民間人と、当時の内閣
前回の続き。
会議はさらに続いた。
「対空防衛システムの設計には民間の会社もかかわったのだろう?」
「はい、そうです。
関係する会社には極秘の調査をお願いしています」
「それと、あの頃は政権交代があったな。
今の民自党が野党に転落して、主民党に政権を取られた。
防衛省も主民党の大臣だった」
「それについても、主民党と水面下で接触しています。
ただ、先月に、主民党から憲民党が枝分かれして、
当時の防衛副大臣は後のほうに移っています」
「当時の大臣と副大臣が、今は違う政党なのか。
いろいろ難しいところがあるのは確かだ」
「外務省にも当たっている?」
「はい。すべての駐日大使館と公使館について、関係者の入出国を詳細に調べるように依頼しています」
「大使館などに外国の民間人が出入りすることもあるだろう。
そのへんはわかりそうか?」
「外務省には、調査の範囲をできるだけ広げてほしいと依頼しています」
「あのメモにあった乱数の暗号だが、そういう作成ができる人間は限られている」
「あれ以降の情報が、別のタイプの暗号で流出している可能性も排除できない」
「古いパソコンを処分したときのハードディスクがどうなったかは、詳細にわかるか?」
「こちらの担当者に聞いたら、『ハードディスクを外させてから業者にパソコンを引き渡した』と言われました」
「そのディスクはまだあるのか?」
「あります。ただし、一般論ですが、パソコンに詳しい人間がハードディスクの記録をコピーすることは可能です。
そうされたことがあったのかどうかと、
あった場合、外部に持ち出されたかまでは、完全に判明していません」
「今も深夜まで仕事をすることがあるのか?」
「あります。ごく一部の職員だけが深夜まで残っていたときに、
パソコンなどを具体的にどう操作したのかまでは、
分かりにくいところがあります」
「簡単な調査でないのはわかっている。
来週にまた聞くから、できるだけ解明してほしい」
「わかりました」
(続く)