壊れかける日常?
『それでは速報です。今朝、都内に全長四メートル程の大きな黒い生き物が現れたと情報が入っております、現在警察がその生き物の行方を追っております。付近にお住みの方はもし見かけたら手は出さずに警察にご連絡ください、以上で速報を終わります…』
「へぇー…最近物騒だね~、お、これ旨いな!アリアは料理上手だな~」
「本当ですか!?嬉しいです~!」
アリアが見よう見真似で作った卵焼きを食べつつ褒めると嬉しそうに、料理の邪魔にならないように結っていたポニーテールをピコピコと揺らしていた。
「ホント、ホント…それにしても最近は浮かないニュースばかりだな」
「ですね…お野菜が値上がりしたり、お魚が高かったり…家計に響きますね~」
「いや~、そっちの心配じゃないんだよ?物騒な事件が結構起きてるって話だからね?もちろん、値上げは痛いけどさ~」
アリアが限の家に住みだしてから一か月程が経った…
彼女は喋られなかったことが嘘かのように、実に違和感なく日本語を操っていた。
たまにおかしな日本語にもなるが、特に気にしていない。
今や彼女は限の家族と言っても過言では無い。
もちろん、アリアからある程度の事情は聞いた、正直信じられないがこれが現実と諦めた。
限はアリアが別の世界の住人とも聞かされたし、魔法も使えることも分かっている。
「別の世界の人だから?魔法が使えるから?それでもアリアはアリアだ」と言ったのだ。
この一か月で限は彼女にたくさん助けられた、仕事が上手く行かず落ち込んでるときは黙って慰めてくれた、疲れて帰ったら美味しいご飯を作って待っていてくれた。
そんな彼女に冷たくするなんて限には無理だったのだ…
「あれ…俺アリアに支えられすぎじゃね?アリアがいなくなったらどうなるのか…」
「何をブツブツ言ってるんですか?その癖止めた方がいいですよ~?私は気になりませんけど、他の方は怖がりますので…」
「すまん、本当にアリアは人をよく見てるな…」
「皆を見てる訳ではありませんよ?限さんは私の大事な人なので心配してるだけですよ?」
「そうか…ありがとな、もしよかったら今週の日曜どっか連れて行ってあげるよ」
「ほ、ほほ、本当ですか!では、アルトリア国に連れて行ってください!」
「却下だ!そんな行き方も分からないお前の故郷には連れていけん!」
「冗談ですよ~、じゃあ…パンケーキ食べたいです!それもシロップたっぷりの!」
「う………ま、任せろ!いつも世話になってるお礼だしな!その代わり行きたい場所検索して探しておけよ?」
やったー!と喜ぶアリアを横目でチラチラと見つつ、限が財布を確認すると残り二千円程しか入っていなかった…
今夜は飲みに誘われても断らないと死んでしまう。もしアリアとの約束を破ろうものなら社長に丸一日サンドバッグの刑に処されてしまうからだ…
それだけは避けなくては!まだ死ぬわけにはいかない!こんな所で!
若干、大袈裟だが半殺しぐらいにはされるだろう…
「どうしたのですか?何かと戦っているような顔になってますけど?」
「まぁ、戦いと言えば戦いだな…そう、この世界との戦いだな」
「限さんは英雄か何かなのですか?世界相手に戦いを挑む、大変だと思いますがお互い頑張りましょう!」
「お、おう!共にこの辛く、悲しい戦争を乗り越えよう!」
「「おぉー!」」
適当なことを叫びつつも、二人の意思は鉄よりも硬い絆で結ばれた気がした。
「って訳だから…留守番よろしくな~、今日は早めに帰るつもりだからさ」
「本当!?じゃあ…今日はミートパイ作るね!楽しみにしててね!」
「あんまりたくさん作りすぎるなよ?俺もいい歳したおっさんだからあんまり食えないからな?」
目をキラキラと輝かせながらご馳走を作ると張り切っていた。
アリアは前にミートパイ作ってくれた、美味しいのだが…とにかく量が多かったのだ。
なんでも、「お父様は毎回このくらい食べていましたよ?」と言ってきたのだ。
アリアの親父さんに負けじと限も食べ進めたが半分程でギブアップとなった…
「もしもだ、何かあったら電話しろよ?最近物騒だしな」
「分かってますよ~、ここで通話でしたっけ?」
「そこは検索な、この受話器のマークだからね?」
「ムム…携帯とやらは難しいですね」
現代の機械や日本語などは簡単に覚えたアリアだが、携帯は全くダメなのだ…
一週間前に買ってあげたのだからまだ仕方ないとも言えるが、通話も出来るか怪しい。
もちろん、限の名義で二つ目の携帯と言うことで契約してきた。
さすがに個人情報も何も無いアリアでは契約することは出来ない。
「壊れやすいから洗濯とかするよな?」
「私はそこまでドジでは無いです!」
「痛い、痛い!分かったからポカポカ叩くの止めてくれない?」
少しおちょくると、アリアが顔を赤くしポカポカと背中を叩いてきた。
全く痛くは無いが、一応言っておく。
言わないと途中で泣き出しそうになるからだ…
「分かればいいんですよ~、分かれば!」
「ハイハイ、俺が悪うござんしたアリア様…」
「え、え!そ、そこまで言わないでください!…あなたは私の恩人なのですから!」
限が悪びれなく適当に謝ると、何に慌てたのか恩人と言っていた。
「恩人は俺の母親なのだと思うのだが…勝手に家に入れたとはいえあの母親は相変わらず甘いよな」と一人考えごとをしていた。
今追いださないのはアリアが可愛そうだし、故郷に帰れるまでは置いてやろうと考えているからである。
本当は家に置いてくれている限も恩人なのだが限は
「さて、そろそろ仕事に行くよ…遅刻はやばいからな」
「頑張ってくださいね!あ、限さんちょっと待って…」
「なんだ?どうした?」
「やっぱり…何でもな~い」
「変な奴だな…」
何かを言いたそうにもじもじしていたが、結局何も言わなかったので限はドアを開けて外に出る。
結局何が言いたかったのだろうか…
限は気になったがそこまで追求する時間は無かったので急いでバイクに乗り、エンジンをかけて走り出した。
「やっぱり…今日も言えませんでした、明日こそは言います絶対に!」
限が走り出したのを見届けたアリアは一人意気込んでいた。
そして、外に出てドアの鍵をかけどこかに出かけて行った…
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「女の子って難しいな…」
「「どうしたおまえ!?何か落ちてるものか怪しい薬でも食べたのか?」」
「二人同時に同じことを言われるとかなり傷つきますよ…それと落ちてる物はまだしも、怪しい薬はアウトでしょ!」
「いや~、お前がリア充アピールしてきたからさ~…幻覚でも見えたのか心配したんだぞ?」
「そうだよ限、俺も先輩と同じく心配しているんだよ」
午前中の仕事が終わり、限が相談を持ち掛けると、先輩と山中が二人同時に同じこと言ってきた。
さらに、怪しい薬にまで手を出したのかと疑われた…
そこまで俺が女子の話題出したらおかしいわけ?
確かに今まで彼女なんていなかったけどさ…あんまりだよ。
「その女の子って、もしかして前にお前が連れてきてた金髪の子?」
「そうですよ、本人の前では金髪の子じゃなくてアリアって呼んであげてくださいね?」
「ふーん…俺は直接見たこと無いから分からんぞ?」
先輩は意外にもアリアを知っており、山中は知らない様子だった。
先輩は情報通だからな、知っていても当然かな?
山中は…知らん、よく分からん。
「で…どうしたいのその子と?デート?キス?それとも?」
「いくら先輩と言え、これ以上言えば犯罪者として 知り合いのポンコツ警官に引き取って貰いますよ?」
「先輩、それは犯罪やで…」
「いやいや、冗談だからな?だから携帯を置こうか…マジで!本当にそんなこと思っていないからな!?」
「「本気のマジのガチですか?」」
「本気のマジのガチです…だから携帯を「あ、もしもし?俺、俺だけどさ?」置けってオイ!本気で通報するな!しかも警察相手にオレオレ詐欺みたいな喋り方してんじゃねぇよ!」
犯罪者予備軍を見つけてしまった俺達は警察に差し出すか差し出さないかで迷ったが、俺達の仕事量が増えるからと言う理由で見送った。
先輩は「命拾いした…危うく人生お先真っ暗になるところだった…」と安堵の声を漏らしていた。
「話を戻しますけど…女の子と出かける時に気を付けることって何かありますか?」
「うーん…服を褒めてあげるとか、あとは今日も可愛いねとか言ったら?」
「うーん…それはなんか違う気がするな~、恋人では無いからさ~。難しいな…」
「メンドクサイなお前…それだから彼女出来ないのじゃねぇか?」
「先輩の言う通りだ限、修行して来い…いや、修行しに行くぞ今日の夜!合コンの人数足りないんだよ~、よかったら来いよ」
「今日は無理です。今日は早く帰ると約束したので」
「「チッ!ノリが悪いな!」」
俺が丁寧にお断りすると同時に舌打ちをし、同じようなことを言ってきた。
本当に口裏合わせて言っていないのだろうか?偶然にしては合いすぎてる…
何と言われようが明日までは金は一円たりとも使うわけにはいかないのだ!
アリアの笑顔と俺の命を守るために…
しばらくの間遠い目をしていた。
「おーい、どうしたの限?なんか複雑な顔になってるけど?」
「何でも無いですよ先輩、ただ命とお金どっちが大事かと思って命が大事なのだと改めて思いましたよ…」
「お前も大変そうだな…今日はあの金髪ちゃんと遊んでやれ、合コンはまた誘うからさ」
「先輩…いつもより優しさが特盛ですね?何かあったんですか?」
「まぁ、色々あったんだよ…」
今度は先輩がどこか虚空を虚ろな目で眺めていた。
本当に何があったのだろうか…
時折、手がカタカタと震えていた、まるで何かを恐れているかのように…
「そろそろ休憩終わりますから行きましょう…先輩はどうするか?」
「放っておいたらその内、先輩は復活するよ…たぶん」
精神状態がおかしくなってる先輩を放って俺達は仕事に戻った。
一人戦意喪失にしてるが気にしない…気にしたら負けだと思う。
「俺が悪いのか、俺が悪いのか…何でなんだよ恵美…俺は君に尽くして来たのに…何でなんだよー!!」
ゴスッ!ミシミシ…ゴスッ!
そろそろ狂人と化してきた先輩を抑えるべく蹴りを腹に叩きこんだ…
少し強すぎたのか白目を向いて泡を吹いていた。
だが、蹴りを入れた効果はあったようで…
「は!ここはどこだ!俺は生きてる…生きてるぞ!」
まだ足りなかったのかな…
何かおかしな事を言い出している。
とりあえず…仕事を再開させないとな…
俺達は重い足を動かし仕事に戻った…
今回は日常多め…いや、いつも日常ですねw
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