厄介ごとをプレゼント!?③
昨日の朝とは違い今日は気持ちのいい目覚めであった。
理由は主に昨日は酒を大量に飲んでから寝ていたから二日酔いになっていたのであろう。
そんなことを考えながら、のそのそとコタツからゆっくりと毛虫のように這い出る…
なぜコタツで寝ているのかと聞かれたらこう答えるしか無い、生まれてから一度も彼女が出来たことのない男にはどうすればいいのか分からない…
まして、あのような少女に手を出すほど落ちぶれてもいない…はずだ。
なので一人悲しくコタツで寝ていたのだ。
今日から仕事が始まる、それは社会人なら誰もが憂鬱になるがこの男は違った。
この男は仕事を生きがいとしており、必要とされることでこの世界で生きていられるとまで思っている。
この男には色々過去があるがそれはまた別の機会に…
「とりあえず、アリアを起こさないとな…まだ寝てるはず」
まだ眠気のせいで上手く動かない体を気合で動かし、アリアが寝ている〈元〉限の寝室に向かう。
ガチャとドアをやる気なく開けるとそこには誰もいなかった…
「あれぇ~?どこ行っちゃったの?」
なぜかアリアがいるはずの部屋にいなかったのだ。
ベッドの下やタンスなどを探したが見つからなかった…
入れ違いかと思ったがそんなにこの部屋は広くは無い。
一人で真面目な顔で考えていると…
ジャー
水の流れる音が通路から聞こえてきた。
「オハヨウ!ゲン!」
「うぉっと!どこにいたんだよ!探したぞ…トイレに行ってたのかな?ちょい、ちょい!どこに行くの!?」
話を聞かない(この場合は理解できてないのだから仕方ないが)アリアがパタパタと足音を立てながらどこかに走りに行ってしまった。
限はしばし何をしに行ったかを考えてある考えに行き着いた。
「まさか二度寝か!?それだけはダメだ!そろそろ準備しないと遅れちまう!待ってアリア~!」
全くの検討違いだが言葉が通じ無い二人にはそれを瞬時に判別することは出来ない。
勘違いしたままワンテンポ遅れてアリアの後を追いかける。
「アリア!寝たら死んでしまう…え?まさか朝ごはん作ってくれてるの?」
「フン、フン、フフン~♪フンフフ~ン♪」
アリアが鼻歌を歌いながら、何かをしていた。
アリアの手元を見るとニンジンやピーマンが食べやすそうな一口大の大きさに切られていた。
しかも、かなりの速さで野菜を瞬時に切り分けていた。
限も一人暮らしが結構長いので料理には自信を持っていたが、アリアによってそのプライドはへし折られた後にコンクリで埋められるレベルにショックを受けた。
「なんか上機嫌だな…二度寝じゃないならいいけどさ。でも女の子の手料理か~…」
次の瞬間、アリアが切っていた野菜や肉をフライパンに全部放り込むと信じられないことをした。
ボッ!ボーー!
手のひらから炎を出したのだ…まるで魔法のように。
「まさかアリアは…超能力者の類なのか!」
信じられない光景を目の前に思わず叫んでしまった。
限は超能力やオカルトなどは全面的に信じてるわけではないが、絶対に無いとは思ってはいない。
つまり、半信半疑の状態である。
だが、目の前の現象をすぐに信じられるかと言われれば、分からないと答えるしか出来ない。
限が険しい顔で一人考えているが、アリアは気にした様子は特に無く、炎を出し続けて野菜などを炒めていた。
そしてある結論にたどり着いた…
もう何でもいいや…とりあえず仕事に行く準備をしようと。
考えることを放棄したのだ、人はあまりにも自分とはかけ離れた出来事に会うと何事もなかったかのようにしてしまうのだ。(人による)
すると、作り終えたのかアリアが大皿に豚肉と野菜を炒めた物をテーブルに置いた。
塩コショウと豚の油の匂いが部屋に広がった。
だが、限は迷っていた。
「食べていいのかな…それとも自分の分だけを作ったとか?うーん…実に悩ましい」
アリアは限に向けて悲しそうな目を向けていた、作った物を食べてくれないからだ。
その視線に気づいた限は複雑そうな表情を浮かべていた。
「なんでそんなに悲しそうな顔をしているんだ…やっぱり食べていいのか?」
限が箸を伸ばして食べようとすると、ニコニコと嬉しそうに笑みを浮かべていたので、食べていい合図と勝手に解釈して皿から野菜炒めをつまむ。
ピーマンとニンジンと豚肉をシンプルに塩コショウのみで炒めた料理だったが限にとっては十分なご馳走だった。
もしかしたら、この先死ぬまで異性の手料理を味わうことが出来ないかもしれないと思ったからだ。
食べ終わったのでご馳走様と小さな声で感謝を伝え、片付けに入ろうとしたがあることに気づいた…
「あ、白飯炊き忘れてたな。昼におにぎりでも買って食べればいいか…」
限の食べっぷりに満足したのか、アリアは上機嫌になっていた。証拠に顔から笑みがこぼれニヤニヤとしていた。
「そろそろ出ないと遅刻になるな…はよ着替えてもらわなきゃな…ホレっ」
洋服をポイッと投げるように渡す。
この服、実は昨日アリアの勉強本以外にも洋服や下着など日常生活で必要になりそうな物を買ってきたのだ。なぜか警察に通報されそうになったので必死に説得すると警察には連行されずに済んだ…
なんでこんなに警察が日常生活の中に入って来ているのだろうかと限は不思議に思う。
「こんなにも勤勉で真面目に働いてる俺を尊敬すれど、警察に連行させようなんてとんでもない奴だ!」
前を見るといつの間にか着替え終えていたアリアがこちらを向いていた。
ちなみに今日の服装は、白のコートに薄緑のセーターと赤のスカートを着させた。
コーディネートは適当である、男の限にそれを求めるのは酷ってものだあろう。
「着替え終わったのか…早くて助かるけど、今度からは別の部屋で着替えて欲しいな…」
限が少し頬を赤く染めると、アリアが慌てたように近づき額に手を当ててきたのだ。
「なんか焦ってるけど、たぶん勘違いだと思うよ。なんとなく分かる」
限が照れたのを別のことと勘違いしていたので伝わるか分からないけど一応ツッコんでおく。
こんなやり取りをしている間にも時間は非情にも刻々と過ぎ去ってゆく…
現在の時刻は八時になろうとしていた。
八時には家を出て出勤し始めないと間に合わないのだが…限はそんなことを考えれられる心境では無かった。
だがそんな頼りない限の頼もしい味方が声を出した。
ブー!ブー!ブー!
携帯のタイマーがその真価を発揮し、主に迫りくる時間を必死に伝えるために音を絞り出した。
その音に気が付いたのか限は慌てふためきアリアの腕を掴み急いで準備していたリュックを背負い、玄関で必要な物を取り急いで玄関のドアを蹴飛ばして外に出る。
「ヤバイ!遅刻でもしようものならば殺される!」
人間の感情は世界を超えても通じるのか、恐怖はアリアにもひしひしと伝わっていた。
玄関を出た限達は急いで鍵を閉め、階段を飛び降りるように駆け下り、駐車場に降り立った。
その中から青と黒をベースにしたクールが売りの二人乗りも出来る大型バイクにまたがる。
急いでエンジンをかけつつ、ヘルメットを被り、アリアにも被せてあげる。
ドゥゥゥ…ブルゥゥ!ブゥー!
バイクのエンジンも徐々にやる気を出してきた。
「よし!じゃあ、飛ばすからギュッと摑まっておいてね!」
「キャァァ~!!」
限は言葉が通じないのも忘れて注意したから大丈夫と思っていた…
アリアは何とか摑まっていたものの、いきなりの爆走に心身共にびっくりしていた…
アリアにとっての恐怖は十五分ほどだったが彼女の心にはかなりの恐怖を植え付けただろう…
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「遅い!最低でも五分前には来いと言っているはずだ!だが、お前は今まで遅れて来なかったから今回は大目に見てやろう」
「すいません!二度とこのようなことが無いように気を付けます!」
「うむ、よい心がけだ!だが!遅刻は遅刻!今日はいつもよりさらに働け!」
「はい社長!正社員限はごみを一つ残らずお客様の周囲から無くしてみせます!」
ここは軍隊などでは無い、ブラック企業でも無い。むしろホワイト企業と言っても過言では無い。
そして限が話している鬼軍曹風の人は橋口 知美。
知美は女性であり年齢は限と同じ二十七で(株)橋口清掃の二代目社長である。
彼女の身長は175くらいで、スラっとしており、顔もクールな美人だが独身である。
もっともこの話題を彼女の前で出すと居酒屋に連れていかれて独身の何が悪いと言う有難いお話を社長が酔いつぶれるまで聞かされるのだ…ちなみに限は一回連れていかれた。
昨夜の電話の相手は彼女である、彼女は話の分からない横暴な人では無く、規律を守る社員にはとてもよくしてくれるいい社長である。
「で、昨日話してた例の子は?どこにいるのか?」
「あー…あ、話してた娘はここですよ…」
アリアは限の荒い運転に恐怖したのか、足がガクガク震えていた…
当の本人はどうしてこうなったのか全く気付いていない様子だった。
「え…この子カワイイ!地上に舞い降りた私の天使!?…いやいや!何でもないぞ!」
「何も言ってませんよ社長…社長がカワイイなんて言ったなんて俺は聞いて無いのでアイアンクロウの構えは止めてくれませんか?顔どころか首も潰されそうで怖いです…」
「あはは!…このことは秘密な?いいな?」
「ハイ…モチロンデス…シンデモシャベリマセン…」
社長の思わぬ一面を目撃してしまったので、社長のアイアンクロウによる記憶操作術を施される前に限はこのことを死んでも話さないと誓ったので、何とか難を逃れ、生き延びている。
思わず「生きるって難しいね…」と呟いた。。
やはり限の周りには変人がたくさん集まるようだ…この人に預けて大丈夫なのだろうかと限は今更ながらに不安になってきた。
「は、早く行かんか!この子の面倒はきちんと見るから安心しろ!」
「わ、分かりました!では、頼みましたよ社長!」
社長が顔を赤らめながら急かしてきたので、急いでスタッフルームに逃げていく。
あのままココにいたらアイアンクロウを喰らっていたかもしれない…
逃げるが勝ちとは昔の人も素晴らしい言葉を生み出したものだ。
アリアが置いて行かないで~!と言ってきた気がするが気のせいだろう、言葉は通じないはずだし…
頑張れよアリア!強く生きろよ!
「アリアちゃん!お姉さんとお茶でも飲まない?ハァハァ…」
「ゲン~!」
その悲しみの混じった助けの声は限に届くことは無かった…
やっぱり気が向いたら投稿することにしました~
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