部室に有るサーバーに取り付けたAIは売れば100万円はくだらない。
まあ今は皆そのぐらいのお金を個々に出費できる余裕はあるが、その後の細かい設定はコウがいないと難しい。
論文までなら何とか出きても特許変換も含めると、そもそも本来そう言う仕様ではない品物だったのだ。
解散を撤回し存続を決めてからのサークル参加者の論文製作はすさまじいものがあった。
ほぼ毎日24時間部室には誰かがいて論文を仕上げていた、コウがいなくなった時の事を考えて急いで仕上げにかかったからだ。
そのおかげか13人が最高3つ最低2つの論文と特許を仕上げ、伝手のあったTFCに特許権を売りさばき、一人年収500万円以上という快挙を成し遂げた。
おかげでTFCの売り上げも倍増し、コウは現在TFCから顧問にならないかと言う打診まで来ている。
TFC電気機械製作会社、特に気功術式の機械化を得意とし気功によるエネルギー変換装置の開発、気功術式推進装置や脳のサーバー化などの開発で有名、この時代の最先端技術を担っている。
年商1千億を越え最近はバイオテクノロジー分野にも多くの発明品を開発している。
どういう伝手なのかは解らないがコウの体を曾爺さんが使っていたときに、TFCの幹部と接点を持ち、特許契約を結んだということらしい。
その特許がBIW通称ビーアイ。
すでに小型化が進められていて、現在は小型のPCサイズだが将来的にはヘッドホンかバイザーぐらいの大きさを目指しているらしい。
脳内をパソコンのように使えるというBIW、一番の利点は他人の記憶を共有できるということ。
そうそれが可能なら勉強する必要が無くなる、特に歴史や地理そして数学などはいちど脳内にデータを入れ込みさえすれば、いつでも簡単にそれを取り出せるのだ。
曾爺さんの記憶の中には500年後には学校制度がかなり変わっているというデータがある。
東大でさえ名前に変更があり、自分が教授になっているというデータがあったりするのだが。
それは眉唾としか思えないが、あながち間違いは無いと思い始めている、それはなんだか自分がそうなるように行動しているような気がしてならないからだ。
BIWについてはこの先そうなるとしても自分が教授になるのは、どう考えても難しいだろう。
教授になるにしても今ある論文を全部進めて各種特許を取得してからの話だ。
「まあ解散白紙撤回で首の皮一枚つながって、1年で論文書きあげられたのは、すべてコウのおかげだと言っても過言じゃないぜ」
「みんな感謝してるってことさ」
「そうそう、呼び方はそれぞれちがうけど、その思いは変えられないでしょ」
「分かったよ、呼び方は甘んじて受けるよ」
ため息を一つ付き、過去を振り返る。
曾爺さんが1年数ヵ月でしてきたこと、おぼろげながら記憶の中にそのかけらがある。
それはまるで夢のような記憶、最初の論文そしてTFCへの交渉。
まるでTFCが自分の会社のような物言い、社長や会長まで契約に参加して。
でもまるで全員が知り合いのような感じがしていた。
特に会長の奥さんのきれいなこと、あれで300歳を超えてると言われた時の曾爺さんの驚き様。
もちろんそれは気功術による魔法取得のおかげではあるが。
そういえばあそこの御令嬢にも会って一度デートをしたのだった。
あれからほとんど特許の契約時以外は接点がないが、そのうちまた逢う可能性もあるだろう。
TFCは中国系の会社だが今は日本のみで開発を行っており日本気功術協会とは太いパイプがある。




