表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

流星に願う希望論 Ⅰ

          流星に願う希望論 Ⅰ


――ジリリリリリリリリ…

 時は盟歴2116年7月20日。

 今日もいつもと変わらず定時に鳴り響く目覚まし時計、それを布団の中に手繰り寄せ、アラームを消してまた再び、心地よく夢の中へダイブ。

 そして数分後に飛んで来てシュウヤをたたき起こす母。

 「んん~~分ったよ、起きるから~~」

 などと寝ぼけ眼で時計を確認。

 「やっば、もうこんな時間?ちょ、なんでもっと早く起こしてくれなかったの?」

 「何度起こしてもアンタ、『まだ時間ある~』って言って起きなかったじゃん」

 理不尽に記憶に無いことを押し付けられてしまった以上、『そんな記憶は無い』と口答えしたい気分だ。しかし既に怒りゲージMAXの様子の母になにか言ったら命の保証はない。むしろ一個師団全滅もあり得る危機的状況。

 これ以上怒りを買って戦力消耗を招くことだけは避けたい事態だったので、急いで学校に行く準備をした。

 「また今日も寝坊か?シュウヤ。」

 見りゃあ判るだろ、と反抗する気力もない。というか、面倒くさい。

 そんな感じで内心苛立ちを感じながら食パンを咥えて学ランの袖に腕を通す。

 「いってきます」すら言わずに玄関をくぐり、食パンを頬張りながら学校までの道のりを全力疾走という、漫画やアニメにおける学生生活のテンプレートをなぞった。しかし、恋愛シュミレーションゲームの定番の「ヒロインとの出逢い」は無念にも、ない。

 ――まぁ、所詮は現実。メインヒロインのような圧倒的美少女との出逢いイベントの出現確率は天文学的確率と言っても過言ではない。といってももう既に圧倒的美少女との出逢いは―

 とても真面目で勤勉な学生のする思考とはお世辞にも言えないような、頭の中お花畑の平和的思考を否定し掛ける。

 走っているうちに校門をくぐり、ギリギリに登校、間一髪で遅刻だけは見事に回避。

 「よっ!今日も遅刻寸前だな!寝坊か?」

 きっとシュウヤとは違って爽やかな朝を迎えたであろう、シュウヤに語り掛ける友人A、もとい桜庭サクラバトオル。

 「あぁ、寝坊は否定できないが…僕がいつも遅刻扱いというのは心外に尽きる。」

 「いや、事実だろ?」

 駄弁っている時間の終わりを告げる、ホームルームの開始。

 シュウヤの気怠そうな雰囲気を感じ取ったのか、「また徹夜?」と心配げな声色で尋ねるシュウヤの幼馴染兼隣の席の女子、タチバナミハル。

 さらに付け加えるならシュウヤの片思いの相手、先ほどの妄想中に登場する圧倒的美少女。

 「大丈夫」などと曖昧な返答をしながらも実際は満身創痍。ミハルの予想通り昨日は徹夜。さらに付け加えるなら、オンラインゲームの攻略をしていた、というシュウヤにとっては至って平凡な理由。

 午前中の授業の怠さといったら、夜行性人間の中で群を抜いてのものだろう。

 ――早く時間が過ぎないかな…

 そうやって時間だけが流れて行って、授業の内容など到底頭の中に残るはずもなく。

 「オイオイ…今日のシュウヤは目に見えて怠そうだな。まぁ、飯でも食おうぜ!」

 「怠そう」の要因について返答を待たないトオルの飯へのありつきように小さく吐息。

 「そう言やぁ、あと一週間で夏休みだっけか?」

 今日は弁当を忘れたので購買のパンを頬張りながらトオルの当たり障りない疑問に相槌を打つ。小遣いがピンチな状況なので、あとで親父にでもたかっておこう。

 「あれ、いつだっけ?花火大会。」

 「8月20日だよ」

 予想外の展開。そのトオルの疑問に返答をしたのはミハルだった。

 「ミハルも、花火大会行くのか?」

 「うん、一応…ね。」

 シュウヤの片思いの相手、ミハルの登場というシナリオが飛び込んできた今、今までシュウヤを支配していた眠気は、倦怠感は。

 何もかもが予想外の方向に傾く。

 話の流れを利用してミハルを花火大会へと誘おうと試みる。その決断の選択肢を示した時点で掌は気持ちが悪いほど手汗にまみれている。

 「もし良かったらなんだけどさぁ、花火大会、一緒に行かないか?」

 固唾を呑み込んで決意を言葉にした。

 「気が早過ぎるよ。花火大会まであと一か月もあるんだよ?」

 口元を押さえて笑うミハルに、「しまった」と小さく呟くシュウヤ。

 シュウヤの場合、片思いの相手との接触のきっかけを作るだけでこの有様なのだから、俗にいう「リア充」の辿った道は生半可なものではないことを痛感させられた。…まぁ、この場合は「リア充の人格」を視野に入れないものとして、だが。

 比較的今日は涼しいにも関わらず、何故か汗がひどい。

 「…うん。花火大会…ね。一緒に行こっか。」

 内心諦めがあったのか、反応にタイムロスが生じる。

 ミハルの少々照れくさそうな、愛らしいような口調と様子に思わず頬を赤らめるに加え、「ok]サインを受け取った喜びから小さくガッツポーズを取る。

 それを見られてなのだろう。ミハルの堪え切れずに浮かべる笑みの愛らしさと、形容し難い儚さは。

 さらに頬を赤らめる僕を見て、トオルは「ほほう」と詮索するような、非常に不快感を覚える笑みを浮かべた。


 「そーだったのか、お前、ミハルに気があるんだな。」

 いちいち茶化してくるこいつの顔面に一発お見舞いしたい気分だ。こうなったら。

 「ろくな恋愛成功経験の無いお前がこのことを口外にしたら、わかってるよな?」

 取り乱している様子を見せることは相手に弱みを掴ませることと同じだ。努めて笑顔で冷静に、且つ脅迫的で棘のある発言をすることで相手の優位性を失わせる。ただし、相手に対して必ず勝てる確証を持つ切り札が手元にある場合に限る。これは現役弁護士である親父秘伝の口論術。

 「お、おいやめろ!”アノコト”だけは…」

 余談だが、トオルはかつて何度も失恋を経験している。その幾度にも及ぶ失敗から生み出される羞恥心は格好の「弱み」そのものだ。その失敗談を「晒してやる」と言われれば最期、こいつに勝ち目などない。

 「互いに晒したら打ちのめしあう、っていう事で条約締結でいいかな?」

 「何でこういう時に限ってお前は頭がキレるんだ?普段はただの眠そうにしてるだけの冴えない…って、短期は損気だぞ~?また額に青筋が…おうふッ」

 減らず口を慎まないおバカさんに肘打ちを軽く食らわせたつもりが、予想外に大きなダメージを与えたらしい。

 …まぁ、いいか。そんなことより授業始まっちまう。急いで教室に戻るとするか。


 「仲良いんだね。シュウヤと。」

 「あぁ、腐れ縁だけどな~って居たのかよッ!」

 物陰から二人の様子をうかがっていたというミハル曰く二人の会話は丸聞こえだったという。もしもこの場にシュウヤが居たのなら秒速地球七周半の勢いで逃げ出すか、マシンガンの如く意味不明な言い訳を炸裂させることだろう。

 「ふふッ、シュウヤったら私に気があるのか~。嬉しい!」

 …なるほど、相思相愛ってヤツか。こればかりはなんとも反応し難いなぁ…

 気まずい空気感に思い悩みながらトオルは踵を返す。完全に何事もなかったかのように無視を決め込み、バックレ。

 「ねぇ、トオル。」

 「何だ?」

 無視を決め込んでから振り向きざまに目つきの悪さを遺憾なく発揮したのか、とても場が悪そうに苦笑を返された。

 「私、あの子が…シュウヤのことが好きなんだけど、その…言わないでくれるかな。」

 「あの子」と言う辺り、シュウヤのことを年下扱いしているのだろうか、と率直な疑問が浮かぶ。

 「任せろって。あいつから告白されたいんだろ?」

 無言の首肯。恐らくは花火大会でフォロー役を務めさせられることだろう。

 …仕方ない。妹でも連れていくか。他に一緒に行けるような女子は居ないし。

 終わりを告げるチャイムの音と共に、僕達の昼休みは幕を閉じた。


 昨日のオンラインゲーム攻略による徹夜と、催眠作用のある話し方の先生が担当する授業と、食後という最強睡眠魔術師3コンボ攻撃にかかれば不眠症はあっという間に完治する事だろう。

 シュウヤ含めた教室中の生徒の五分の一は授業を受けることも叶わず、夢の世界に飛ばされていた。

 放課後に部室へ向かう生徒を横目で促し、シュウヤとトオルは帰宅部の活動に勤しんだ。

 「さ~て、帰るか。今日もゲームの続きやるぞ~!」

 「…一経験者として物申させてもらうけど、早いうちから攻略しといた方が良いんじゃない?」

 何のことだ?と聞き返す間もなく、

 「いやぁ、ミハルの事だろ。いつの時代のどんなギャルゲーだって変わらないものがある。それは…」

 「生憎だが、お前のギャルゲー攻略術は何度も聞いてる。僕だってギャルゲーの一つや二つ、攻略済なんだ。」

 「それはリアルの方なのか~?」

 「僕の場合今回が初めて目標とするメインヒロインだよ。」

 「そのメインヒロインって誰なの~?」

 「あぁ、決まってるだろ?勿論…」

 メデューサと目を合わせて石にされてしまったかのようなシュウヤの硬直状態。

 「メインヒロイン」ことミハルの攻略イベント外での登場と選択肢の多さに思考停止するシュウヤ。

 「あの…ミハルさん、いつからそこに?」

 「ふぇ?さっきの『生憎だが、お前のギャルゲー攻略術は何度も聞いてる』のあたりだよ?」

 「ゲームの話でしょ?」というミハルの一言で石化呪文が解呪されたシュウヤの頬に薄いピンク色が宿った。

 「あぁ、うん。そう。ゲームの話だ。決して…」

 「そんなに隠したがる辺り、えっちいゲームなの?」

 「違うって!」

 容赦ないミハルの連続攻撃には、どんな勇者を束ねても勝つことは出来ないだろう。ただし、その攻撃力には当の本人も気が付いていないようだ。…天然キャラ、恐るべし。

 「大丈夫だって。思春期の男の子はみんなそうなんでしょ?」

 と、ミハルはシュウヤの頭を撫でる。

 あぁ、こりゃぁ完全に姉かオカン目線だな、とトオルは微笑ましげに二人を見ていた。

 …おっと、この場は流石に空気を読むか。後でシュウヤに何か奢ってもらおう。

 「あ~、そうだった~。今日は妹とデートだった~。じゃあ、悪いけどシュウヤ。俺は先に帰るぜ~。リアルという名のギャルゲーの攻略、頑張れよ~」

 などと、あからさまに演技と見て取れる別れ方でシュウヤとミハルを取り残し、トオルは去っていった。

 「え、ちょ、待てよ!」

 「ふふッ、一緒に帰ろっか。」

 思考回路はショート寸前、高性能コンピュータでもこの事態を冷静に処理するのは限りなく不可能に近いってものだ。シュウヤの確率論にゼロは無いが、この場合だけは否定させてもらう。

 …もうこうなったら、ギャルゲーだ。全てゲームとして考えてしまえばいい。

 「なんだか、こうやって一緒に帰るのって、すっごく久しぶりだね。」

 「あぁ。僕は、ミハルが良ければいつだって一緒に帰っても良いんだけどな。」

 ギャルゲー攻略術その一。「遠まわしな下校デートの誘い方」。この攻略チャンスは非常に難易度が高い。一度逃せば二度と巡って繰ることは無いと言っても過言ではないので、虎視眈々とその隙を狙うべき。ただし、成功確率は勿論ゲームなんかよりも低くなると予想されるので、回りくどい言い方は避けた方が無難。

 「ほ、本当に?じゃあ、毎日じゃなくても良いから、一緒に…ね。」

 親密度の上がる音がした気がした。…よし!この調子だ。

 学校の校門を過ぎ、車道に出る。

 ギャルゲー攻略術その二。「小さな選択肢の一つも逃さない」。車道に出た時などは、必ず彼女、乃至攻略対象には「歩道側を歩かせる」などの小さな気遣い、つまりは小さなイベントの選択肢でさえも失敗を許さないこと。これは一つ一つのイベントでの好感度上昇度は低いものの、成功確率が高い上、塵も積もればなんとやらだ。間違いなく好感度の上昇を狙えるので、逃さないように。

 「ほら、車道側は危ないから、歩道側歩いて。」

 最初に敢えて車道側を歩かせるように誘導し、ちょっと経ったらこのように歩道側へ誘導する。ただし、あまりにもワザとらしいと逆効果なので、サラッと促すように。

 「あ、そういえばさ、この辺りにちょっと洒落た喫茶店が最近オープンしたんだって。これから時間って空いてる?」

 ギャルゲー攻略術その三。最新情報や喫茶店などのデートスポット情報を事前に仕入れておく。これにより、攻略対象に「一緒にいたら退屈しなそうだ」という印象を与える。ただし、人によっては計算高く、隙が無い印象を与えてしまう可能性があるので、要注意。

 「へー、シュウヤって意外と詳しいんだね~。」

 「いや?今朝折込のチラシで見ただけだよ。」

 敢えて「そうだぜ、詳しいんだぜ」アピールをしても良いが、初デートなどには控えるが無難。

 「さーて、何頼もうかな。」

 「うん、そうだな~。来てみたはいいけど、こういう所って来た経験あんま無くってさ」

 「そうなんだ~。私、こういう所初めてなんだよね。」

 内心、助っ人なしでよくここまでイベント攻略が出来たな、と自我自賛。

 初期攻略段階で何の問題も無いのなら、その後の支障は皆無に等しいというのが普通なので、暫し気を抜いてのティータイムと洒落込むとするか。

 適当に旨そう且つ安価な品を注文する。

 驚いたことにミハルは本当にカフェなどに行った経験がないらしく、シュウヤと全く同じ品を頼んだ。…人は見かけによらないっていうのは本当だったんだなぁ、と実感させられる。

 穏やかなティータイムも束の間、気づけば窓から茜色の光が差し込む。

 「そろそろ、帰ろうか。遅くなったら悪いし。」

 「ん。そうだな。女の子が遅くまで出歩いてたら危ないからな。」

 「送っていくよ」と無意識のうちにミハルの手を取っていたあたり、幼馴染補正というヤツがかかっていたのだろう。特に意識していなかったあたり、好感度上昇が得られたかどうかは判らない。

 「別に送ってくれなくても、家が隣なんだし、大丈夫だよ。」

 「あ、そうだったなぁ。ついうっかり。」

 夏風に舞う緑葉、藍色から茜色への美しいグラデーションの虚空とコンクリートに真っ黒な影を落とす巨塔の群れは、ミハルを主体とした背景は添え物に過ぎない。

 画となれば何百万の高値が付くことに間違いのないその風景を瞼の裏に焼き付け、各々帰宅となった。

 …今日はなんだか、良い夢が見れそうだ。けど、脳ミソ使い過ぎてすごく疲れた感じがするなぁ。

 優越感に浸りながらのオンラインゲームの攻略ほど快感を覚えるものはないだろう。

 そのオンラインゲーム攻略途中、突然の通知の表示に目を奪われ、敵チームの狙撃兵に見事撃ち殺され、惜しくも二位。

 通知の主、もといメールの送信相手を少々恨めしく思いながらメールを開く。

 メールを開いて送り主を確認後ゲームパットを投げ出し、0.2秒という記録的な速度で前言を撤回した。

 それもそのはず。メールの送り主ことミハルは恨めしく思える相手ではないからだ。

 『今日の放課後、楽しかったです♪また一緒に放課後にどこか行きたいね。実は私も、今日行ったカフェほどじゃないけれど、お気に入りの場所があります。良ければ明日の放課後、一緒に行きませんか?』

 思わずガッツポーズ。

 「っしゃーーーー!放課後デートイベントゲットォーー!」

 「うるせーわ!今何時だと思ってやがる?」

 まさかの「親フラ」という、学生時代に遭遇確率が急激に上昇する、自室にて何らかの見られたくない、聞かれたくない行為に至っている際に親の出現と同時に多大な羞恥心を伴う現象に遭遇した。

 反論も叶わず、放課後デートイベント獲得時の体勢を保ったままパソコンの前で立ちすくんでいた。


 日を跨いで7月21日。今日は一大イベント、「放課後デートイベント」がある。

 陰キャのシュウヤのにとって、このような充実している日は何年ぶりか知れない。

 「あら、今日は珍しく早起きねー。」

 「ははは。今日は母さんの拳骨を食らわずにすんだなぁ、シュウヤ。」

 これは偏見かも知れないが、普通拳骨を食らわせるのは母親ではなく父親の役割だろう。どちらにせよ、そんな理不尽なイベントの遭遇は避けたいが。

 そんなどうでもいいツッコミを入れたくなる感情を朝食と一緒に飲み込み、テレビニュースに無意識に目を向ける。

 どうやら最近話題になっていた「首都圏耐震補強計画」が違憲なのか合憲なのか、という一学生としては小難しく思える内容の報道がされていたようだ。

 「首都圏耐震補強計画」と称した、明らかに耐震構造にしては要塞に酷似していて頑丈すぎる設計で、要塞的な武装も現在進行形で行われているらしい。

 先ほどの「合憲か違憲か」というのは計画自体ではなく、この武装に関して争われているらしい。

 しかも防衛省が秘密裏に進めていた計画とあって、それが明るみに出て以来は「首都圏要塞化計画」なんて大層な名前で呼ばれていたりもするとか。

 首都直下地震が懸念されることから、誰も耐震補強に関しては疑いを持たなかったので、計画の真意が明るみに出されるのも時間がかかったらしい。

 ニュースの全貌を口頭で説明するのならざっとこんな感じだ。

 …首都圏要塞化計画…か。SFチックでカッコいいなぁ~。

 平和ボケし過ぎた人間がこのニュースへの感想を述べるとしたら、せいぜいこれくらいが限界だ。

 「耐震補強工事に10兆円…それなら遷都した方が早いんじゃないのか?」

 「遷都に懸かる費用の方が高くつくわよ。ゼッタイ。」

 「何これ、高射砲?中学の頃歴史の教科書で見た以来だわー」

 「こんな武器?の為なんかに私達の税金が持ってかれてるのよ…老後…大丈夫かしら…」

 「解ってないな~。大砲には漢のロマンが詰まっているんだ!」

 「論点ずれてね?」

 高射砲らしきものに異様なまでの興味を見せる父は、学生時代は熱狂的な戦争オタクだったらしい。本人から直接聞いた話だ。

 余談だが、現役弁護士である父はその戦争オタクの血が災いし、武器を違法に保有していた被告人の裁判にて、被告人が所有していた武器について専門的知識を余すことなく披露し、裁判官に一喝されてしまった経験があるらしい。                                      

 冗談か本当かは定かではないが。

 目を輝かせてスマホの連写機能を使ってメモリーカードの容量を削る子供のような父の姿に苦笑を浮かべながら制服の袖に手を通した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ