守護霊
大学に入学して最初の夏休み、仲良くなった友人等と誘い合って海に遊びに来た。
堤防脇の駐車場に車を止め、ビーチパラソルやマットなどを手にして砂浜に駆け下りる。
駆け降りてフト堤防の上を見上げると友人の1人陽が、砂浜の更に向こうの海を見つめ手を合わせ拝んでいた。
「何をやっているんだ?
早く来いよ」
「君達は見えていないのだね?」
「何を?」
「僕は霊感が強くて霊が見えるのだよ」
「え! 幽霊がいるのか?
お天道様が真上にある真っ昼間にか?」
「幽霊には昼も夜も無いよ。
透けているから夜の方が見やすいだけで、昼間もいるよ」
「で、何処にいるんだ?」
陽は片手を上げ海を指し示す。
「海から此方を見ている」
「えぇー!
それって海で溺れた人たちの霊なのか?」
「皆軍人だね」
「軍人?」
指し示している手を動かしながら話しを続ける。
「そう、あそこ等辺にいる人たちは海軍の水兵だな。
その隣にいる人たちは陸海軍航空隊の飛行兵達だと思う。
その横にいる人たちは陸軍の将兵だ」
「その人たちは、海で遊んでいる俺達を怨んでいるのか?」
「遊びに来ている人たちの中に親族の姿を認めると顔が綻ぶから、喜んでいるのだと思う」
「じゃあそこで成仏もせず何をやっているんだ?」
「彼等は日本を守護している守護霊達なのだよ」
「守護霊?」
「そう、彼等の思いは1つだ」
「それは何?」
「仲間をこれ以上増やさないで欲しいって事さ」
それを聞いて俺と周りにいた友人達は海に向かって手を合わせた。