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アリアは癒したい

 

「限さん!朝ですよ!起きてください!」


「待って……あと二分……」


 だが、布団の主はもぞもぞとミノムシのように動くだけで起きる素振りは見せない。


「どいておれアリア。この男は踏まれないと起きないのかもしれない」


「待て待て!起きるから踏むのは待て!お前に踏まれたら骨折するわ!」


 その言葉を聞き慌てた様子で跳ねるようにガバっと布団から起き上がった。


「さっさと起きろ。我がせっかく朝食を用意したのだ、冷める前に食うがよい」


 フン!と鼻を鳴らしながら言うと、


「お前飯なんて作れたか?」


 まだ、眠いのか重い瞼を擦りながら片目を大きく見開いて驚いていた。


「王である我に出来ないものがあると思うか?限は我を侮り過ぎだ」


「まぁ、食わせてくれるなら何でもいいよ」


「うむ、それでいい。それでこそ男だ」


「外では男とか女だとかで差をつけるような発言するなよ?今の時代は男女平等を目指しているからな」


「この世界はメンドクサイのだな……男と女は体の作りが違うのだから役割を区別するのは当たり前だと思うのだがな……」


「日本人の昔の考えでは女は子育て、男は仕事って言うしょうもない固定観念に囚われていたからな……これが朝飯か?」


 机の上に置いてある少しいびつな形に握られているおにぎりを指差しながら訊ねると、


「そうだ、その米を丸めた物だ。それにしてもこの国は確かにおかしいな。男が女に産んでもらっているのに子育てを全部押し付けるのは違うな」


「ペンタにしてはちゃんとしてるな……早速、頂くな」


「好きにしろ」


「うん……甘くてねっとりとして……おい、これ中身の具材なんだ?」


「ピーナッツバターだが?何か不味かったか?」


「お前あほか!何でピーナッツバターなんか入れたんだよ!」


「パンに付けても旨いのだからご飯に入れても旨いはずだ!」


「せめて味見してから出せよ……まぁ、悪気が無いからいいよ。次から味見して出してくれ」


 ピーナッツバターおにぎりをそのまま口に放り込んでお茶をコップに注ぎ、一気に胃に流し込むようにお茶を飲み干す。


「食べるんですね……」


「そりゃ、出されたものはよっぽど食えない物じゃない限りは食うぜ?残したら失礼だろ?」


「なぜ教えてくれなかったんだアリア!ピーナッツバターはおにぎりに合わないと!」


「えぇ……だって、ペンタ様が自分でしたいと言ったじゃないですか……」


「そうだったな……すまないアリア。我が悪かったな」


「珍しいな……ペンタが謝るなんてよこの一週間でなにかあったのか?」


「元々我は自分に非があれば謝っておる」


「どうだかな……」


 口に残った甘さを洗い流すかのようにコーヒーを口に含みながら言う。


「いいからさっさと行け。仕事に遅刻しても我は知らんぞ?」


「ヘイヘイ……行きますよ」


 のそのそと全くやる気を感じられない姿をさらしながらドアを開けて外に出て行った……


「……限さん疲れてますね。どうしたら、元気が出るのでしょうか……」


「あの男はいつもあんな感じだろ。まぁ、いつもより覇気が感じられないがな」


「うーん……マッサージとかしてあげたら疲れ取れるでしょうか?」


「そうだな。それでいいのではないか?」


 ペンタは興味が無いのか素っ気なく答えると……


「そもそも、私マッサージとかしたことありませんでした……やっぱり、美味しいご飯作る方がいいかもしれませんね」


「それがいいであろう。我はおにぎりとやらを作るのに疲れたので寝させてもらう……では、頑張れよアリア」


「はい、お疲れ様ですペンタ様。私はこれから出かけるのでお留守番お願いします」




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「いらっしゃい!久しぶりだねアリアちゃん!今日は何を買うかい?」


 頭にタオルを巻いたがっちりとした体格の若い男が声を張り上げて接客をしていた。


「こんにちはお肉屋のお兄さん。お兄さんにお聞きしたいことがあるんですけどいいですか?」


「なんでも聞いていいよ?ちなみに、お兄さんは彼女はいないぜ?嫁さんはいるけどな!ワハハ!」


「あはは……お兄さんは疲れたときはどうしてますか?」


 一人で楽しそうに声を張り上げて笑っている肉屋の店員に苦笑いをしつつも本題を聞いて行くアリア。


「そうだな……嫁さんにいっぱい甘やかしてもらってるかな~。この間は膝枕してもらって耳かきしてもらったな」


「それで疲れは取れるのですか?」


「もちろん!疲れが吹き飛んで丸一日働いてもいいくらい元気になるな!」


「そうなんですね……ありがとうございます。それじゃあ、鳥の胸肉を二百グラムください」


「あいよ!アリアちゃん可愛いからオマケしとくね」


「ありがとうございます。奥様から怒られない程度にしてくださいね?」


「バレたらそんときだよ。ワハハ!」


「ふーん……バレたらそんときね……じゃあ、今からやってもいいのかしら?」


 店の奥から一人の女性が顔を出していた。

 表情はニコニコと穏やかそうにしているが、内心は表情とは正反対であろう。


「まだ冷蔵庫の整理してたんじゃないのか!?」


「あなたが馬鹿みたいな笑い声を出すからでしょ!」


「やべぇ……今日が俺の命日だ」


「何ふざけたこと言ってるのよ……アリアちゃんが困ってるじゃない」


「私は大丈夫ですよ~。お二人のお邪魔になりそうなので私はそろそろ失礼しますね」


 奥さんから商品を受け取り、アリアは一刻も早くその場を立ち去るべく歩き始めた。


「さて、あなた……覚悟はいいかしら?」


「お、お手柔らかにお願いします……」


 後ろからそんな言葉が聞こえた気がした。







「うーん……色々な方に聞いたのにどれがいいの決めれません……」


「そうか、大変だな……って何でここにいるんだお嬢ちゃん?」


 アリアが訪れている場所は馬場が勤めている交番である。

 いきなり訪ねて来られた馬場は何事かと目を丸くさせて驚いている。


「だって……限さんのことを一番詳しく知ってるのは馬場さんじゃないですか。だから、ここに来ました」


「だからって仕事中の俺の場所に来るか?暇だからいいけどさ」


 そう言って馬場はつまらなそうに頬杖をつきながら無駄に機能を付けまくった包丁の通販番組をボーっと眺めていた。


「そうだと思いましたのでここに来ました」


「さらっと俺を暇人扱いしてるね。ついにお嬢ちゃんからもこんな扱い受けるようになったのか……」


「あ、ごめんなさい!そんなつもりじゃなかったんです……」


「いいよ、こんな感じの扱いは慣れてるからね。ところで、限の何を聞きたいの?」


「えーっとですね……限さんが最近疲れてるんですよ。どうしたら元気になってもらえるのでしょうか?」


「あいつが疲れることもあるんだな。まぁ、栄養ドリンクでも飲ませとけばいいだろ。リ〇ビタンとかそんな感じの買ってやりな」


「うーん……なんだかそれは違う気がします。あ、そうだ!限さんが楽しそうにしてる時とか教えてもらってもいいですか?」


 馬場の提案に何となく納得出来ないのか、他のことを聞き出そうとすると……


「あいつが楽しそうな時ね……酒飲んで話してるときは楽しそうにしてたな」


「お酒ですか……今日はお家でおつまみなんかを作ってお酒を飲んでもらうのもいいかもしれませんね」


「お、酒飲むのか?それなら俺も呼んでくれよな。あいつの悩みを聞いてやれるかもしれないしな」


「分かりました。限さんに許可を頂いたら呼びますね」


「おう、頼むぜお嬢ちゃん。お嬢ちゃんの飯食ってみたいからよ」



休憩的な話です

ストーリーはほとんど進まないです

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